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第6章 神様が棲むネットショップ〈神棚〉、営業中
78.深川さんに、勝利報告。『方法は、秘密です。』俺は、自慢のないしょの友達がいる。生涯の友達、神様と新しい友達、山の怪(け)。
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「おはよう。志春(しはる)社長。朝一番に、元気な声だ。」
と深川さん。
「早朝に、失礼しました。
私の勝利宣言をお伝えしたくて。」
「早速だけど、状況を教えてもらえるかい?」
と深川さん。
「外傷なしが一人。
自首を勧めました。自首するかどうかは本人の自主性に任せます。
全身を拘束していて、身動きがとれない芋虫状態が一人。ナイフを使い慣れていました。この人からは、ナイフを二本回収しています。
他、八名は、人事不省です。」
「十人の容姿の特徴を聞こうか。」
と深川さん。
俺は、まず、人事不省の八人の特徴とぐるぐる巻きにしてきたナイフ使いの特徴を話した。
自首を勧めた、同級生だった人について話すと。
「一人に対して寛容なのは、何か、他との違いがあったのかい?」
と深川さん。
「自首を勧めている残りの一人は、仕事で大損を出した責任とって、俺を殺すようにと指示されていたようです。」
「殺しにきた人に対して、寛大である必要はあるかい?」
と深川さん。
試されている。
「私を狙ってきた人達への寛大さは、持ち合わせていません。
自首を勧めた一人は、母さんに金儲けの話を持ちかけた人です。
自分のしでかしたことを理解していないのが、母さんと同じでした。
人のもので、楽に金儲けすることを是として生きてきた結果、人殺しになりかけました。
将来を諦めているくらいなら、と、自首を勧めましたが、自首した後の生活に、私は関与しません。」
「志春(しはる)社長は、容赦なく潰したんだね?」
と深川さん。
「はい。私の人生を潰しにきたので、二度と同じ考えを持ちえないようにしました。」
「見事だ。志春(しはる)社長、ぜひ、その方法を知りたいね。」
と深川さんは、声をひそめた。
聞かれるだろうと、予想はしていた。
「ご容赦ください。私の生涯の秘密です。」
俺は、誰にも今夜のことを話すつもりはない。
俺と神様と、新しい友達、山の怪(け)の活躍は、一人と一柱と、一匹?だけが知っていればいい。
「ここだけの話でもかい?」
と深川さん。
食いついてくる。
「どなたにも。いつまでも。どんな条件を提示されても。秘密です。」
「いい心構だね、志春(しはる)社長。」
深川さんは、電話越しに楽しそうに笑っている。
「ありがとうございます。」
「志春(しはる)社長。
以前、チェーザレ・ボルジアの話をしたけれど、覚えているかい?」
と深川さん。
覚えている。
父さんの話だった。
「はい。覚えています。」
「チェーザレ・ボルジアの最期と死後の話をしよう。
生前、チェーザレ・ボルジアは、側近を信頼していた。
側近も、チェーザレ・ボルジアの信頼に応え続けた。
チェーザレ・ボルジアは、敵が多かった。
しかしね。
栄華の中で一生を終えることはかなわなったチェーザレ・ボルジアの醜聞は、ないに等しい。
志春(しはる)社長は、その理由が分かるかい?」
と深川さん。
「敵が多いなら、口さがない人が黙っていませんよね。
醜聞のない人生を送れるほど高潔だったとしても。」
答えが出せずに、俺は言葉に詰まった。
「側近は、チェーザレ・ボルジアの生前も没後も、醜聞になるようなことを含めて、チェーザレ・ボルジアに関する事柄は一切合切、黙秘したんだよ。
捕虜になったときも。」
と深川さん。
「誰にも、最後まで秘密を話さなかったんですか。」
「志春(しはる)社長と共にいる友達は、友達冥利に尽きるだろうね。」
と深川さん。
びっくりして、顔がほころぶ。
「はい。そうだと嬉しいです。」
深川さんに答える声が、どうしても弾んでしまう。
