フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

91.フィリスの交流会デビュー。王子が何ぞや？知っていて相手にしない兄3人。知らなくても同じことをするフィリス。

フィリス、初めての交流会。

当代ガラン子爵家の子どもも、フィリスで4人目である。

長男デヒルと次男リドリグの台詞には、クビを覚悟した職員たちも、時間が経つにつれ、3男ハーマルが上の2人ほどじゃなかったと思い始めた。

4男は、もっとマイルドになっているかもしれない。

どこにも根拠などないが、希望を持ってしまったのである。


だから、第4王子フィリップ殿下が、ガラン子爵家の4男を見に来ると言い出しても、なんの心配もしていなかった。

フィリップ殿下は、開始宣言の前から側近とともに注目を集めていた。

王太子殿下にもしものことがあれば、第4王子フィリップ殿下がもしや、と囁く者がでるほど優秀な王子。

側近は、王子の優秀さに対等に付き合える公爵令息が2人早々に決定した。
この決定が覆ることはない。成長なされば、次代の王国の一翼を担われることだろう。

コーハ王国の王侯貴族、期待のエース。

同世代の男女だけでなく、大人もお目通りをぜひ！と乞う王子がお目見えしている。

王族と交流がある高位貴族でも、そわそわする心を隠しきれない者も少なくない。

いつもは、初参加者から紹介するが、初参加者にいきなり王子の前に立たせたら、可哀想過ぎるという大人の配慮があり、初参加者は、最後に回された。


例文通り、自己紹介する前に、フィリップ殿下に1言、2言挨拶をする子どもが続く。

家のこと、自分のことを話そうとした子どもは、
「はい、次。」
と職員にぶった切られていた。

フィリスは、例文通り、名前と年齢、家の爵位を堂々と話した。

「今をときめく殿下がこの場にいらっしゃるのに、何にも言わなくていいの？」
職員は、フィリスが遠慮しているのかと、言葉を促した。

「この場に、お父様もお兄様もおりましたらね。」
フィリスはおっとりと断る。

「父と兄がどう関係する？」
フィリップ殿下が訝しげに問いかける。

「他に気にかかることなど。」
とフィリスは微笑んだ。

「自国の王子殿下が目の前においでなんだぞ。」
興奮した声が周囲からとぶ。

職員が落ち着くように働きかけ、ようやっと静まったころ。
「預かり知らぬこと。ボクの庭に入るものは決まっております。」
フィリスが穏やかに話し始めた。

「けむに巻くか。」
フィリップ王子はフィリスから目を離さない。
「足元に何をお求めでしょう？」
フィリスの笑みは掴みどころがない。

「ゆるむ地盤の上に城を欲するその心、建てる年月、住む年月、長いのはどちらか？」
フィリスは、一瞬目を閉じた。
「一時の栄華を極ることこそ至高か、滅すれど、悔いはなしや？」
フィリスの開いた瞳の中にフィリップ殿下の姿はない。


時間が止まってしまったので、職員が強制的に次へと繋いだ。