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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?
111.誓約書とか、契約書とか、読み返すと玉手箱な、コーハ王国の始まりを知る日
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必殺、掌返しねえ、と姉は感心したように呟いた。
「格下だと思ってナメきっていた相手が、格上だった、ということかしら?」
「先代国王陛下が脂汗をかいて、ダルクを送り出した後、悲愴感たっぷりに言ったんだ。『家族や王家のためにしたことが、家族と王家を滅ぼしてしまう。』」
「いきなり、まさかの悲劇ごっこ?」
と姉。
「その後すぐ、『兄ではなくお前が王位に就くしかない』とわたしに。」
「父上を?」
とラウル。
緊迫したから、気を抜くため?
いや、ラウルの父はラウルをからかったわけではなかった。
「先代国王陛下は、王家に保管していた誓約書の内容をわたしから聞いて、念のために調べたそうだ。現役では分からなくて、隠居していた者達から聞き取りした。」
「先々代国王陛下までは、真実をそのまま理解していた。先代国王陛下は、ガラン家の先代当主に接触したのが、真実を知るより先だった。『ガランとはうまくやっているから、問題なぞない』と先代国王陛下は聞く機会を作らなかった。代々、ガラン家と接触する前に王家の人間には理解させてきたから、今まで問題が起きてこなかったそうだ。」
さて、ここから、歴史に立ち返ろうと父は言った。
「初代国王陛下は、建国にあたり、どうしても、ガラン家の勢力を取り込みたかった。ガラン家のところまで出向いて、軍門に下るように要求したんだ。『従うなら優遇することを約束しよう。』
当時のガラン家当主は、初代国王陛下に対し『お前は、靴を舐めにきたのだろう?それとも、命乞いだったか?』と相手にしなかった。
何度か折衝を重ねて、話し合いが出来るようになった。『国興しの助けがほしいのか?お前の蛮勇に免じて話を聞くか。』となったそうだ。」
「王家の、格下感がすごい。初代からブレない。」
と姉。
「初代国王の話を聞き終わったガラン家の第一声は、コーハという国がある限り、玉座に座るのが誰でも、我々ガランに敵対行為を働かないと誓えるか?』だった。」
「『コーハ王国の国王と王家がガラン家に敵対するなど未来永劫ないと誓う。』初代は言った。」
「『コーハ王家と国王が代々永きにわたって、誓約書の文言を遵守する限り、ガランはコーハ王国の内に住む。我々は新しき隣人の助けになるだろう。』とガラン家は言ったそうだ。」
「その日が、ガラン家がコーハ王国のガラン子爵家を名乗る始まりとなった。」
「まさか、子爵が自称なの?ガラン家の大物感が、突き抜けていて惚れる。初代子爵家当主と付き合いたい。」
と騒ぐ姉。
「お前の趣味に合う男がいないのは、その趣味のせいじゃないかな。」
と父。
「嫡子で当主になる私の助けになり、浮気をしない種馬か、頼りになる男がほしいだけなの。最低条件なのに、合格者がいないなんて。」
と嘆く姉。
「種馬。」
と聞いて、ひき気味のラウル。
「私はね、ラウル。
私が子どもを妊娠中とか、仕事中に、私の稼ぎを使って他の女と運動に励む男はいらないの。わたしに養われるのは明白なんだから、養われる覚悟で婿入りしてほしいだけなのよ。」
と姉は、ラウルの肩に手を置いて訴えた。
「姉上は男前なので、並の男が霞んでしまいます。」
とラウル。
「夫が浮気しようもんなら、動物の檻に入れるわよ。」
と姉。
「八つ裂きにするんですか?」
とラウル。
「いえ?他所のお家の息子さんだから、簡単だけど、簡単に済ませるわけにもいかないのが、貴族。」
と姉。
「浮気相手がケモノなら、まあ、腹も立たないかなっと。」
姉のどストレートな本音にびっくりのラウル。
浮気するなら、獣姦ね、と夫に言えるのか。言えそうだな、姉上だから。
ラウルが黙っていると、姉はショックを受けたと思ったようだ。
「ラウルは、未成人だから、まだ姉の言葉の意味が理解できなくても大丈夫よ。」
と姉。
「恋人や好きな人。特定の誰かが出来たときは、相手に誠実であることが長続きの秘訣。女の情念や恩讐は人を殺せるからね。」
と姉。
「心に残しておきます。」
とラウル。
「格下だと思ってナメきっていた相手が、格上だった、ということかしら?」
「先代国王陛下が脂汗をかいて、ダルクを送り出した後、悲愴感たっぷりに言ったんだ。『家族や王家のためにしたことが、家族と王家を滅ぼしてしまう。』」
「いきなり、まさかの悲劇ごっこ?」
と姉。
「その後すぐ、『兄ではなくお前が王位に就くしかない』とわたしに。」
「父上を?」
とラウル。
緊迫したから、気を抜くため?
