フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
188 / 1,439
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

189.ハーマルの茶色い小鳥チャーチャの危機察知能力と、フィリスが帰ってこなかった夜。

しおりを挟む
学校に通うため、王都にきたときも、チャーチャはハーマルといた。
チャーチャは鳴かないけれど、羽やくちばし、体を動かして意思を伝えてくれる。

学校に通うようになると、ハーマルのポケットがチャーチャの定位置になった。

田舎からきた、掌サイズの鳴かない小鳥をポケットに入れている小鳥と同じ色の小柄な少年。
それが、ハーマルの第三者に与える第一印象であった。

クラスメイトに遠巻きにされていた期間。チャーチャは、ハーマルの言葉に耳を傾けて、心に寄り添ってくれた。

サバイバルが始まると、チャーチャは危険をいち早く察知してくれた。1人と1羽は、毎回、仲良く危険を回避した。
ハーマルは非力な子どもで、チャーチャは無力な小鳥。
1人と1羽は、自分達の戦闘能力に賭けたりしなかった。
生き延びるために、注意深く、慎重であったからこそ、死にかけるはずが、かすり傷で済んだり、薬品を被るはずが水を被るくらいで済んだ。

ハーマルにとって、チャーチャは、人生の苦楽を共にしてきた、信頼する一生の友である。

そのチャーチャが、急に、ハーマルに何やら訴え出した。

時計を見ると、成人の儀の昼の部が終了し、人々が三々五々にバラけている時間帯である。

ハーマルがチャーチャを見つめていると、動かないハーマルに痺れを切らし、チャーチャは、ポケットから出て、ハーマルの頭上に立ち、足でハーマルの髪の毛を引っ張り始めた。

ハーマルを今いる場所から連れ出したいときの行動だ。

ここにいたら、危ないのか。

その日、ハーマルは、外交部に割り当てられている王城の1室で、雑用をしていた。

王城にいるのが危ないのか、今いる部屋にいるのが危ないのかまでは、分からない。

残念ながら、チャーチャもハーマルも、そんな高性能な危機回避能力を備えていなかった。

ただ今いる場所にいたら危ないのだけは、確か。

ハーマルは、1言断りを入れると、予定より早くガラン子爵家の王都邸に戻ってきたのである。

ガラン子爵家の王都邸に戻るとチャーチャは、ハーマルの髪の毛に構わなくなった。

ここは安全なんだ。

ハーマルは安心して、フィリスの帰りを待ちながら、帰領の準備をした。

どこに行こう?
何をしよう?
何を見よう?
何を食べよう?

3歳差の仲の良い弟が帰るのをハーマルは今か今かと待った。
フィリスが帰ってきたら、その足で出発出来るように、荷物も綺麗にまとめてある。
待ちきれなくて、屋敷をうろうろしながら、チャーチャに話しかけてしまう。
チャーチャは、ハーマルがとりとめのない旅行計画を垂れ流すのを機嫌よく聞いていた。

朝、日が高くなる前に父と出かけた弟。

その日、日が落ちて、夜会の時間帯に入っても、弟フィリスは帰ってこなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...