フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

290.名探偵は、犯人に単刀直入に切り出すよね。一般人は、揺さぶりかけて、あたりをつけたり、裏付けとったり、するわけですよ。

反応があった！
『大逆』がキーワードか。
デヒルは、微動だにしなかった男の正体、もしくは、黒幕の手がかりを掴むために、敢えて、刺激的な言葉を使い、かつ、反応が見られそうな話題を選んでいる。

国王や王妃の地位や立場を失くす話題には反応がなかった。

大逆で罪に問われるのは、たいてい上流階級より下の階級に属する者。

男は、上流階級の立場では、反応がなく、下の階級の立場に反応した。

意識が上流階級寄りではない、または、下の階級に共感する位置にいる。

男か、黒幕か、が。

一連のガラン憎しという扇動は、国王の相談役にまで上り詰めた男が1人で、成し得ることが出来る規模ではない。
協力者または、同士、黒幕がいる。

国王の近くをうろつくなど、目立つ位置にいる男が黒幕では、役不足。

万事控え目を装って、顔が広く、国王と王妃に重用されていた男。

男を配置した者がいるはずだ。姿を隠して、駒を並べたものが。

直近で、大逆罪が適用された事件があったか？
思考を巡らすが、デヒルが15歳で、領主代理をするようになってからは、コーハ王国において、大逆の罪で処刑があった、とは聞いていない。

デヒルが知らない世代、父上か、先代、先代より前の世代の可能性はある。

大逆というワードに反応する男、国王の相談役として王城に来ているからには、最低限の身分として、コーハ王国の貴族籍を持っている。


「大逆など、意味が違うでしょうが。」
王妃からすれば、王家側が仕組んだことで、王家の人間である国王も王子も害されていないのに、大逆とは、言葉の選び間違いもはなはだしいという思いである。

唐突過ぎて、やはり子爵家風情では、教育が十分じゃないから、と考える。

言葉遊びが過ぎるんじゃないの。



デヒルが謁見の間に来てから、1言も話していない国王の相談役。
デヒルは、王妃と会話しながら、相談役がなんのワードに反応するのかを探り続けている。
相談役という肩書きを持ちながら、彼は、デヒルの前で、唯一、動きを見せていない。
国王の側近は反応したのに。

明らかに異質だ。その異質さに気付いている者はいるだろうか？
本人も含めて。

国王や王妃について、存在を危ぶませる発言を繰り返したが、相談役は、微笑みをたたえたまま、なんの反応もしなかった。
肩書きから考えると、反応しないのはおかしい。

だから、真逆の立場を意識させる、大逆というワードを会話の流れでは、多少、無理矢理だったが、ねじ込んだ。

手がかりはあった。