フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
上 下
27 / 1,438
第3章 世の中には、異世界転移する男子高校生もいれば、異世界転生する人もいる

27.平民街の役所には、どんなご用事で?

しおりを挟む
平民街に行くというのは聞いたが、目的を知らないままである。自分は一体何しにいくんだろうか。
「平民街には、何しに?」
タマキが聞くと役所で見学と返事がきた。

「百聞は一見に如かず。私が良いと言うまで、口を開かないこと。タマキの世界でいうところの社会科見学。見学中、私語は厳禁。」

役所で社会科見学!
俺は本当にファンタジー異世界にいるんだろうか?

「役所に着く前に聞いておきたいんだけど。」
「何か?」
「この世界に魔法はあるのか、だよ。」
「今、聞くことか?」

社会科見学に関係する質問じゃないのかよ、と顔が語っている。

「だって、異世界に来たはずなのに、炊事、洗濯、掃除、読み書きしていたら、一歩も外に出ないうちに1ヶ月終わってたんだぞ。炊事、洗濯、掃除、全部、手作業だし、不思議なものは1つもない。前の世界との違いが文字くらいしか思い浮かばない。」

「使わないものがあってもな。手作業で足りているのに。」

魔導具に憧れはないの?
この世界で生まれ育つと珍しくないのか?

「道具は、使っても使わなくても、メンテナンスがいる。買って終わりではない。手間と維持費がいる。故障したら修理代もかかる。使わず片付けても、場所をとる。いらない。」

まさか、隣を歩いているのは、断捨離の達人だったのか?
特殊能力が断捨離という貴族の執事がいる異世界。

「使わないからうちにない、とは思いもしなかった。家主が月2日しかいない、だらだらする家という目的を考えたら、買わないのは正解なのか。」
昼寝スペースにトレーニングマシンはいらない、とか、そういう感じ。

どうしても気になるなら、と引率者が情報を追加してきた。
「役所にはある。利用者がそれなりにいて、あると便利だから。」
「見たら、それと分かる?」
「分からなかったら、社会科見学が終わってから聞いてこい。」
「つまり、見たことがないものが、魔導具ということね。」

話していたら、役所と書いてある建物が見えてきた。
「最後に、もう1つ。俺は、役所で、何を見学するんだ?」

「役所が仕事をどんな分担で回しているかを知ると、仕事の流れが理解し易い。」

「俺は、今後役所で働くとか、お使いにいく予定があるのか?」

「お使いは、おいおい。役所で働くときは、工作員とわからないようにな。」
工作員?何か、聞こえたような?
「空耳?」
「何はともあれ、拷問に耐性をつけてからでないと。」
しれっと流されているけど、現代の日本人高校生に工作員は無理だよ。スパイも無理だから。
「待って、魔導具の話題のときは、ファンタジーぽかったのに。よりによって、ハードボイルドに突入する?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

処理中です...