111 / 1,415
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?
112.子育てって、自分育てって言う人もいるらしいね。コーハ王家の子育ては、両方同時にうまく育ったのかな?
しおりを挟む
「先代国王陛下が、兄を廃し、弟のわたしを王位に就ける考えに至ったのは、先例を聞いて、王族全員の命を危ぶんだからだ。」
「うちと似たような国が?」
「『国王は政治に関与しない、王族は国王を助けるが、政治に関与しない。ただし、王族の籍をぬけて、臣籍を賜った者はその者に限り、例外としてもよい。』という王族典範を声明として発表した国がある。」
「その国の王族は何をしたの?」
と姉。
「王族主導で、何度か、国が危うくなった。」
「政治の舞台に立ったらダメな人を輩出する家系なの?」
と姉。
「人が良すぎるせいで、大規模な詐欺とか、平気で引っかかるらしくてね。業を煮やした高位貴族が、『今後、我が国の国王陛下と王族は、義務も責任も、政治については考えずに生きていただくことにした』と声明を出した。
『今後政治の話は、全て、その貴族家に話を持ってくるようにすること、国王や王族に持ってきた話はないものととする。今後、国王と王族が政治絡みの契約や約束をしても、無効である。』
発表された当時、あまりの斬新な考え方に脱帽したと言った首脳陣が世界中にいたそうだよ。画期的だったから。」
「どのへんが、かわかりません。」
とラウル。
「国に損害を与える王家を殺して、自分達が玉座に就くことも出来たはずなのに、人がよくて政治に向いていないせいだから、と政治的権力から切り離して、生きていける道を用意したことだね。」
「簒奪しなかったのね。」
と姉。
「筆頭公爵家として、その貴族を中心に王族に関与させず国の舵取りを始めたところ、みるみるうちに強国になった。今もその国の勢いは衰えていない。」
「その話がコーハ王国とどう関係してくるんですか?」
とラウル。
「その筆頭公爵家が、コーハ王国でいうところのガラン家だったんだ。」
ラウルも姉も息を呑んだ。
「どちらも旧家だ。ガラン家はコーハの国興しに協力した。あちらは、王家の後ろ盾になった。」
「あちらの王家は、建国からずっと、後ろ盾の家が国の実質的な柱として、存在感を示してきた。問題が起きたとき、それ以上悪化しないように国王の首根っこを押さえるのが、当主の仕事として書かれている。」
「公文書に?」
「そうだよ。両者は、それくらい親密な関係を築き上げてきた。」
「一方で、ガラン家は建国にあたり名前を貸したが、王家にも国政にも関与していない。」
違いがわかるね?と父は言った。
「あちらの王家は、生かされた。
しかし、コーハ王家は生かされるだろうか?
コーハ王家は、王太子自身がすすんでガラン家の嫡子を貶めてきた。極めつけは、嫡子を拉致してきた上に、ない権力をかさにきて、王太子が無理な要求をした。」
「滅びへ一直線。」
と姉。
「先代国王陛下は、いろいろ調べてみて、改めて、旧家というものが、何かを理解したそうだ。」
「『今日、ダルクは私を見て話をしたな。今までは、私の方に顔が向いているだけで、私を視界に入れていなかった。』と先代国王陛下はわたしに確認してきた。」
「わたしは、ダルクが先代国王陛下にも兄にも関心がないことは感じ取っていたから、そうですね、と答えたよ。」
「『誓約書を理解していない国王と王家は、誓約の隣人の条件を満たさない。だから、ダルクの態度に責める点は1つもなかったんだ。』と先代国王陛下は当時を思い返して、噛み締めていた。
私は、最初からこちらの態度が悪かったせいだと思ったけれどね。」
「『お前はダルクに認められている。繋ぎで良いから、1年でも玉座に座れ。今すぐ王妃となる令嬢の選定を始めて、決まり次第婚儀だ。お前の次は、お前の子どもが玉座に座る。』」
「兄は?」
「『兄はな、ガランの件を乗り切れたら良かったんだが。今日、兄は、相手にされていたか?』
『いいえ。』
『兄に王位を渡したら、王家はおしまいだ。誓約の隣人ではない国王が王位に就いたら、誓約を破ることになる。』
『今からでも、兄をどうにか再教育できませんか?兄を廃嫡したら、影響が大き過ぎます。』
『お前が言うなら、してみるが、期待はするな。私は親として国王として、第一歩から間違い、その間違いを訂正せずにきたせいで、兄は、王太子でなくなる。』
先代国王陛下は苦しそうだったね。
『わたしは、言葉がどうであれ、兄がガラン家より側近をとる姿勢をみせたときに、兄自身に再教育を施さねばならなかったのだ。あそこで、許したから、ダルクには何をしても許されると学習してしまった。最初から間違えていたのだ。』」
「うちと似たような国が?」
「『国王は政治に関与しない、王族は国王を助けるが、政治に関与しない。ただし、王族の籍をぬけて、臣籍を賜った者はその者に限り、例外としてもよい。』という王族典範を声明として発表した国がある。」
「その国の王族は何をしたの?」
と姉。
「王族主導で、何度か、国が危うくなった。」
「政治の舞台に立ったらダメな人を輩出する家系なの?」
と姉。
「人が良すぎるせいで、大規模な詐欺とか、平気で引っかかるらしくてね。業を煮やした高位貴族が、『今後、我が国の国王陛下と王族は、義務も責任も、政治については考えずに生きていただくことにした』と声明を出した。
『今後政治の話は、全て、その貴族家に話を持ってくるようにすること、国王や王族に持ってきた話はないものととする。今後、国王と王族が政治絡みの契約や約束をしても、無効である。』
発表された当時、あまりの斬新な考え方に脱帽したと言った首脳陣が世界中にいたそうだよ。画期的だったから。」
「どのへんが、かわかりません。」
とラウル。
「国に損害を与える王家を殺して、自分達が玉座に就くことも出来たはずなのに、人がよくて政治に向いていないせいだから、と政治的権力から切り離して、生きていける道を用意したことだね。」
「簒奪しなかったのね。」
と姉。
「筆頭公爵家として、その貴族を中心に王族に関与させず国の舵取りを始めたところ、みるみるうちに強国になった。今もその国の勢いは衰えていない。」
「その話がコーハ王国とどう関係してくるんですか?」
とラウル。
「その筆頭公爵家が、コーハ王国でいうところのガラン家だったんだ。」
ラウルも姉も息を呑んだ。
「どちらも旧家だ。ガラン家はコーハの国興しに協力した。あちらは、王家の後ろ盾になった。」
「あちらの王家は、建国からずっと、後ろ盾の家が国の実質的な柱として、存在感を示してきた。問題が起きたとき、それ以上悪化しないように国王の首根っこを押さえるのが、当主の仕事として書かれている。」
「公文書に?」
「そうだよ。両者は、それくらい親密な関係を築き上げてきた。」
「一方で、ガラン家は建国にあたり名前を貸したが、王家にも国政にも関与していない。」
違いがわかるね?と父は言った。
「あちらの王家は、生かされた。
しかし、コーハ王家は生かされるだろうか?
