フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

296.泳がしても、さらなる成果が期待できないなら、当面の懸念対策を重視しよう。

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デヒルは、幹部の1人に合図した。

敵の中に潜んでいながら、目立ちすぎて、存在を意識されるようになった相談役の男を泳がすより、ちぎり捨てて当面の憂いを無くす方がよい。

相談役と一体化して隠れ蓑になっていた側近どもと共に。

幹部が合図を返す。

「殺れ。」
とデヒルの1言で、同時に5人の男が絶命した。

血が飛び散ることもなく、命は瞬時に刈り取られた。

5つの体が音をたてて、床にぶつかる。

謁見の間に集まった貴族や近衛は、誰一人として反応できなかった。
一拍置いて。
絶命させられた5人の男を凝視する者。
目を逸らせる者。
何やら騒ぎ出す者。
暴れ出す者。

賑やかな背景を背に、デヒルは国王を見る。

王妃は、自分も殺されると怯えているが、国王は飄々としている。

フィリップ殿下は、5人を見て、こいつら死んだな、くらいのさっぱりした感情しかない。

粛清の場面でも、気楽に構えられる胆力は、これからのコーハ王家に欠かせないものだ。

国王と第4王子は使える。

さて、王妃だが。

デヒルが、王妃に視線を合わせると、王妃は、先程までの様子とは一変した。

「わたくしが不勉強なことは、分かったから、今からコーハ王国の王妃に相応しくなるための時間をちょうだい。ガランと貴方の邪魔は決してしない。これからは、協力すると誓うわ。」

不勉強を恥じて、学ぶ覚悟を示し、ガランに協力するなら、やぶさかではない。

「その言葉に嘘偽りがないなら、この場で、誓約しろ。」

「分かったわ。」

デヒルは、フィリスを呼んだ。

布妖怪に包まったフィリスが王妃の前に立つ。

「フィリス・ガランの名の下に、誓約を言葉を刻む。」

王妃が名前を問われて、名乗り、年を確認されて、答え、性別と出身地、親兄弟の名前、夫と4人の子どもの名前を言い終わる。

「誓いの言葉をのべよ。」

「今日から、コーハ王国の王妃に相応しくなるための教育を受ける。わたくしが生きている限り、わたくしは、ガランとデヒル・ガランのすることに邪魔せず、協力すると誓う。」
と王妃。

「追加で、ハーマル・ガランとフィリス・ガランの邪魔をしないこと、と協力することを誓え。」
とデヒル。

すぐに王妃は追加した。
「わたくしは、一生、ハーマル・ガランとフィリス・ガランの邪魔はしないこと、協力することを誓う。」

「汝は、その言葉を真にするか?」
とフィリス。

「答えろ。」
とデヒル。

「真にする。嘘偽りは言ってないわ。」
と王妃。

「以上をもって、誓約とする。」
とフィリス。

王妃の誓約はなされた。王妃は、一命をとりとめた。

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