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第6章 神様が棲むネットショップ〈神棚〉、営業中
61.手始めに、捕まらずに駅に着いて、一泡吹かしたい。
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「志春(しはる)、捕まらず、引き連れて進むがよい。」
と神様。
神様、俺もそうしたいのは、やまやまなんだ。
最大の問題は、ダルそうに絡んでくる人に、どう対応したらいいのか、分からないこと。
なんて、返すのが正解?
仲良くお喋りしていたら、俺が連れていかれそう。
うん、仲良くしないことにしよう。
方針は決まった。
「人の通り道にわざわざ立たなくても。」
俺は、返事じゃなく、独り言を言う。
会話して、仲良くなったと勘違いされないように。
今日の俺は、独り言の多い人。
俺の影が、ウニ、違うか、山だから、イガ栗、の形になった。
イガ栗のイガが、ずーん、ずーん、と地面や壁に伸びていく。
山の怪(け)は、人だったら、陽キャだと思う。
イベントには、全力投球、みたいな。
「道が空いているのに、わざわざ寄ってくるとか。」
俺の独り言は、会話の音量と同じ。
ダルそうにしていた三人組は、ダルそうなまま、イラッときたようだ。
ダルそうなのは、標準装備?
相手を油断させるための。
「三人で並んで道を塞がれると、迷惑なんだけど。」
俺が、よく聞こえる独り言を話していると。
「お兄さん、聞こえてるでしょ?
何、無視して、行こうとしてくれてんの?」
俺の体を掴んだりせずに、自分達の体で、壁になるようにしているのは、先に手を出したのは、どっちだ対策?
「邪魔、邪魔。本当に邪魔。
俺の進行方向に障害物があったら、踏んでしまうのも仕方ない。
俺に踏まれたくなければ、最初から道を塞がない。
俺は、踏みたくないのに。
俺の足の下に踏んで欲しいと差し出してくる足があるから、踏まざるをえないんだ。」
俺は、独り言を言いながら、俺の進行方向に置かれている足を踏んだ。
「この道は、さっきまで平らだったのに、急にデコボコして歩きづらくなった。」
俺に足を踏まれた人は、めちゃくちゃ腹を立てている。
「志春(しはる)、走れ。山の怪が、先導する。
山の怪は、この三人組以外がいない道を選ぶ。
駅までいって、一度、人に紛れよ。」
と神様。
俺に足を踏まれた人は、踏まれた足の上にあった俺の足ごと、足を蹴り出した。
山の怪に引っ張られて、俺の足は、地面へ。
地面に足がついたタイミングで、俺は、ダッシュした!
三人組が追いかけてくるかと思ったが、追いかけてこない。
「志春(しはる)が、走り出した情報を伝えた後に、悠々と追いかけてくるのであろう。
この先に、人がいるポイントを用意してあれば、情報さえ正確に伝達しておくだけで、走り出した志春(しはる)一人を捕まえられるとふんでおる。
裏をかけ、志春(しはる)。
悔しがらせて、追いかけてこさせよ。」
と神様。
あちらもこちらも、一筋縄ではいかない。
何段階にも構えて、随所、随所で、調整しながら。
イガ栗になっている俺の影。
イガの部分が、偵察しているらしく、縮んだり、伸びたりしている。
土地勘がない場所なのに、俺が迷いなく進めるのは、山の怪の先導があるから。
俺の影のイガが、ぐるぐると回転している。
「志春(しはる)。このまま進むと捕まる。
時間をおけば、通行人がやってくる。
今は休憩して、通行人と合流した後、通行人の斜め前あたりを歩くがよい。」
と神様。
通行人?
全然見えないけど、どこから来る?
俺が、スマホを見るフリして立っていると。
約二分後。
母さんの夫のお姉さんくらいの見た目の女の人が、別の道を歩いている。
女の人は、俺の進行方向に向かって歩いている。
途中で、女の人が、俺の後ろに合流する形に持っていくには?
「志春(しはる)。進むがよい。」
と神様。
俺は、スマホから顔を上げる。
女の人より、一メートル半ほど先にいるように歩き出す。
俺の姿を見て、動いた人が、俺の進行方向にいた。
でも、俺の後ろにいる女の人の姿を確認すると、誰かに連絡を取り始めた。
俺も、通りすがりの女の人を巻き込む気はないから、このまま通り過ぎよう。
連絡をとっている人の顔は確認していく。
俺が、なんとなく、じゃなく、しっかりと顔を見ているのは、見られている方も分かる。
互いに、顔を覚え合いながら、通り過ぎる俺と、俺を見送る人。
「今のは、捕まえるためでなく、追い込むために、いたのであろう。」
と神様。
追い込む場所ある?
「家の塀しかない。塀ドン?」
「袋小路に、であろう。」
と神様。
あるんだ、袋小路が。
山の怪と神様は、情報を共有している?
「志春(しはる)。大通りでは、人の流れに乗って、駅に向かうがよい。
流れに逆らうようにやってきたら、流れに乗って、避けよ。」
と神様。
捕まらないように逃げるためには、冷静さと判断力と先を見通す力がいる。
山の怪がいなくても、神様がいなくても、俺は、前に進めていなかった。
神様がいなかったら、俺は、見通しを立てる前に捕まったか、山の怪の特性を活かしきれずに捕まったと思う。
山の怪が、いなかったら、地の利のない場所で、一秒も無駄にせずに道を選ぶことは不可能だった。
実際に進むのは、俺。
俺は、神様と山の怪の協力を最大限に活かして、勝者になる。
手始めに。
駅までの道に、配置されているはずの誰にも手を出させずに、駅にたどり着いて、一泡吹かす。
と神様。
神様、俺もそうしたいのは、やまやまなんだ。
最大の問題は、ダルそうに絡んでくる人に、どう対応したらいいのか、分からないこと。
なんて、返すのが正解?
