フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

83.近衛別働隊の隊員は、美と健康のプロ。近衛騎士団本隊の団員は荒事のプロ。

近衛別働隊の隊員は自身の体調管理に気を使うように指導されている。
管理されているといってもよい。

本番で、歌ったり、踊ったり、演奏したり、魔法を使ったり、を成功させるため、日々の練習と本人のメンテナンスは必要不可欠。

会場、衣装、演出を支える道具、演者がベストコンディションであること。

近衛別働隊は国王直下の組織である。

国と国王の権威を高揚してナンボの組織だ。

本番での成果とは、外交の一助となったり、経済活動の弾みとなったり、国威発揚に繋がる全て。

国王直下の組織が成果をあげないなど、存在意義を問われる案件である。

そういう組織特有の事情から、
別働隊の隊員の日常は、本隊の騎士団に比べて、はるかに規制が多い。

健康状態を著しく損なうことがないように、王城勤務日は、勤務開始前、勤務中、勤務終了時の健康チェックがある。
問題がある者は速やかに医療担当がつく。

更に、美容チェックもある。
身長、体重、胸囲、腹囲などの数値のほかに、肌の調子、頭髪や爪の状態など、自身で意識して、見た目を美しく保つ努力をすることが推奨されている。

美容チェックに引っかかると、生活を丸ごと管理される。

管理解除は、自身で美容管理が充分できるようになるまでだ。
終わりは自分の出来次第だから、予定がある者は死にものぐるいで、美容管理を出来るようになる。

管理プログラムに入ると、生活のスケジュール、食事時間、食事内容、鍛錬や訓練の細かい項目、業務時間、業務内容、入浴時間、風呂での過ごし方、睡眠時間に加えて、椅子やシーツ、石鹸、香水のように、個人の好みが出るものまで、検証を加えながら管理される。

中途半端は一切ないので、管理プログラムを適用されていない隊員は、健康的な美しさを自ら心がけている。

美しい男が美しく着飾り、美しい空間を演出するのが成功の秘訣と心得よ。
極意は、美しくあってナンボ、である。



近衛別働隊は、近衛と名前がつくが、近衛騎士団本隊とは上下関係がない。

近衛別働隊の入隊する条件は、2つ。

近衛騎士団に入団して研修期間終了後、本人が異動願を出して、別働隊から入隊を許可されること。
近衛別働隊から働きかけがあった者で、近衛騎士団に入団し、研修期間を終了した者。

近衛別働隊に所属が変更になると、近衛騎士団本隊には2度と戻れない。

業務を始め、鍛錬、訓練、研修も全て変わる。

個人的に突出している者もいるが、別働隊の隊員の戦闘力は、入団後の研修終了時点を下回らないことが条件なので、別働隊にいた者が本隊へ戻っても生きていけない。

本隊の団員の戦闘力は、頻繁に行われる研修や訓練を完遂できることが最低条件だからだ。

『生きて日の出が見れた。』
『水が美味しい、生きている証拠。』
終了と同時に力尽きた参加者が互いに、生きている喜びを分かち合うまでが、恒例行事となっている。

コーハ王国の近衛騎士団の訓練方針は、
『突き落として、登ってきたところを踏みつけてから、蹴り落とす。何度でも。』
である。

訓練開始前の教官の訓示が、
『死にものぐるいで、生き延びてみせろ。』
である。

訓練内容によっては、参加者に訓練による結果の生死について、不問を了承する誓約書の提出が義務づけられているものもある。


共通項もある。

近衛別働隊も近衛騎士団も、王侯貴族をはじめとする政府要人との接触は必須。

教養や礼儀作法の講習、研修は、コーハ王国の近衛必修となっている。