216 / 1,437
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?
217.誰もが認める人気者を受け入れない人がいるなんて、考えもしなかったんだろうねえ。
しおりを挟む
「成人の儀が閉会する前には。」
「ボク、知らないよ?」
初耳だよ。
「フィリスは王都にいなかったから、知らないのだろう。」
ボクが悪いんじゃないよね?
「王都にいなくても、領地にいたの。ボクにも家にも打診しないまま、何を決めたのよ。」
「成人したフィリスの近衛入団。」
「却下。」
「無駄だ。既に近衛で、私の護衛筆頭になっている。」
「ボクは、白紙撤回を要求する。」
「不可能だ。近衛は終身だからな。」
「そんな手続き、したのはどなた?認めたのはどなた?」
「手続きは、2つの公爵家と近衛の一部だな。認めたのは父とその他。父である国王陛下の反対はなかった。」
「フィリップ殿下のお母様である王妃様は、ガランが大嫌いなのに、王妃様が大事にしている愛息子のフィリップ殿下にガランの子息を充てがうの?」
矛盾しない?
「母の意向と公爵家の意向が、全て一致するわけではない。」
ほほう。
「聞きたい。」
「母は、王妃で王家の一員だが、公爵家は王から爵位を頂いた一貴族にすぎない。」
「そうね。」
「コーハ王国とコーハ王家が確固たる地位を示しているからこそ、コーハ王国の公爵家が活きる。」
「その通り。」
「公爵家としては、王家と国の権威が揺らぐことは望まない。国の安定的発展が自分達のためになるからな。」
「どんな王侯貴族も、国外からの扱いは、所属国の評価を抜きに考えられないもの。」
「母の兄弟は、母とともに、王家に振り回されたせいか、母寄りの立場だが、次期当主の長男達は、それぞれ、母に寄り添って共倒れになることを危惧した。」
「わかってきた。」
「母の持ち込んでくる見合い話は、国益を損なう。母が私の見合い話に大喜びしている間に、その見合い話自体を無意味なものにしてしまえば、母が浮かれただけで済む。」
「だから、ボクと結婚だなんだと、ね。」
「結婚は、王子の独断では出来ない。王子の結婚の足掛かりとして、フィリスは近衛に入り、護衛筆頭として、私と愛を育んだ末に、結婚するという筋書きが出来上がっていた。関係部署には、話が回ったはず。国益のために、積極的に反対するものはいなかったな。ウィルソンとレオナルドを除いて。」
「あの2人が側近なのに遠ざけられたわけね?」
「ああ。悪手だから、と周りを説得しようとする2人の動きが、王妃に伝わらないように、側近の立場を保留にして、自宅謹慎にした。」
「ボク、完全に人身御供じゃない?」
「私に寵愛されることを不幸だとか、迷惑だと主張する貴族子弟の存在は、計画の中に考慮されなかったからな。」
「キモチワルイ。」
フィリスは1つ、思い当たるフシがあった。
成人の儀での、フィリスの番だけ、不自然な沈黙と、国王陛下からの名前呼び。
手続きに関わった部署と、国王陛下を始めとする計画に加担した貴族や、要人達は、フィリスの誓いが、彼らの計画を台無しにするものだったから、歓迎しなかった。
「事前の打ち合わせもなく、近衛になりたいなんて、言う人いるの?」
「成人の儀の参加者は、早めに会場入りするから、フィリスがぎりぎりの滑り込み参加になるとは、誰も、予想していなかった。」
会場にいつ来るか、なんて、本人次第でしょ。
「打ち合わせしても、うんとは、言わない可能性は考えなかったの?誰も。」
「フィリスはな。」
「他の方は違うの?嫌がらないの。」
「公爵家と要人が後押ししている王子の私を袖にすることは、しないだろう。まして、国益にかなうとわかれば、貴族籍がある以上、思うことがあろうと、粛々と受け入れる。」
「ボクには通用しないやり方ね。」
「フィリスを見誤ったな。」
フィリップ殿下は苦笑している。
「最初から、ボクを見る目が曇っているから仕方ないね。」
ボクは、気づいていたよ、最初から。
「そんなことは。」
「王妃様から、逃れようとする行動と逃れたい気持ちは、王妃様の影響そのもの、よ?」
「ボク、知らないよ?」
初耳だよ。
「フィリスは王都にいなかったから、知らないのだろう。」
ボクが悪いんじゃないよね?
「王都にいなくても、領地にいたの。ボクにも家にも打診しないまま、何を決めたのよ。」
「成人したフィリスの近衛入団。」
「却下。」
「無駄だ。既に近衛で、私の護衛筆頭になっている。」
「ボクは、白紙撤回を要求する。」
「不可能だ。近衛は終身だからな。」
「そんな手続き、したのはどなた?認めたのはどなた?」
「手続きは、2つの公爵家と近衛の一部だな。認めたのは父とその他。父である国王陛下の反対はなかった。」
「フィリップ殿下のお母様である王妃様は、ガランが大嫌いなのに、王妃様が大事にしている愛息子のフィリップ殿下にガランの子息を充てがうの?」
矛盾しない?
