フィリス・ガランの近衛生活

第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった？

64.コーハ王国の近衛は人気者。欲望に忠実な方、恨みを募らせた方、商売道具にお考えの方。表社会からも裏社会からも、引く手あまた。

ダンシェルのお父上とも、大切なお話を終えて戻って来たフィリス。
今日は、近衛の主要業務に忙しい。

歌、踊り、演奏、衣装、小道具、配置などの打ち合わせや練習の他に。

細々とした会議や会議未満の意見交換。
有給休暇や振替休日の申請などの相談。
外出先が自宅以外で、家族以外に外出の同行者がいる場合、外出先で落ち合う場合は、その者の情報を提出する。
同行者や外出先で会う者が、近衛に支障をきたさない相手である限り、申請は通る。

コーハ王国の近衛と知った上で、悪さを企むと有象無象が少なくないのだ。

未婚の貴族子弟を対象にハニートラップ仕掛けに来る奴らとか。
好みの男と既成事実を作ろうと画策する高貴だったり、高貴じゃなかったりする方々とか。
身代金目的の誘拐とか。
脅迫目的の拉致監禁とか。

なんの準備もなく、用心もせず、出歩くと、大変危険である。

治安がよくても、準備万端の犯罪が人目につく前に完遂されてしまうこともある。


何しろ、コーハ王国の近衛は、人気がある。

表社会からも裏社会からも。

コーハ王国の貴族は、どの家も初代まで遡れる。

生物上の両親がともにコーハ王国の王侯貴族でないと、コーハ王国の貴族とは認めない。


建国以来、堅持している貴族規定があり、血統の確かさを国が保障している。

王侯貴族の血筋が欲しい方々からは垂涎の的。

平民と貴族の垣根が低い国でも、貴族なんて大したことがないと言いながら、チラチラ見てしまう存在である。

コーハ王国の近衛は、貴族子弟と貴族子女のみに門戸が開かれている。

つまり、コーハの近衛は確実に全員貴族。

当主とか嫡子には、護衛や使用人がいて、なかなか近寄れない。
近衛として仕事をしているなら、お近づきになるチャンスは、作り出せる。

血統書付きを我が物にしようとする者、
敵対する相手への牽制や嫌がらせに使おうとする者。
金儲けしたいもの。

人の欲望は尽きることがない。

成人したての15歳でなくとも、貴族子弟に対し、常に狙われているから気をつけるようにと言うだけでは、危険を回避できない。

相手の情報を精査したり、相手から情報を引き出したり、危ない目に遭わないように立ち回ったり。

一朝一夕に出来ないので、1つずつ、照らし合わせて検証しながら、情報を共有し、互いに身を守る。

近衛別働隊は、特に、戦闘特化ではなく、文化特化なので、自分自身の身を守り、家や国を守るためにも、知識は武器なのだ。



外国への訪問が決まれば
コーハ王国の今回の目的、同行者、随行員といった身内の情報を整理し、

訪問先の国情、訪問先の要人や関係者を把握して、足りない情報を収集した後に、

近衛別働隊に所属する近衛へ速やかに情報を開示。

フィリスの仕事は関係する他部署の長に、
「情報欲しいな。」
で寄せられた情報を元に別働隊幹部の精査後、追加をして、一般隊員に開示。

現在の幹部は、創設から在席しているメンバーのみ。

フィリスは創設メンバーなので、幹部の1人である。

幹部は、侯爵子息が6人、伯爵子息が6人、子爵子息はフィリスを含めて3人。

男爵家のサブリーとユージュアルはフィリスの補佐なので幹部になっていない。