フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

287.問題が大きくなって、トップが後始末の責任を負うことになった。問題を起こしたものの、責任を背負えないと判断された者の処遇はどうする？

「王妃でなくなる前に、自らを処すか、王妃でなくなってから処すか、どちらでも構わないぞ。かつて王妃だった女を処す方が、気楽な者が増えるか？」
とデヒル。

「先代国王陛下は、もう国王陛下ではないわ。今の国王は、わたくしの夫よ。」
と王妃。
夫は1度、王太子を引きずり降ろされたことがあるが、それは、夫の父が国王陛下だったから。国1番の権力者に正面からぶつかって、勝てるはずもない。
だから、王弟を狙ったのだ。競争相手がいなくなれば、夫が王位を継ぐしかないから。

「前と違って、義理の父が頭を下げて全責任を背負ってはくれない。王妃の失態を王妃自身が拭えぬなら、夫の国王陛下が責任をとらねば、な。」
とデヒル。

「何を言っているの。子爵家ごときが楯突くとは。」
と王妃。

「ガランに面と向かって、子爵家ごとき、と罵るのを聞いて喜んでいるのは、誰か知ってみるといい。」
とデヒル。

王妃は、謁見の間を見渡す。
夫は苦悶の表情を浮かべている。
愛息子のフィリップは、母に温度を感じない視線を向けていた。

他は？

集められた貴族の大半も、特に喜んでいる者はいない。

1つだけ、反応が違う集団がある。

国王の相談役と側近達。

彼らは、困っていたり、無表情でいたり、と様々に装ってはいるが、愉悦の感情が垣間見れる。

彼らはこの状況を楽しんでいる。

国王陛下の相談役と側近という地位にありながら。

王妃が一貴族ごときに、しつこく嫌がらせされているのに。

デヒルは、コーハ王家と王国への背信を示唆したが、王妃は、彼らの態度を自身への辱めと裏切りと受け取った。

「貴方達、国王陛下の相談役と側近でありながら、王妃を貶める貴族に何もしないの。」
と王妃。

「私達は、国王陛下の御為にお仕えしております。王妃陛下の相談役と側近に相談されるのがよろしいかと？」
と側近その1。
「いや。王妃陛下は、2つの頼れる公爵家を後ろ盾にお持ちだ。相談役も側近も、今更いらないだろう。」
と側近その2。

ハハハと、側近達が笑う。