仲良くお喋りしていたら、俺が連れていかれそう。
うん、仲良くしないことにしよう。
方針は決まった。
「人の通り道にわざわざ立たなくても。」
俺は、返事じゃなく、独り言を言う。
会話して、仲良くなったと勘違いされないように。
今日の俺は、独り言の多い人。
俺の影が、ウニ、違うか、山だから、イガ栗、の形になった。
イガ栗のイガが、ずーん、ずーん、と地面や壁に伸びていく。
山の怪(け)は、人だったら、陽キャだと思う。
イベントには、全力投球、みたいな。
「道が空いているのに、わざわざ寄ってくるとか。」
俺の独り言は、会話の音量と同じ。
ダルそうにしていた三人組は、ダルそうなまま、イラッときたようだ。
ダルそうなのは、標準装備?
相手を油断させるための。
「三人で並んで道を塞がれると、迷惑なんだけど。」
俺が、よく聞こえる独り言を話していると。
「お兄さん、聞こえてるでしょ?
何、無視して、行こうとしてくれてんの?」
俺の体を掴んだりせずに、自分達の体で、壁になるようにしているのは、先に手を出したのは、どっちだ対策?
「邪魔、邪魔。本当に邪魔。
俺の進行方向に障害物があったら、踏んでしまうのも仕方ない。
俺に踏まれたくなければ、最初から道を塞がない。
俺は、踏みたくないのに。
俺の足の下に踏んで欲しいと差し出してくる足があるから、踏まざるをえないんだ。」
俺は、独り言を言いながら、俺の進行方向に置かれている足を踏んだ。
「この道は、さっきまで平らだったのに、急にデコボコして歩きづらくなった。」
俺に足を踏まれた人は、めちゃくちゃ腹を立てている。
「志春(しはる)、走れ。山の怪が、先導する。
山の怪は、この三人組以外がいない道を選ぶ。
駅までいって、一度、人に紛れよ。」
と神様。
俺に足を踏まれた人は、踏まれた足の上にあった俺の足ごと、足を蹴り出した。
山の怪に引っ張られて、俺の足は、地面へ。
地面に足がついたタイミングで、俺は、ダッシュした!
三人組が追いかけてくるかと思ったが、追いかけてこない。
「志春(しはる)が、走り出した情報を伝えた後に、悠々と追いかけてくるのであろう。
この先に、人がいるポイントを用意してあれば、情報さえ正確に伝達しておくだけで、走り出した志春(しはる)一人を捕まえられるとふんでおる。
裏をかけ、志春(しはる)。
悔しがらせて、追いかけてこさせよ。」
と神様。
あちらもこちらも、一筋縄ではいかない。
何段階にも構えて、随所、随所で、調整しながら。
イガ栗になっている俺の影。
イガの部分が、偵察しているらしく、縮んだり、伸びたりしている。
土地勘がない場所なのに、俺が迷いなく進めるのは、山の怪の先導があるから。
俺の影のイガが、ぐるぐると回転している。
「志春(しはる)。このまま進むと捕まる。
時間をおけば、通行人がやってくる。
今は休憩して、通行人と合流した後、通行人の斜め前あたりを歩くがよい。」
と神様。
通行人?
全然見えないけど、どこから来る?
俺が、スマホを見るフリして立っていると。
約二分後。
母さんの夫のお姉さんくらいの見た目の女の人が、別の道を歩いている。
女の人は、俺の進行方向に向かって歩いている。
途中で、女の人が、俺の後ろに合流する形に持っていくには?
「志春(しはる)。進むがよい。」
と神様。
俺は、スマホから顔を上げる。
女の人より、一メートル半ほど先にいるように歩き出す。
俺の姿を見て、動いた人が、俺の進行方向にいた。
でも、俺の後ろにいる女の人の姿を確認すると、誰かに連絡を取り始めた。
俺も、通りすがりの女の人を巻き込む気はないから、このまま通り過ぎよう。
連絡をとっている人の顔は確認していく。
俺が、なんとなく、じゃなく、しっかりと顔を見ているのは、見られている方も分かる。
互いに、顔を覚え合いながら、通り過ぎる俺と、俺を見送る人。
「今のは、捕まえるためでなく、追い込むために、いたのであろう。」
と神様。
追い込む場所ある?
「家の塀しかない。塀ドン?」
「袋小路に、であろう。」
と神様。
あるんだ、袋小路が。
山の怪と神様は、情報を共有している?
「志春(しはる)。大通りでは、人の流れに乗って、駅に向かうがよい。
流れに逆らうようにやってきたら、流れに乗って、避けよ。」
と神様。
捕まらないように逃げるためには、冷静さと判断力と先を見通す力がいる。
山の怪がいなくても、神様がいなくても、俺は、前に進めていなかった。
神様がいなかったら、俺は、見通しを立てる前に捕まったか、山の怪の特性を活かしきれずに捕まったと思う。
山の怪が、いなかったら、地の利のない場所で、一秒も無駄にせずに道を選ぶことは不可能だった。
実際に進むのは、俺。
俺は、神様と山の怪の協力を最大限に活かして、勝者になる。
手始めに。
駅までの道に、配置されているはずの誰にも手を出させずに、駅にたどり着いて、一泡吹かす。
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