フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

200.ハーマルの専属執事は、分家の子。ハーマルより少しお兄さん。

「ご本尊に巣食う病巣を切除するのは、誰の役目だ？のさばらせたのは、誰だ？」

「私が。」
と執事。

先代当主が、初の夫婦二人旅にフィリスを連れていくのは、最初、末っ子だからかと執事は思った。
執事の自分だけではなく、護衛も側仕えも、国外に出るフィリス様の同行者が羨ましかった。

ハーマルが、今回はフィリスの用事だから、次回をお願いしたと話してくれたとき、なんとなく察したのだ。

先代当主夫妻の旅行を隠れ蓑にして、本題を隠した、と。

あの後、襲撃事件が大きすぎて、本題なんて思い出しもしなかった。

ハーマル様と自分達が、選ばれなくて残念がっていた旅行の本題は、おそらく、フィリス様の顔合わせ。

先代当主夫妻の襲撃が、顔合わせの前か後かはわからない。その後、理由があって、結婚の運びにならなかった。フィリス様が狙われているから、らしい。

極秘裏に進める相手だったら、頓挫したのは、ガラン家にとって、手痛い話だったのでは？

頓挫した理由が、フィリス様が狙われているということなら、ハーマル様と結び直したら良かったはずだ。

ハーマル様の婚約話は、執事の自分が知る限り、持ち上がったことはない。

代々、嫡子を残し、政略結婚が当たり前のガラン家。
ご当主の次男リドリグ様が国外の学校に入ったのは、婚約を見据えた決断らしい、と聞いたことがある。
当主が家に残すと宣言されているフィリス様は、婚約話が流れた、として。
末っ子長女のマーゴット様にも婚約が持ち上がったと聞いている。

ハーマル様に、婚約話が出たら、執事の自分にも伝えられる。

ハーマル様に婚約話が来ない理由を、ガラン家の事情だと深く考えてこなかった。

ガラン家の子どもの結婚相手は、ほとんど、王侯貴族。政略結婚に値する相手同士ではないと、政略結婚しない。

ハーマル様は、政略結婚に使われなかった。

人格に問題もなく、性癖もまとも。

欠格事由2点。
本人の能力。
王侯貴族社会に所属させるには問題があるナニカ。

ハーマル様が、誰かより明らかに劣っていたことなどは、ない。
能力は、大丈夫。

主従関係に甘え、王侯貴族を馬鹿にして、主人を軽んじる側仕えがいる息子を婿には出さないだろう。

火種にしかならない。

ハーマル様の邪魔をする者とは、なるほど、うまい表現だ。