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第2章 フィリス、16歳の男子高校生を自分の家に連れてかえる

20.異世界にきて初めてしたこと、黒歴史作り

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フィリスの個人宅暮らしにも慣れた頃、タマキは先輩達に質問していた。
「フィリス様って、親の家に帰ったりもしますよね?月2日しか帰ってこないのに、何で自分で邸宅持っているんですか?」

「コーハ王国の近衛は、王城の1角に住んでいる。休暇や用事で外出することはあるけれど、基本的に寮住まい。」
「へー。」
「親の住んでいる家に自室があっても、そこで過ごす時間はほとんどない。」
「何で?」
「近衛は貴族のお仕事だ。貴族社会は、人間同士のお付き合いが命運を握る。近衛のお仕事がない日は、家のお仕事をする日。」
「休めない?」
「そう。フィリス様とご家族は、互いに良く思い合っていらっしゃる。フィリス様が休みを気持ちよく休むための隠れ家として、個人宅をお持ちになるのがよかろうとなったわけだ。」
「フィリス様がだらだらしているのは、気を抜いているから?」
「その通り。この屋敷に、フィリス様に忠誠を誓う者だけをおくのは、フィリス様が心置きなく寛がれるため。」
誇らしげな先輩をみて、良い職場にきたとタマキは思う。


異世界人の扱いについて、常識を学んでみた。

「俺は、すんなり受け入れられてびっくりしたんだけど、異世界人は、よくいるの?」
「正確にはわからないが、どの時代でも、どこかの国に1人以上いるんじゃないかな。」

「フィリス様の説明を聞く前は、異世界人がきたら、有難がられて、喜ばれるイメージを持っていてさ。実際は、凄く厳しいよね。生かす気があるのか、疑うくらい。」
「まあ、そうだな。」

「異世界人の存在は知れ渡っているけど、扱いがめんどくさい奴ら、という認識だよね。なんか理由あるの?」

先輩は、ふうっと息を吐いた。
「過去に、やらかした異世界人がそれなりにいる。
病気を持ち込んで、国が荒れたり。特殊な技能が、犯罪の温床になったり。宗教国家に喧嘩売って、戦争の引き金をひいたり。思い込みで大量虐殺したり。

能動的な異世界人は厄介な人間が多かった。

自分の知り合いが傷付いたり、死ぬことは忌避するくせに、この世界の無辜の民に傷を負わすのは躊躇しないとか、王権はよくないから、民衆のために権力者はすべからく死すべし、とかね。」

断りもなく、土足で上がり込んで、妄想をまき散らした挙げ句、住まいを荒らしたのか。
親切な異世界人による世直しファンタジーにはならなかったのだろう。

「厄介者ばかり?」

「勿論、この世界でまっとうに生きた人間も少なくない。問題なく一生を終えた者もね。問題を起こす人間の数が少なくても、問題の規模や影響が大き過ぎてね。平民は、関わって面倒なことに巻き込まれるのは嫌がるよ。支配者階級は、問題が起きないように、前もって、手を回すことが多いな。」

「そうか。フィリスが俺に会いにきたのは、支配者階級だからかな?」
「関心はお持ちだったから、義務ばかりではなさそうだけど、お心については、なんとも。」

「そっか。俺は、フィリスに会えて良かった。

拾ってくれたおっさんは、
俺の頭の中が異世界転移でヒャッハーしていて、王女様と仲良くなるぜと鼻息荒いのを見て危機感を覚えたんだろうな。放置したら問題が起きるに違いないヤバい奴を拾ったけど、フィリス様、どうしようか、的な。」

「概ね、そんな感じだね。」
「当たり?うっかり拾った異世界人が、王女様を襲撃する気だ、やべーじゃん!は本気?」
「タマキの話していた内容だと、お金持ちの権力者の女子に執着しているようにしか聞こえないから。世界を跨いだ犯罪者か、16歳で筋金入りの変態かと。友達や兄弟の嫁と娘には会わしてもらえないタイプだよ。」
「あー、うん。おっさんが俺に話しかけまくったり、周囲に常に誰かいたのは、俺を性犯罪に走らせないためだったのかな。うざがって悪かったよ。」
「興奮が覚めて良かったね。」
「異世界にきて、最初に作るのが黒歴史とか。」
「いつかは、笑って話せるよ。」
「いや、話したくない。」
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