フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

185.フィリスがガラン領内で、するはずだったお仕事。ハーマルはフィリスが死ぬ可能性を少しでも、自分の関わりで減らしたいと思った。

ハーマル・ガランはガラン子爵家の3男で、5人兄弟の真ん中。現在18歳。

コーハ王国の王都にある貴族学校に在籍しながら、外国に留学を繰り返したり、就職先の研修に顔を出したりと忙しい。

今日は、成人の儀で、フィリスが王都に来ている。
父上は、外交に出かけた。
王都からガラン領まで、兄弟でみちみち観光でもしながら、一緒にガラン領に帰ろうと、楽しみに計画している。

ハーマルの就職先は、王太子殿下の側近である次期公爵様が上役である。

働き始めたら、ガラン領にゆっくり遊びながら帰る時間はなくなるだろう。

すぐ下の弟フィリスは、成人したら、ガラン領から、出歩く機会も減る。

先代当主夫妻の襲撃事件が与えた影響は大きかった。
襲撃犯が、10年以上経った今も捕まっていないため、今後も襲撃の可能性を秘めているフィリスを政略結婚で国外へ出すことが出来ない。
ハーマルは、父ダルクと長兄デヒルから、そう説明されている。

父と長兄が、フィリスをガラン軍の後方支援に配属した理由は簡単だ。

今後、ガラン領へ何者かが侵攻してきた場合を想定しているのだ。

平時は、標的の1つとして考えられるフィリスを後方支援の1人として隠す。

水際の攻防に成功し、侵略者が侵略する前に撤退した場合、フィリスは表に出て来ない。

侵略により、領地内へ侵入をゆるし、戦線の後退、一時撤退の局面で、主力や大将に立て直す時間を確保するために、後方支援部隊として温存されていた部隊が、戦線に出る。
戦線に出る後方支援部隊、もしくは、撤退時の殿を務める部隊の大将をフィリスが務める。

軍を率いるのは、当主もしくは、次期当主が基本だが、両者が不在や戦線離脱になった場合、ガラン家から出ていない未婚の兄弟姉妹に指揮権がおりてくる。

戦場での優先順位は、当主、次期当主、次期当主である長兄の子ども、それから長兄の末弟フィリス。

当主と次期当主が不在の場合、長兄の長男に指揮権がおり、フィリスが補佐をする。

当主、次期当主の戦線離脱、または、撤退時、主戦力は当主、次期当主、長兄の長男の安全のために付き従う。

主戦力が、後方支援部隊の後ろの位置まで撤退。同時に、後方支援部隊が前へ。
前に出る後方支援部隊の指揮官に、当主の子どもで次期当主の末弟フィリス、となる。

大将の戦線離脱や、撤退のために、残って戦線を維持したり、撤退時の殿を担当する部隊に、当主の子ども、もしくは次期当主の弟がいれば、もし、敗戦の気配がちらついていたとしても、踏ん張れるよね？

軍の兵が戦いを放棄して逃げたり、総崩れの原因にならない理由として配属される。

いざというときは、父上と兄と甥のために死んでくれ、ということか、とハーマルは思った。

ハーマルは、いずれ、結婚して外に出るので、家内の采配に口は挟まない。
ただ、フィリスが戦線に参加する機会がないように、自分で出来ることをしたい。
そういう思いで、就職先を決めた。

ハーマルの就職先は、コーハ王国の外交部だ。