フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
66 / 1,437
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

67.親切な顔で、獲物に近づいてくる狩人は、獲物を捕まえても、親切な仮面をとらない。

しおりを挟む
男は歩きながら、ダーニャンの斡旋先をかんがえている。

「彼女さんはなー。喜怒哀楽が難しいから、普通の店じゃダメだよなー。どこに紹介しよう?やっぱり、特殊プレイ専門店かな。」

「田舎者カップルの破局率、高いよなー。まあ、おれのせいだけど。カップルだと、男も女も両方、売れるから、1度で2度美味しいぜ。」

「あの不動産屋ではると、まず間違いなく釣れる。あそこは、カップルほいほい兼カップルクラッシャーだな。」

男は、ダーニャンが住んでいる部屋に入った。

「ダーニャン、金を増やして、ちやほやしてもらえる場所を知っているんだが、興味あるか?
お前なら、人気者になると思うんだよなー。
王都民のおれが言うんだから、間違いないね。」

「ワタシ、人気者になれる?」

「磨かれた女を見て反応しないのは、男じゃない。」

「ポロンは、キレイになったワタシを見ても、何も言ってくれない。一生懸命お手入れしたのに、ワタシじゃなくて、お金の話ばかり。」

「ほら、むしゃくしゃしているんだろ?ちやほやされに行ったらどうだ?」

「行ってくる。ポロンは褒めてくれないけれど、お店にいる男の人は、すごく褒めてくれるわよね?」

「男は皆、女を称えたい生き物なんだ。」
金を落としてくれる分だけ、と男は腹の中で付け足した。

「一緒に来て。」

「一緒には行けねえ。女の子は大歓迎で、ちやほやしてくれるけど、男は入れてもらえないんだ。おれは女じゃないからな。」

男に貢がないから、おれには水も出てこねー。

店で男に囲まれて、飲むより、斡旋出来るヤツを見つけ出す方が、建設的な気がする。

ノルマあるからな。

「そうなんだ。」
ダーニャンは緩慢に頷いた。

「深く考えず、王都を楽しんでこい。場所はわかるから、連れて行ってやるよ。」

「たくさん褒められたいから、持っていきたいのがあるけど、いい?」

「荷物?好きにしたらいいぜ。」

どうせ、借金で買ったものは1つも手元におけない。
後で回収して、再利用だからなー。
今のうち、いい気分を味わっておけよ。


ダーニャンが店に入ったのを見届けて、男はやれやれと背伸びした。

「ノルマ達成。やっと解放される。」
男の独り言に、くすくすと笑う声がした。

「解放されたいの?天職なのに。」
いつの間にか、男の姿が蜃気楼のように揺らいでいる。

「マジで勘弁してくれ。やる気のある女の子を紹介するのは、こっちも燃えるけどな。」

「ダーニャンは、人気出るわよ。調教好きが、甚振って、甚振り倒して、ボロボロになったところを、さらに甚振るコースね。」

「超ハード。ポロンには無理だな。」

「常識っぽい何かはあるけど、頭の良くないひ弱な男。お店に慣れたら、頭角表すわよ。慣れるまでグズグズするわね。」

「そうか、お眼鏡に適ったようで何より。」

「仕事っぷりにはいつも満足してるわよ?」

男は、腹に力をこめた。
「それで、もう自由の身になれるんだよな?」

「ええ。あなたのお願いだもの。お別れなんてとても残念。」

「そんなに気に入っていただけていたとは恐縮です。」

「まあ、ご丁寧に。でも、行くんでしょ?」

「ああ。世話になった。」

「本当に行くの?もう会うこともないわね。」

「そうなのか、呼び出されることもあるか、と身構えていた。」

「また会う気があるの?」

「いや。これっきりにしてくれ。」

「つれないわね。じゃ、さようなら。」

男からの返事はなかった。

男の体には大きな穴が開いている。

「せっかく、いい拾いものだと思ったのに、お仕事やめて、自由になりたいなんて。」

女は、勿体なかったわー、と嘆く。

「よく働く異世界人、また落ちてこないかしら?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

勇者召喚に巻き込まれて追放されたのに、どうして王子のお前がついてくる。

イコ
BL
魔族と戦争を繰り広げている王国は、人材不足のために勇者召喚を行なった。 力ある勇者たちは優遇され、巻き込まれた主人公は追放される。 だが、そんな主人公に優しく声をかけてくれたのは、召喚した側の第五王子様だった。 イケメンの王子様の領地で一緒に領地経営? えっ、男女どっちでも結婚ができる? 頼りになる俺を手放したくないから結婚してほしい? 俺、男と結婚するのか?

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

食堂の大聖女様〜転生大聖女は実家の食堂を手伝ってただけなのに、なぜか常連客たちが鬼神のような集団になってるんですが?〜

にゃん小春
ファンタジー
魔獣の影響で陸の孤島と化した村に住む少女、ティリスティアーナ・フリューネス。父は左遷された錬金術師で村の治療薬を作り、母は唯一の食堂を営んでいた。代わり映えのしない毎日だが、いずれこの寒村は終わりを迎えるだろう。そんな危機的状況の中、十五歳になったばかりのティリスティアーナはある不思議な夢を見る。それは、前世の記憶とも思える大聖女の処刑の場面だった。夢を見た後、村に奇跡的な現象が起き始める。ティリスティアーナが作る料理を食べた村の老人たちは若返り、強靭な肉体を取り戻していたのだ。 そして、鬼神のごとく強くなってしまった村人たちは狩られるものから狩るものへと代わり危機的状況を脱して行くことに!? 滅びかけた村は復活の兆しを見せ、ティリスティアーナも自らの正体を少しずつ思い出していく。 しかし、村で始まった異変はやがて自称常識人である今世は静かに暮らしたいと宣うティリスティアーナによって世界全体を巻き込む大きな波となって広がっていくのであった。 2025/1/25(土)HOTランキング1位ありがとうございます!

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

処理中です...