「友達の存在は、否定しないのかい?」
とからかう深川さん。
「自慢の、ないしょの友達なんです。」
神様と山の怪と。
嬉しい話の流れで、深川さんへのお礼の話題に移ろう。
と深川さん。
「早朝に、失礼しました。
私の勝利宣言をお伝えしたくて。」
「早速だけど、状況を教えてもらえるかい?」
と深川さん。
「外傷なしが一人。
自首を勧めました。自首するかどうかは本人の自主性に任せます。
全身を拘束していて、身動きがとれない芋虫状態が一人。ナイフを使い慣れていました。この人からは、ナイフを二本回収しています。
他、八名は、人事不省です。」
「十人の容姿の特徴を聞こうか。」
と深川さん。
俺は、まず、人事不省の八人の特徴とぐるぐる巻きにしてきたナイフ使いの特徴を話した。
自首を勧めた、同級生だった人について話すと。
「一人に対して寛容なのは、何か、他との違いがあったのかい?」
と深川さん。
「自首を勧めている残りの一人は、仕事で大損を出した責任とって、俺を殺すようにと指示されていたようです。」
「殺しにきた人に対して、寛大である必要はあるかい?」
と深川さん。
試されている。
「私を狙ってきた人達への寛大さは、持ち合わせていません。
自首を勧めた一人は、母さんに金儲けの話を持ちかけた人です。
自分のしでかしたことを理解していないのが、母さんと同じでした。
人のもので、楽に金儲けすることを是として生きてきた結果、人殺しになりかけました。
将来を諦めているくらいなら、と、自首を勧めましたが、自首した後の生活に、私は関与しません。」
「志春(しはる)社長は、容赦なく潰したんだね?」
と深川さん。
「はい。私の人生を潰しにきたので、二度と同じ考えを持ちえないようにしました。」
「見事だ。志春(しはる)社長、ぜひ、その方法を知りたいね。」
と深川さんは、声をひそめた。
聞かれるだろうと、予想はしていた。
「ご容赦ください。私の生涯の秘密です。」
俺は、誰にも今夜のことを話すつもりはない。
俺と神様と、新しい友達、山の怪(け)の活躍は、一人と一柱と、一匹?だけが知っていればいい。
「ここだけの話でもかい?」
と深川さん。
食いついてくる。
「どなたにも。いつまでも。どんな条件を提示されても。秘密です。」
「いい心構だね、志春(しはる)社長。」
深川さんは、電話越しに楽しそうに笑っている。
「ありがとうございます。」
「志春(しはる)社長。
以前、チェーザレ・ボルジアの話をしたけれど、覚えているかい?」
と深川さん。
覚えている。
父さんの話だった。
「はい。覚えています。」
「チェーザレ・ボルジアの最期と死後の話をしよう。
生前、チェーザレ・ボルジアは、側近を信頼していた。
側近も、チェーザレ・ボルジアの信頼に応え続けた。
チェーザレ・ボルジアは、敵が多かった。
しかしね。
栄華の中で一生を終えることはかなわなったチェーザレ・ボルジアの醜聞は、ないに等しい。
志春(しはる)社長は、その理由が分かるかい?」
と深川さん。
「敵が多いなら、口さがない人が黙っていませんよね。
醜聞のない人生を送れるほど高潔だったとしても。」
答えが出せずに、俺は言葉に詰まった。
「側近は、チェーザレ・ボルジアの生前も没後も、醜聞になるようなことを含めて、チェーザレ・ボルジアに関する事柄は一切合切、黙秘したんだよ。
捕虜になったときも。」
と深川さん。
「誰にも、最後まで秘密を話さなかったんですか。」
「志春(しはる)社長と共にいる友達は、友達冥利に尽きるだろうね。」
と深川さん。
びっくりして、顔がほころぶ。
「はい。そうだと嬉しいです。」
深川さんに答える声が、どうしても弾んでしまう。
「友達の存在は、否定しないのかい?」
とからかう深川さん。
「自慢の、ないしょの友達なんです。」
神様と山の怪と。
嬉しい話の流れで、深川さんへのお礼の話題に移ろう。
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