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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

193.弟を助けにいけと命令すること、弟を助けてくれと頼むこと。ハーマルは、どちらも出来ずに、胸が苦しい。

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「私共は、フィリス様の捜索に使っていた者も含め、全員で、ただちにハーマル様の警護態勢を整えます。」
ハーマルは、使用人を見回し、専属の執事や護衛を見た。誰も異論がないらしい。
「私の警護は、有り難い。けど、フィリスの捜索を止めなくても。」

「戦力が、人手が足りません。」
彼はやんわり断った。

「戦力。人手。」
ハーマルは思わず繰り返す。

「ここが、王都ではなく、ガラン領でしたら、両立出来たでしょう。」

「2人分は難しいんだね?」

「この王都邸にいるお2方を守るだけでしたら、まだ。」

「1人はどこにいるか探すところから、か。」
ガラン領内で迷子を探すのとは、わけが違う。

「ハーマル様を守りながら、行方不明のフィリス様を捜索するほどの手は、今の王都邸にはございません。」

「でも、私は、ここに、安全なところにいるわけで。フィリスが捕まったなら、私は、フィリスを助けたい。」
彼の言わんとすることはわかる。でも、それは、弟を見捨てることでは?

「ハーマル様。フィリス様が、捕まったと認識されているならば、なおさら。まだ、ご無事なハーマル様を守ることの重要さを考えなくては。」
捕まった方は諦めて、まだ捕まっていない方を守る。
2人とも捕まるわけにはいかないから。
でも、弟を諦めきれる?
ハーマルには、弟を探す力も、戦って勝つ力も持っていない。
ハーマル付きの執事も護衛も、ハーマルを危険にさらすことはない。
ハーマルは、どんなに願ったところで、自力ではフィリスを助けられない。
誰かに頼んで動いて貰わないと、何もできない。
自身は安全圏に退避しておきながら、弟を助けに行ってくれ、と人に頼む。
どれほど自分勝手なことか。
だって、頼んでおきながら、彼らの命を守る力も人生を背負う何かも、ハーマルにはない。
「フィリスは、助けを待っている。きっと、ずっと。助けが来ないなんて。」
だから。
助けにいけ、とハーマルは命令出来ない。
助けてくれないか、と頼むことの無責任さを理解しているので、口にすることもできない。

ただ、弟の苦境が苦しくて、喘いでいる。

「決して、未来永劫、助けを出さないのではありません。ただ、私共がフィリス様を奪還するには手勢が足りません。」
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