フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

164.会えない時間が凝縮させたもの、薄れさせたものは、なんだったのか？

コーハ王国の式典。成人の儀。

王城には参加者親子が集まっている。

受付後、会場へ進む親子連れの中に、茶色の髪と瞳がお揃いで、小柄で細身の父子がいた。

「興味津々だね。」
とダルク。
「見納めだもの。」
とフィリス。

2人は緊張とはうらはらの軽妙な会話をしながら会場に入っていった。



成人王族として出席する成人の儀。
フィリップ殿下は、会場に入ってきたフィリスだけをまっすぐに見ていた。
フィリスが15歳になれば、王都にきて、成人の儀に参加するはず。
待っていれば、フィリスに会える。
それだけが、会えない間の心の支えだった。
名簿を見て、名簿に口付けたくなった。
フィリス、名前だけでも愛おしい。

自分の成人の儀は、出ないと成人扱いにならないから出ただけ。なんの感慨もない。

成人王族として多種多様な公務に出席するようになった。各地でいろんな人と知り合った。

寄ってくる虫は多くある。
本命の花は、土も水も違う土地に根をはりたがる。

フィリップ殿下の腕の中に飛び込んできたら良いのに。
2人だけの部屋で、太陽が昇り、月が沈み、また太陽が昇るのを眺めて暮らしたい。

フィリップ殿下の心に棲み着いて離れないのは、今も昔もただ1人。

フィリス・ガラン。
ずっとフィリスだけがほしい。
この先もずっと。