コーハ王家は、王太子自身がすすんでガラン家の嫡子を貶めてきた。極めつけは、嫡子を拉致してきた上に、ない権力をかさにきて、王太子が無理な要求をした。」
「滅びへ一直線。」
と姉。
「先代国王陛下は、いろいろ調べてみて、改めて、旧家というものが、何かを理解したそうだ。」
「『今日、ダルクは私を見て話をしたな。今までは、私の方に顔が向いているだけで、私を視界に入れていなかった。』と先代国王陛下はわたしに確認してきた。」
「わたしは、ダルクが先代国王陛下にも兄にも関心がないことは感じ取っていたから、そうですね、と答えたよ。」
「『誓約書を理解していない国王と王家は、誓約の隣人の条件を満たさない。だから、ダルクの態度に責める点は1つもなかったんだ。』と先代国王陛下は当時を思い返して、噛み締めていた。
私は、最初からこちらの態度が悪かったせいだと思ったけれどね。」
「『お前はダルクに認められている。繋ぎで良いから、1年でも玉座に座れ。今すぐ王妃となる令嬢の選定を始めて、決まり次第婚儀だ。お前の次は、お前の子どもが玉座に座る。』」
「兄は?」
「『兄はな、ガランの件を乗り切れたら良かったんだが。今日、兄は、相手にされていたか?』
『いいえ。』
『兄に王位を渡したら、王家はおしまいだ。誓約の隣人ではない国王が王位に就いたら、誓約を破ることになる。』
『今からでも、兄をどうにか再教育できませんか?兄を廃嫡したら、影響が大き過ぎます。』
『お前が言うなら、してみるが、期待はするな。私は親として国王として、第一歩から間違い、その間違いを訂正せずにきたせいで、兄は、王太子でなくなる。』
先代国王陛下は苦しそうだったね。
『わたしは、言葉がどうであれ、兄がガラン家より側近をとる姿勢をみせたときに、兄自身に再教育を施さねばならなかったのだ。あそこで、許したから、ダルクには何をしても許されると学習してしまった。最初から間違えていたのだ。』」
0
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
英雄様の取説は御抱えモブが一番理解していない
薗 蜩
BL
テオドア・オールデンはA級センチネルとして日々怪獣体と戦っていた。
彼を癒せるのは唯一のバティであるA級ガイドの五十嵐勇太だけだった。
しかし五十嵐はテオドアが苦手。
黙って立っていれば滅茶苦茶イケメンなセンチネルのテオドアと黒目黒髪純日本人の五十嵐君の、のんびりセンチネルなバースのお話です。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
【R18+BL】ハデな彼に、躾けられた、地味な僕
hosimure
BL
僕、大祇(たいし)永河(えいが)は自分で自覚するほど、地味で平凡だ。
それは容姿にも性格にも表れていた。
なのに…そんな僕を傍に置いているのは、学校で強いカリスマ性を持つ新真(しんま)紗神(さがみ)。
一年前から強制的に同棲までさせて…彼は僕を躾ける。
僕は彼のことが好きだけど、彼のことを本気で思うのならば別れた方が良いんじゃないだろうか?
★BL&R18です。
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる
冷凍湖
BL
人生だめだめな陰キャくんがありがちな展開で異世界にトリップしてしまい、公爵サマに拾われてめちゃくちゃ甘やかされるウルトラハッピーエンド
アルファポリスさんに登録させてもらって、異世界がめっちゃ流行ってることを知り、びっくりしつつも書きたくなったので、勢いのまま書いてみることにしました。
他の話と違って書き溜めてないので更新頻度が自分でも読めませんが、とにかくハッピーエンドになります。します!
6/3
ふわっふわな話の流れしか考えずに書き始めたので、サイレント修正する場合があります。
公爵サマ要素全然出てこなくて自分でも、んん?って感じです(笑)。でもちゃんと公爵ですので、公爵っぽさが出てくるまでは、「あー、公爵なんだなあー」と広い心で見ていただけると嬉しいです、すみません……!
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる