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第1章 フィリス23歳、16歳の男子高校生の異世界人に会いにいく
8.異世界の人やモノとこの世界が融和できるかどうかはね
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フィリスはタマキにお茶と茶菓子をすすめ、自分も喉を潤すと、ゆっくり話し始めた。
「この世界は、異世界からの漂流物が不定期に現れるので、1つだけ、世界共通の決まり事がある。」
「何?」
「異世界からの漂流物は、その拾得者が所有権を持つ。」
「つまり?」
「タマキの拾得者は、この場所で拾って、世話してくれている男の人。タマキはその人の持ち物の1つ。」
「なんだよ!人権はどこにいった?」
ふざけんなと騒ぐタマキが静かになるまで、フィリスはゆったりと待つ。
「異世界からの漂流物とは、人だけじゃないからね。動植物や無生物のこともある。生きている状態とも限らない。人の形をしているけれど、人かどうかわからないことだってある。
何がいつどこに出現するか、わからないし、未知のものだから、発見しても拾うか、拾わないかは好きにしてよい。拾得者は所有権を有する代わりに、その影響するところには責任を負う。」
「どういうことだ?」
「例えば、拾った動物が、余所の畑を荒らしたら、拾得者は謝罪して弁償しなくてはいけない。その上で、拾った動物が手に余るなら、扱える人に譲り渡すか、処分することになっている。」
「それは、人でも同じ扱いなのか?」
「人でも無生物でも同じ。例えば、拾った無生物のお陰で畑が豊作になったら、その恩恵は拾得者が受け取る。」
「人は、動物や物とは違うだろう?」
「異世界からの漂流物は、すべからく異端であり、異物。この世界に存在しなかったもの。存在の証明が出来ないもの。あると便利かもしれないけれど、なくても困らない。拾ったことで、自分の手に負えない事態を招く可能性があるなら、触らないで権力者に知らせてお任せする方が、楽と考える人は少なくない。後々、責任をとらされるリスクを抱え込まなくて済むから。」
タマキは、はぁっと頭を抱えた。
「俺に会いに来た、ということは、品定めにきたのか。」
「彼には彼の生活がある。人間は働かないと生きていけない。タマキは、この世界で世話をやいてくれた人に何を返した?」
「お礼はした。」
「何を?」
「ありがとう、て。」
「他人にお世話になったら、言葉だけじゃ足りないよ。」
「そんなこと言ったって。俺は、チートも何もないんだぞ。男子高校生がいきなり無双出来るかよ!」
「無双はいらないよね。世話してもらう分には到底足りなかったとしても、炊事や掃除、洗濯、生きていくのに切り離せない分野は、分からないなら聞きながらでも、体を動かせば貢献出来る。」
「俺、やったことないんだ、無理だよ。」
タマキは弱々しく息を吐いた。
「この世界には、タマキが育った世界のようにタマキの保護者は1人もいない。タマキの面倒を見れるのは、タマキ自身だけ。無償の助けを期待しても、家族も友人もいない。そして、赤の他人に助けてもらうには対価がいる。」
「来たくてきたわけじゃないのに。」
「うん。」
「喚ばれたら、歓迎されるもんだと思うじゃん。迷惑だから、出ていけってなんだよ。」
「タマキは、呼び寄せた人に心当たりがあるの?」
「俺を拾ったとかいうオッサンじゃないのか?」
「彼は、たまたま、タマキの出現場所に居合わせただけだよ。
人間ぽい動物が目の前にいる。世話してみたら、言葉は通じた。
でも、王女様や高貴な女性とお近づきになりたいという願望を一方的に語るばかり。
世話されるのが当たり前だと言って、働かない成人男性を養う理由、彼にはあるかな?」
「それだけ、聞くと、俺、いつか大物になるとか言っちゃうヒモじゃん。」
タマキの表情が翳る。
「あのおっさんに利用されてたまるか、絶対ファンタジー世界をものにしてやる、と思っていたのに。」