いや、ラウルの父はラウルをからかったわけではなかった。
「先代国王陛下は、王家に保管していた誓約書の内容をわたしから聞いて、念のために調べたそうだ。現役では分からなくて、隠居していた者達から聞き取りした。」
「先々代国王陛下までは、真実をそのまま理解していた。先代国王陛下は、ガラン家の先代当主に接触したのが、真実を知るより先だった。『ガランとはうまくやっているから、問題なぞない』と先代国王陛下は聞く機会を作らなかった。代々、ガラン家と接触する前に王家の人間には理解させてきたから、今まで問題が起きてこなかったそうだ。」
さて、ここから、歴史に立ち返ろうと父は言った。
「初代国王陛下は、建国にあたり、どうしても、ガラン家の勢力を取り込みたかった。ガラン家のところまで出向いて、軍門に下るように要求したんだ。『従うなら優遇することを約束しよう。』
当時のガラン家当主は、初代国王陛下に対し『お前は、靴を舐めにきたのだろう?それとも、命乞いだったか?』と相手にしなかった。
何度か折衝を重ねて、話し合いが出来るようになった。『国興しの助けがほしいのか?お前の蛮勇に免じて話を聞くか。』となったそうだ。」
「王家の、格下感がすごい。初代からブレない。」
と姉。
「初代国王の話を聞き終わったガラン家の第一声は、コーハという国がある限り、玉座に座るのが誰でも、我々ガランに敵対行為を働かないと誓えるか?』だった。」
「『コーハ王国の国王と王家がガラン家に敵対するなど未来永劫ないと誓う。』初代は言った。」
「『コーハ王家と国王が代々永きにわたって、誓約書の文言を遵守する限り、ガランはコーハ王国の内に住む。我々は新しき隣人の助けになるだろう。』とガラン家は言ったそうだ。」
「その日が、ガラン家がコーハ王国のガラン子爵家を名乗る始まりとなった。」
「まさか、子爵が自称なの?ガラン家の大物感が、突き抜けていて惚れる。初代子爵家当主と付き合いたい。」
と騒ぐ姉。
「お前の趣味に合う男がいないのは、その趣味のせいじゃないかな。」
と父。
「嫡子で当主になる私の助けになり、浮気をしない種馬か、頼りになる男がほしいだけなの。最低条件なのに、合格者がいないなんて。」
と嘆く姉。
「種馬。」
と聞いて、ひき気味のラウル。
「私はね、ラウル。
私が子どもを妊娠中とか、仕事中に、私の稼ぎを使って他の女と運動に励む男はいらないの。わたしに養われるのは明白なんだから、養われる覚悟で婿入りしてほしいだけなのよ。」
と姉は、ラウルの肩に手を置いて訴えた。
「姉上は男前なので、並の男が霞んでしまいます。」
とラウル。
「夫が浮気しようもんなら、動物の檻に入れるわよ。」
と姉。
「八つ裂きにするんですか?」
とラウル。
「いえ?他所のお家の息子さんだから、簡単だけど、簡単に済ませるわけにもいかないのが、貴族。」
と姉。
「浮気相手がケモノなら、まあ、腹も立たないかなっと。」
姉のどストレートな本音にびっくりのラウル。
浮気するなら、獣姦ね、と夫に言えるのか。言えそうだな、姉上だから。
ラウルが黙っていると、姉はショックを受けたと思ったようだ。
「ラウルは、未成人だから、まだ姉の言葉の意味が理解できなくても大丈夫よ。」
と姉。
「恋人や好きな人。特定の誰かが出来たときは、相手に誠実であることが長続きの秘訣。女の情念や恩讐は人を殺せるからね。」
と姉。
「心に残しておきます。」
とラウル。
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