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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

223.最期は故郷の家族の元に還したい。戦えないから、逃げたり避けたりするだけの主人は、生き抜いて、故郷に戻り、捜索隊を出してみせる。

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加速度つけて、突き進む。
バキバキ、ドゴドゴと壁や天井、床板が何かにぶち当たって変形している。

「次で、最高速度になります。最高速度になったら、すぐ行動ですよ。敵が速さに慣れたら、私共は不利です。」

「分かった。」

「秒読み開始。」

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1。」

「進め。」

勢いよく全員が前方へ飛び出す。

ハーマルも、ポケットのチャーチャに、落ちないようにと言い聞かせて飛び出す。

飛距離を伸ばしつつ、視界の開けた場所に出ると、狙い撃ちにされるので、障害物を利用しながら突き進む。

ハーマルが標的にならないように、ハーマルが失敗したら、誰かがもっと大きく失敗して、ハーマルへの攻撃を逸らす。

今回の作戦をきいているので、犠牲者を出したくないハーマルは、注意深く慎重に動いている。

チャーチャも周囲を警戒しているようだ。

それでも、どんなに注意深く振る舞っても、思い描いた通りに進むばかりではない。

ハーマルは、何度か失敗して、攻撃にさらされた。失敗しなくても、予測しなかった攻撃を受けたりもした。その度に、王都の家族を1人2人と欠いていく。

視界の端や研ぎ澄まされた聴覚が惨劇を拾う。

立ち止まらないで進むこと、振り返らないこと、生きてガラン領に辿り着くこと。

ハーマルは出来ることを確実にこなしていくのみ。

ガラン領に隣接する2つの男爵領、ノア男爵領とベイモン男爵領の境目を交互に出たり入ったりして、ジグザグに進む。

領境にはノアとベイモンの両方が兵を配置している。
男爵領の領地を突っ切って、ガラン領を目指すとなると、どうしても目立つ。隠れて動くより、監視する目が多い方を選んだ。

注目を浴びることで、刺客の目撃者も増やす。

当たり前のように、魔法や、呪術、暗器が飛び交う中で、1人1人が、足をとめず、攻撃を交わして前に進む。

体力と気力、集中力が欠かせない。

早い段階で囮を買ってでた者達は、その3つのどれかが足りなくなって、途中で脱落することになると自覚していた。

能力が減退した中で囮になるより、足止めを兼ねられるうちに、と囮役に立候補していった。


ハーマルは誓う。

ガラン領に着いたら、絶対に捜索隊を出す。
もし、体のどこかを失っていても、意識を取り戻す見込みがなくなっていても、もう息をしていなくても、最期は故郷の家族の元で。

ハーマルの自己満足で、わがままかもしれない。

ハーマルが家族大好きっ子だから。

ハーマルは、ガラン家当主の息子で、皆の主人だから、わがままでもいい。

最期まで、土に還る瞬間まで、ありがとうと大好きを伝えたい。

そのための人手がたくさんいるから、父と兄にお願いしなくては。

ハーマルは、気を引き締める。

あるものをあるがままに受け入れてきたハーマルだけど、これからは、自分のしたいことのために、考えて動くのだ。
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