フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
105 / 1,437
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

106.愛情って、もつれて絡まると、簡単にほどけないよね?

しおりを挟む
「どうしてガラン子爵家の当代当主だったのでしょうか?父上、理由を聞かれたことはありますか?」
とラウル。

「先代国王陛下が、よりによってなぜダルク!と兄に問い糾した。」

『先代国王陛下は、問題が大きくなって後に引けなくなってから、やっと、兄の有り様に目がいったんだね。』と話すラウルの父は、自身の父の話をしているはずなのに、どこまでも他人のようだった。

『先代国王陛下と兄とわたしの3人で膝を突き合わせたのは、アレが初めてだった。』
父は続けた。

「兄は、先代当主が大好きだった。先代国王陛下も先代当主を待ち焦がれていたが、兄もだ。
ある時、兄は、自分が向けるのと同じだけの思いが向けられていないと思ったそうだ。
先代国王陛下のことも兄のことも、そんなに好きだと思っていないかも、と。

先代当主のうちの子自慢を聞いてたときは、ショックを受けたそうだ。」

「国王陛下は、子どものころ、親の愛情に飢えていたのかしらね。」
と姉。

「先代国王陛下は、先代当主を人前で褒めたり、思い出を自慢をすることはよくあったが、同じ熱量を兄やわたしや妹に向けたことはなかったなあ。」

兄は不満だったのだろうね。わたし自身は、うるさくなくてちょうど良かった、と父は笑った。


「兄は、先代国王陛下が先代当主を話題にするたびに、先代国王陛下にもっと関心を持ってほしくなる。
同時に、先代当主に対しても、もっと兄に関心を持ってほしいと願う気持ちが大きくなる。

先代当主の大切な我が子と仲良くなったら、両方解決すると考えたそうだ。

しかし、先代当主が関心を持っている我が子ダルクは、実際に会ってみると、先代当主以上に、兄に関心がなかった。

兄は、自分がダルクに関心を持っていないのは仕方ないことだが、ダルクが無関心なことに憤りを覚えたという。」

「ダルクのことは、初対面から気に入らなかったが、仲良くなれば、先代国王陛下にも先代当主にも褒められるから、仲良くしてやろうと目論んでいたところ、相手にされなさすぎて、アテが外れてしまった。」

「先代国王陛下は、兄とダルクの仲がよいと思い込み、事実確認もせず、兄を疑う素振りもないから、先代国王陛下の前では、仲良くしているフリをしていた。」

「しかし、兄は、現状が簡単に破綻することも理解していたんだ。」

「当時、側近達に確認したところ、
ガラン子爵家の当主は立派で好人物なのに、息子は全く良いところがないが、嫡子であるゆえに、無下にするわけにはいかない。兄は苦労しながら、面倒をみてやっているとうそぶいていたことが分かった。」


「ガラン子爵家当主のことは褒め称え、一方で、自慢だという嫡子は、期待外れだった、と漏らせば、人は食いつく。ガラン子爵家の先代当主は、世界中に知己がいる方だったから、まだ見ぬ嫡子は、話題になれば注目必至。」

「ダルクという人物を実際に知らない人が、信頼する主人である兄から、ダルクに困らされている話を聞いて、ダルクに良い感情を持つわけがない。

兄は、自分の周りがダルクに対する悪感情に溢れている状況が心地良かったそうだ。」

「先代国王陛下は、ダルクに良い感情しかない。ダルクに対する先代国王陛下の思いが、ダルクの父に起因する感情であっても、兄は苦しんでいたらしい。」

「お父様は、どうだったんですか?」
と姉。

「わたしは、先代国王陛下や兄とは体調のせいもあって、距離があるのが当たり前だったからね。
先代国王陛下と兄が、先代当主に大喜びしているのを冷めた目で見ていた子どもだったよ。
そんな冷めた目の子どもがいることに、先代当主は気付いていたが、先代国王陛下と兄は気付いてなかったね。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

食堂の大聖女様〜転生大聖女は実家の食堂を手伝ってただけなのに、なぜか常連客たちが鬼神のような集団になってるんですが?〜

にゃん小春
ファンタジー
魔獣の影響で陸の孤島と化した村に住む少女、ティリスティアーナ・フリューネス。父は左遷された錬金術師で村の治療薬を作り、母は唯一の食堂を営んでいた。代わり映えのしない毎日だが、いずれこの寒村は終わりを迎えるだろう。そんな危機的状況の中、十五歳になったばかりのティリスティアーナはある不思議な夢を見る。それは、前世の記憶とも思える大聖女の処刑の場面だった。夢を見た後、村に奇跡的な現象が起き始める。ティリスティアーナが作る料理を食べた村の老人たちは若返り、強靭な肉体を取り戻していたのだ。 そして、鬼神のごとく強くなってしまった村人たちは狩られるものから狩るものへと代わり危機的状況を脱して行くことに!? 滅びかけた村は復活の兆しを見せ、ティリスティアーナも自らの正体を少しずつ思い出していく。 しかし、村で始まった異変はやがて自称常識人である今世は静かに暮らしたいと宣うティリスティアーナによって世界全体を巻き込む大きな波となって広がっていくのであった。 2025/1/25(土)HOTランキング1位ありがとうございます!

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

処理中です...