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第1章 フィリス23歳、16歳の男子高校生の異世界人に会いにいく

14.ゴウ、ボクのうさぎさん、キミに優しい世界を

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フィリスはうさぎ団団長のゴウと、タマキの手続きを済ませると、恒例のご挨拶。
「タマキを買ってかえるね。」
「毎度お買い上げ、ありがとうございます。これからも、どうぞお引き立てを。」
フィリスは、真面目くさったゴウの口上を嬉しそうに見守ると、ギュッと抱き締めた。

ゴウの耳元でささやく。
「ボクのうさぎさん。今回もキミと仲間たちの元気な姿が見られて嬉しい。」
フィリスはゴウの頬を撫でた。
「この世界が、キミに優しい世界になりますように。」
フィリスはゴウの額に自分の額をくっつけた。
「世界中どこにいても、ゴウはボクのうさぎさんだよ。怖くなったら、全力で逃げて。ゴウの帰ってくる場所、ボクのところにちゃんとあるから。」
ゴウが破顔する。
「坊っちゃんは、いくつになっても変わらないな。出会った日のままだよ。」
「そう?」
「裏社会の人間しかいない路地裏に、うさぎを探しにきた日のまんまだな。」
「ゴウがゴウだから、ボクはボクなの。」
「坊っちゃんに出会ったあの日から、俺の残りの命は坊っちゃんのものだ。好きに使っていいんだぞ。」
「ゴウには、ボクが死ぬ瞬間まで、幸せを噛み締めてから、死んでほしい。」
「俺は坊っちゃんのいない世界で、生きていようとは思わないからな。実際、坊っちゃんがいなけりゃ、世界中を見て回りながら、仕事なんか出来ない。そうだろう?」
「ゴウ。辛い?」
「元々、非合法な日陰者集団だったのに、今じゃ、お天道様の下を大手を振って歩ける。傭兵を名乗ったお陰だよ。」
「ゴウが満足しているなら、ボクは嬉しい。」
「フィリスは寂しそうだな?」
「もっとゴウに会いたい。ボクのうさぎさんは放し飼いなんだもの。お仕事じゃないと会えないなんて。」
「傭兵稼業だからな、情報収集するのに、紐付きと知られたら仕事にならんだろう。」
「わかっている。だから、今日は甘やかして。」
「坊っちゃん。」
「なあに?」
「坊っちゃんを連れて逃げる力はなくても、坊っちゃんが今の場所で生きていく力にはなれるからな。」
「ゴウ。」
「坊っちゃん。」
「大好き。」
「知っている。」
「もう。」
フィリスはそっとゴウの頬に唇を寄せた。
「ゴウも。」
催促されて、ゴウもキスを返す。
ゴウは、くっついて離れないフィリスの背中や頭をよしよしと撫でる。

フィリスについてきたガラン子爵家の使用人の1人が、ゴウに視線を投げた。

「坊っちゃん、そろそろ、時間切れだ。また連絡するから、楽しみに待っていてくれや。」
ゴウが視線を受けて、フィリスの背中を軽く叩く。
フィリスは顔を上げてゴウと視線を絡めた。
「待っているから。」

そのままそっと、体を離し、傭兵団団長と言葉を交わすのに、適正な距離まで歩く。
くるりとゴウに向き直る。

「此度の働き、見事であった。謝礼を用意した。受け取るとよい。」
フィリスの側にいる使用人の1人が謝礼の目録を読み上げて、もう1人が金を渡した。

「ありがたき幸せ。いと尊き方のお目にかなったこと、身に余る喜びでございます。」
ゴウ以下、うさぎ団が頭を下げる。

「これからの仕事にも期待を寄せておられる。励むがよい。」

「はっ」

「フィリス様、お言葉を。」
フィリスはうなずく。

「うさぎ団よ、永遠なれ。」
フィリスの声掛けをうさぎ団が復唱する。
「「「「うさぎ団よ、永遠なれ。」」」」


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