見知らぬ土地と見知らぬ大人に囲まれて、必死に虚勢をはっていたのかもしれない。高貴な女性がいつか後ろ盾になるから、オッサンなんか怖くない、と。
虚勢の結果、不気味がられて、手放し時期が早まった。
「最初にタマキを拾ったのが、彼なのは幸運だったね。」
「何で。捨てられそうなのに?」
「まだ捨ててない。捨てる前に、ボクに異世界人がいるよ、要るなら売るよ、と声をかけてきたんだもの。」
「この世界は、異世界からの漂流物が不定期に現れるので、1つだけ、世界共通の決まり事がある。」
「何?」
「異世界からの漂流物は、その拾得者が所有権を持つ。」
「つまり?」
「タマキの拾得者は、この場所で拾って、世話してくれている男の人。タマキはその人の持ち物の1つ。」
「なんだよ!人権はどこにいった?」
ふざけんなと騒ぐタマキが静かになるまで、フィリスはゆったりと待つ。
「異世界からの漂流物とは、人だけじゃないからね。動植物や無生物のこともある。生きている状態とも限らない。人の形をしているけれど、人かどうかわからないことだってある。
何がいつどこに出現するか、わからないし、未知のものだから、発見しても拾うか、拾わないかは好きにしてよい。拾得者は所有権を有する代わりに、その影響するところには責任を負う。」
「どういうことだ?」
「例えば、拾った動物が、余所の畑を荒らしたら、拾得者は謝罪して弁償しなくてはいけない。その上で、拾った動物が手に余るなら、扱える人に譲り渡すか、処分することになっている。」
「それは、人でも同じ扱いなのか?」
「人でも無生物でも同じ。例えば、拾った無生物のお陰で畑が豊作になったら、その恩恵は拾得者が受け取る。」
「人は、動物や物とは違うだろう?」
「異世界からの漂流物は、すべからく異端であり、異物。この世界に存在しなかったもの。存在の証明が出来ないもの。あると便利かもしれないけれど、なくても困らない。拾ったことで、自分の手に負えない事態を招く可能性があるなら、触らないで権力者に知らせてお任せする方が、楽と考える人は少なくない。後々、責任をとらされるリスクを抱え込まなくて済むから。」
タマキは、はぁっと頭を抱えた。
「俺に会いに来た、ということは、品定めにきたのか。」
「彼には彼の生活がある。人間は働かないと生きていけない。タマキは、この世界で世話をやいてくれた人に何を返した?」
「お礼はした。」
「何を?」
「ありがとう、て。」
「他人にお世話になったら、言葉だけじゃ足りないよ。」
「そんなこと言ったって。俺は、チートも何もないんだぞ。男子高校生がいきなり無双出来るかよ!」
「無双はいらないよね。世話してもらう分には到底足りなかったとしても、炊事や掃除、洗濯、生きていくのに切り離せない分野は、分からないなら聞きながらでも、体を動かせば貢献出来る。」
「俺、やったことないんだ、無理だよ。」
タマキは弱々しく息を吐いた。
「この世界には、タマキが育った世界のようにタマキの保護者は1人もいない。タマキの面倒を見れるのは、タマキ自身だけ。無償の助けを期待しても、家族も友人もいない。そして、赤の他人に助けてもらうには対価がいる。」
「来たくてきたわけじゃないのに。」
「うん。」
「喚ばれたら、歓迎されるもんだと思うじゃん。迷惑だから、出ていけってなんだよ。」
「タマキは、呼び寄せた人に心当たりがあるの?」
「俺を拾ったとかいうオッサンじゃないのか?」
「彼は、たまたま、タマキの出現場所に居合わせただけだよ。
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虚勢の結果、不気味がられて、手放し時期が早まった。
「最初にタマキを拾ったのが、彼なのは幸運だったね。」
「何で。捨てられそうなのに?」
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