フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

92.子どもを担当する職員さんは、臨機応変と危機対応が素晴らしい。連携プレーが冴えてるよ！

職員は悩んだ。
フィリス・ガランはたった今、人気者の王子様に後ろ足で砂をかけたばかり。

王子様に大興奮していた子どもの間に放置は危険だ。

ガラン子爵家の4人目は、王子に興味がない様子を見せつけたことに、何にも感じていない。

紹介してと頼んでくる子どもは、正面から物申すくらいだろうけれど。

物申してきた子どもに、あなたにも興味ない、とか言ったら、火に油を注ぐ。

交流会に来て、興味がないとか、ケンカ売りすぎだろ！と誰かが騒ぎそうだ。

フィリス・ガランの心情としては、凪いだままなのだろうが。
『興味がない人がたまたま目の前にいた、絡んできた、やっぱり興味がない。』

フィリス・ガランが興味を持っても、騒動の後だけに、相手は怯みそうだ。

どうしたものかな。


落ち着きがあって、一目おかれている子どもで、フィリス・ガランに動じないのは、誰かな？

職員は、逸材たちを発見した。

ジーン・ザレイス侯爵令息
シドニー・クランズ伯爵令息
ラウル・ミストル侯爵令息
エスター・カンダンテ伯爵令息

この4人をセットで！

普段、問題児に、この4人をつけたりしない。取り入ろうとする親の意思を聞いた子どもが暴れるから。

ガラン子爵家に下手な相手をぶつけるのは、後々よろしくない。

経済でも軍事でも、ガラン子爵家と同じ存在感を出せる家はコーハ王国に現存しない。

交流会が発端になって、家がとんだりしたら、始末が恐ろしい。関係者全員、首が胴から離れる。

ジーンは、国王陛下の従兄弟を父に持つ侯爵令息。
フィリップ殿下の側近の1人、ウィルソン・ケヒーニ公爵令息と公式に交流がある。
シドニーは、ジーンの補佐としてついている伯爵令息。落ち着いた気質だ。

ラウルは、国王陛下の弟を父に持つ侯爵令息。
フィリップ殿下のもう1人の側近、レオナルド・ナラカイ公爵令息と公式に交流がある。
エスターはラウルの補佐としてついている伯爵令息。年下の子どもに絡むような気質ではない。

4人の中に置いておけば、他の子どもは絡みにいくまい。

職員は目と目で以心伝心し、フィリス・ガランの隔離スペースを確保。

フィリスをそちらに誘導していると、フィリスか立ち止まった。
「どうかしましたか？」
「あれに。」

フィリスの視線の先にいるのは、交流会に来ても、交流しないで、いつも2人で遊んでいる子爵令息達。
ノーマ・ブリジール子爵子息とシエル・ファウス子爵子息。

「あの2人が気にかかりますか？」

フィリスは視線を1度、職員に返すと、2人を見た。

声が聞こえたらしく、2人もフィリスを見ている。

ノーマとシエルの近くにいた職員が配置につく。

フィリスは、古い叙情詩の1節を詠み上げる。

すぐに、2人は、続きを順に2節ずつで応えた。

フィリスは、視線を職員に向けて歩き出す。

ノーマとシエルも職員を促して、続いた。


最近の子どもの流行りかな？
職員は思った。
フィリス・ガランは説明しないタイプのようだから、ノーマとシエルに聞こう。

何か通じるものがあったんだろうか。