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第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

49.いい雰囲気になりかけるとジャマが入る。フィリスが近衛になったのは、やんごとなき方の秋波のせい?

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「よくない。フィリス、体を戻しなさい。」
部屋の入口からフィリスの兄のハーマルが姿を見せた。

「だめなの?」
ダンシェルが抱きしめやすいようにと体を預けていたフィリスは、首だけ、兄に向ける。

「片方は休暇中だけど、フィリスは業務中じゃなかったかな?」
ハーマルはそのまま面談室に入ってきた。

「ボクはお仕事中、だったよ、さっきまで。もうお仕事は、お仕舞いにしたから。」

「そもそも、王城の面談室は逢引用の部屋ではないよ。」

「ごめんなさい。家でします。たくさん。」

「仕事中に、休暇中の後輩を職場に呼び出してすることではないからね、フィリス。」

「はい。」

ハーマルは、ダンシェルを見た。

「うちの問題に巻き込んですまなかったね。
フィリスと仲良くしたいなら、もっと用心深く、賢く立ち振る舞うようにしないと、早々に取り除かれるぞ。」

「取り除かれる?」
ダンシェルは、ハーマルを凝視してしまった。

「今のところ、第4王子フィリップ殿下のお心に変化はない。」

「噂は本当だと?」

「どういった内容の噂か、当事者には最後にしか分からないから、なんと答えたら良いのか。まずは、聞いてみるかな。」

ハーマルのフザけた軽さに、ダンシェルは気持ちが軽くなった。
「フィリップ殿下がフィリスにご執心ではないか、と。」

「今まで聞いた噂で1番まともだ。」
ハーマルは笑って、さっきまでフィリスが座っていた対面に腰を下ろした。

「ご執心、その通り。
但し、フィリスにその気はなく、ガラン子爵家もその気がないため、殿下は、近衛より近い地位を用意出来なかった。」

「近衛より近い地位?」

「王子配。」

「同性婚を?」

「うちが突っぱねた結果が、フィリスの近衛入り。」

「フィリスが、フィリップ殿下の護衛筆頭にいるのは?」

「殿下のお引き立て。
名目だけでも、地位が高い方が使えるから、受けている。
フィリップ殿下には護衛筆頭が他にもいるだろう?
実質的に護衛するのは彼らだ。
フィリスは大局を見て指示する。殿下のために体は張るのは、フィリスの仕事ではない。」

「王城の中ですが、話していてよいんですか?今の。一応、近衛の領分ですが。」

「フィリスは近衛別働隊だからな。護衛は、別働隊創設の主旨にそわない。」

「はい。」

「第一、中枢に関わる人間は、暗黙の了解で知っている。公然の秘密ともいう。誰にも邪魔されずに、フィリスといたいのだろう?」

「中枢、なぜですか?」
ダンシェルには、ハーマルの言い分は唐突過ぎた。

「フィリスが欲しがっている人間がいて、その者も側にいきたいと願っている。中枢で地位を築きあげないと、2人とも苦しむ結果になる。」

「オレの名前を出さないのは、配慮くださっているんですね。」

「私は弟が可愛い。
弟の人生に絶望はいらない。
フィリスに苦しみを与える存在が、増えないことを望むのは、おかしくないな?」

「はい。」


フィリスは少しむくれている。

「ハーマルお兄様。せっかくダンが可愛かったのに。」

「可愛いのか?」

「出会った日から、ずっと。」

「可愛いだけでは、フィリスといられない。どうする?」

「もう。ボクが。」

「うん?」

「ボクが、10年でダンを引っ張り上げる。」

「10年後、可愛い人は29歳になっているね。」

「ボクは、今の地位が、本物になるように動く。同時に、ダンも鍛える。10年後には、誰にも、ダンを傷つけさせない。」

「覚悟はいいようだね?」

「はい。」
フィリスは兄の袖を掴んだ。

「だから。ハーマルお兄様、これからも、たくさんボクを助けて下さい。お願いします。」

「フィリス。」
ハーマルは苦笑いしながら、頭を下げた弟の背中を撫でた。

「オレも。出来れば、よろしくお願い致します。」
ダンシェルはフィリスに倣って頭を下げた。
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