フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
77 / 1,439
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

78.王妃様主催のトトカルチョ。ハーマルにとって、弟フィリスは、可愛くて、出来る子。

しおりを挟む
近衛別働隊から上がってきたフィリス達の売春宿内偵計画に目を通したハーマルの上司は、感慨深げに言った。

「『フィリスとサブリーとユージュアル。アホのこ3人組は、いつまでアホのこでいられるか。』に今年までを選んでいたら、まけていたな。」

「そのトトカルチョ、本当にあるんですね?」

ハーマルは、外交部に配属後、同僚から、家族は参加できないけど、と教えられた。

1年刻みで、年を選んで、1人1口からかけられる。

参加資格は、貴族籍の王城勤務者。

胴元が王妃陛下。
トトカルチョにかかる事務作業は、王妃様の直属の部下があたっている。

利益の一部は、フィリス、サブリー、ユージュアルに還元されている。

歴代王城勤務者には、数々の奇特な人物や猛者がいた。
優秀さ故、長く働いていてほしいが、周りが被る被害が甚大だったり、突拍子なさすぎて後始末に苦労したりすることがあった。

周囲の苦労緩和とガス抜き、諸々の後始末費用を捻出するために、王族主催のトトカルチョ開催に踏み切ったのが始まり。
適宜、情報の周知し、関係者への慰労金捻出、該当人物の後始末費用に充当しながら、定期的に配当を配る。
参加者によっては、良い小遣い稼ぎになるようだ。

該当人物本人にはトトカルチョの存在をふせる。
該当人物の1親等、2親等の親族は参加不可。
3親等の親族は、同居していたら参加不可。
別居の場合は、参加可能。

ガラン子爵家の王城勤務は、ハーマルだけだ。

当主の父は、王城側の説明を聞いて、1言発して帰った。
『フィリスが可愛くいられるかが重要。』

フィリスがのびのび過ごすために、どこかでバランスをとるなら、トトカルチョだろうとハーマルも思う。

第4王子フィリップ殿下の不始末でフィリスは近衛にいるのだから、感謝などはない。

かつて、トトカルチョの対象者の兄弟姉妹が感謝感激した話があるらしいが、そんな問題人物と可愛い弟を一緒くたにするなんて、頭が悪すぎると腹の底で思っている。

決して表に出さないが、ハーマルには思うところがある。

うちの弟は、アホのこではない。
理解できないのは、基準が違うからで、おつむの出来が悪いせいじゃない。


トトカルチョの告知があると、フィリスとハーマルを比べて、ハーマルを褒める人間が出てきた。

余計なお世話でしかない。

「手のかかる弟さんがいると大変ね。」
「君はよくやっている。」
「君は、仕事も出来る良い子だね。」


フィリスは、成人後、領地で、ガラン軍の後方支援に携わる予定で育てられた。

子ども時代のうちに、フィリスに必要な教育は終えている。

ガラン領主、ガラン領、ガラン軍とガラン領民、周辺国の地理、ガラン領が交流を持っている国、地域、人物についてちゃんと理解して、動けることが重要だった。

フィリスがガラン領で生きていく限り、充分、出来る子で通る。

国内の王族も貴族も、対応するのは、当主と嫡子なので、領地で遊んで生きると決まった4男には、無関係で通せる。

国境の領地から、気に入ったから自分の側におきたい、と戦力になる男子を召し抱えようとする王子が馬鹿とハーマルは思っている。

ハーマルは、フィリスの召し抱え事件の前から、フィリップ殿下の歓心を買いたい人間に物凄く迷惑をかけられている。

ハーマルは、国内の貴族学校に通ったので、王城で働く貴族に顔見知りは多い。

フィリスと父が、フィリップ殿下の誘いを断ると、有象無象が次々、ハーマルのところへ訳知り顔で顔を出す。

めちゃくちゃうざい。
この一言に尽きる。

貴族学校の先輩後輩かもしれないし、同級生かもしれないけど、他人じゃん?
うちの弟を勝手に人身御供に持っていこうとするな、である。

今では、迷惑をかけてきた有象無象のことは下調べも済み、要所要所で、扱き使っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋
恋愛
 貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

処理中です...