「母の意向と公爵家の意向が、全て一致するわけではない。」
ほほう。
「聞きたい。」
「母は、王妃で王家の一員だが、公爵家は王から爵位を頂いた一貴族にすぎない。」
「そうね。」
「コーハ王国とコーハ王家が確固たる地位を示しているからこそ、コーハ王国の公爵家が活きる。」
「その通り。」
「公爵家としては、王家と国の権威が揺らぐことは望まない。国の安定的発展が自分達のためになるからな。」
「どんな王侯貴族も、国外からの扱いは、所属国の評価を抜きに考えられないもの。」
「母の兄弟は、母とともに、王家に振り回されたせいか、母寄りの立場だが、次期当主の長男達は、それぞれ、母に寄り添って共倒れになることを危惧した。」
「わかってきた。」
「母の持ち込んでくる見合い話は、国益を損なう。母が私の見合い話に大喜びしている間に、その見合い話自体を無意味なものにしてしまえば、母が浮かれただけで済む。」
「だから、ボクと結婚だなんだと、ね。」
「結婚は、王子の独断では出来ない。王子の結婚の足掛かりとして、フィリスは近衛に入り、護衛筆頭として、私と愛を育んだ末に、結婚するという筋書きが出来上がっていた。関係部署には、話が回ったはず。国益のために、積極的に反対するものはいなかったな。ウィルソンとレオナルドを除いて。」
「あの2人が側近なのに遠ざけられたわけね?」
「ああ。悪手だから、と周りを説得しようとする2人の動きが、王妃に伝わらないように、側近の立場を保留にして、自宅謹慎にした。」
「ボク、完全に人身御供じゃない?」
「私に寵愛されることを不幸だとか、迷惑だと主張する貴族子弟の存在は、計画の中に考慮されなかったからな。」
「キモチワルイ。」
フィリスは1つ、思い当たるフシがあった。
成人の儀での、フィリスの番だけ、不自然な沈黙と、国王陛下からの名前呼び。
手続きに関わった部署と、国王陛下を始めとする計画に加担した貴族や、要人達は、フィリスの誓いが、彼らの計画を台無しにするものだったから、歓迎しなかった。
「事前の打ち合わせもなく、近衛になりたいなんて、言う人いるの?」
「成人の儀の参加者は、早めに会場入りするから、フィリスがぎりぎりの滑り込み参加になるとは、誰も、予想していなかった。」
会場にいつ来るか、なんて、本人次第でしょ。
「打ち合わせしても、うんとは、言わない可能性は考えなかったの?誰も。」
「フィリスはな。」
「他の方は違うの?嫌がらないの。」
「公爵家と要人が後押ししている王子の私を袖にすることは、しないだろう。まして、国益にかなうとわかれば、貴族籍がある以上、思うことがあろうと、粛々と受け入れる。」
「ボクには通用しないやり方ね。」
「フィリスを見誤ったな。」
フィリップ殿下は苦笑している。
「最初から、ボクを見る目が曇っているから仕方ないね。」
ボクは、気づいていたよ、最初から。
「そんなことは。」
「王妃様から、逃れようとする行動と逃れたい気持ちは、王妃様の影響そのもの、よ?」
0
お気に入りに追加
349
あなたにおすすめの小説
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。
イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。
力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。
だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。
イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる?
頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい?
俺、男と結婚するのか?
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
食堂の大聖女様〜転生大聖女は実家の食堂を手伝ってただけなのに、なぜか常連客たちが鬼神のような集団になってるんですが?〜
にゃん小春
ファンタジー
魔獣の影響で陸の孤島と化した村に住む少女、ティリスティアーナ・フリューネス。父は左遷された錬金術師で村の治療薬を作り、母は唯一の食堂を営んでいた。代わり映えのしない毎日だが、いずれこの寒村は終わりを迎えるだろう。そんな危機的状況の中、十五歳になったばかりのティリスティアーナはある不思議な夢を見る。それは、前世の記憶とも思える大聖女の処刑の場面だった。夢を見た後、村に奇跡的な現象が起き始める。ティリスティアーナが作る料理を食べた村の老人たちは若返り、強靭な肉体を取り戻していたのだ。
そして、鬼神のごとく強くなってしまった村人たちは狩られるものから狩るものへと代わり危機的状況を脱して行くことに!?
滅びかけた村は復活の兆しを見せ、ティリスティアーナも自らの正体を少しずつ思い出していく。
しかし、村で始まった異変はやがて自称常識人である今世は静かに暮らしたいと宣うティリスティアーナによって世界全体を巻き込む大きな波となって広がっていくのであった。
2025/1/25(土)HOTランキング1位ありがとうございます!
公爵家の次男は北の辺境に帰りたい
あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。
8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。
序盤はBL要素薄め。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる