フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

227.目と耳と鼻がきかない。でも、手と足は動かせる。相棒の小鳥、チャーチャの合図で、そっとそっと逃げよう。生き延びることを諦めない。

遠くから、ハーマルの名前を呼ぶ声がする。
悲鳴のような、喉が裂けそうな叫び。

失敗してしまった。
止まるな、と何度も念押しされたのに。
ハーマルは、つい、元側仕えの3人に気を取られて、足を止めてしまった。
ハーマルの動きが止まった途端に攻撃するとは。ずっと、狙いを定めていたのだろう。なんて、冴えたやり方。

あと少しなのに。
もう少しなのに。

たとえ、何かを失っても、生きて自力で動けるんだから、諦めるにはまだ早い。

ハーマルは頭の上のチャーチャを手で確認すると、チャーチャはくちばしで人差し指をつんとつついた。

チャーチャは無事、の合図

ハーマルは、視界が効かない。チャーチャを頭に乗せたまま、自分の体を両手で触り、確かめる。

手も足も動ける。

「チャーチャ、私は今、目と鼻が効かない。耳は、辛うじてだから、あまり役に立たない。チャーチャが頼り。チャーチャ、私をガランへ誘導して。右なら右に引っ張って、左なら左へ。前なら前髪。後ろなら、足で髪の毛を掴んで。屈むときは寝転んで、跳びはねるときは、羽根を広げるんだよ。いつもの私達のように！」

ハーマルは、爆風の中から、少しずつ外れていく。
すり足で、足元を確認しながら。

「は、とうとう、やってやったわ。」
「オレ達の恨みは、こんなもんじゃねえよ。」
「ガキの頃から、お優しいハーマル様は、未だに、ろくに戦えないんだってな。」

「か弱い可哀想な真ん中っ子。」
「平凡で普通で、いつも冴えなかったよな。」
「兄2人は、凄かったけど、弟2人はハズレもハズレ。」

「一緒にいる分には、楽だったけどな。」
「ああ、上2人と違って、側仕えの基準が、頭の良さじゃなく、遊び相手だもんな。」
「親の期待の低さに、ヒクわ。」
「弟はじーさんに可愛がられていたけど、ハーマルは出来損ない扱いされていたからな。」
「おれら、すり寄る相手、間違えていたよなー。」

「まあ、そんなオレ達は、今じゃ、大幹部。」
「いや、ほんと最初の奉公先と主人選びに失敗したわ。」
「顔見知り効果で、油断させたから、終わり良ければ全て良し。」

「違いない。」
「ウケる。」
「これ、回収するんだろ？あと、どのくらい？」
「暇だなー。」

「まじ、ダベるしかないもんな。」
「見飽きた。」
「早く時間こねーかな。」