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第6章 神様が棲むネットショップ〈神棚〉、営業中
53.母さんからのメッセージが不穏。帰ろう。来てほしいのは、俺に仕事の依頼をしたいからって、本当に?対面での依頼の話、聞くだけきいてみる?
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母さんからの返事は早かった。
「迎えにいく。どこにいる?」
俺は、カフェの店名をメッセージで送る。
「店から出て。」
と母さんからのメッセージを見たとき、ふと思った。
目撃者を作っておこう。
母さんが、加担した可能性が高い犯罪は、素人の思いつきじゃない気がする。
今の母さんと関わるなら、自衛は必要。
「母さんが、俺がいる場所まで、迎えに来てくれないなら、行かない。」
「迎えにいく。店から出て、言う方向に歩きだして。」
母さんからのメッセージが具体的になった。
俺は、自分の意思で、母さんの指定場所に向かったように見せたくない。
母さんの意思を見たい。
「店の中で、俺を探して見つけて、席まで来て、一緒に店を出る。
目的地まで、母さんと俺で一緒に歩く。
店にタクシーを呼んで、母さんと俺で、目的地にタクシーで乗り付ける。
母さんは、どっちがいい?」
どちらも、母さんといる俺の目撃者ができる。
母さんからのメッセージは?
「迎えに車を出してくれることになったから。それに乗って。」
「知らない人の車には、誘われても乗ったらいけないんだよ、母さん。」
犯罪に巻き込まれないために。
「母さんがいないなら、俺に手渡し出来ないよね?
振り込みして。
手渡しできるお金が手元にあるんだから、振り込めるよ。」
即レスだった母さんからの返事が途絶えた。
メッセージのやり取りをしていたら。
母さんからのメッセージが怪しすぎて、指定場所に行く気が減退した。
何でも母さんの言うことを聞いて、母さんの機嫌をうかがう俺のイメージしか、母さんには残っていない。
大学四年間、突然母さんの反応がなくなったことに苦しんでいた俺は、母さんに俺の存在を意識させないように従順でいることが、母さんに嫌がられないベストな方法だと思って、実践していた。
俺は、母さんに従順でいれば、母さんは、俺を疎まないと思ったから、従順を装おっていたんだよ、母さん。
母さんは、思い出せない?
忘れてしまった?
俺は、元々、従順な性格じゃなかったこと。
母さんを失望させた俺は、母さんの意見に同調せずに、母さんの苦労を聞いても、平気な顔して、父さんに同調していた高校生までの俺だよね?
俺の性格は、大きく変わっていないよ、母さん。
母さんには会わずに、我が家に帰ろうと俺は思った。
俺は、ネットショップ〈神棚〉のホームページにアクセスした。
会計をして、店を出たら、神様と話をしながら、路線バスを待とう。
近くにバス停があったから、ちょうどいい。
俺は、カフェを出て、バス停に向かいながら、神様に報告した。
「どちらにも、近づかぬ方が良かろう。」
と神様。
俺も、そう思う。
「志春(しはる)!」
と母さんの声がした。
姿は見えない。
どこから声がした?
「神様、近くに母さんがいる。
俺が、帰りそうだから、追いかけてきた?
そんなにまでして、連れていきたい理由があるんだ。」
「小童をおびき寄せる親は、ろくなことをせぬ。」
と神様。
母さんの声がしたのに、姿が見えなかった理由は、すぐに判明した。
反対車線を走っていた車から、母さんは、窓を開けて叫んだんだ。
勢いよくUターンしてきた車が、横に停まった。
車の窓が空いた。
「来たわよ。手間かけさせて。」
としかめっ面の母さん。
「帰るから。俺、知らない人の車には、乗らないよ。」
「勝手なことばかり。迎えがほしいなら、最初からそう言えばいいの。」
と母さん。
「母さんだけの迎えじゃないから、いらない。」
俺と母さんが揉めていると、運転席に座っている母さんより五歳以上若そうな女の人が、会話に加わってきた。
「はじめまして。お仕事の話をしたいから、車に乗ってくれる?」
仕事の話?
胡散臭い仕事の話なら、聞きたくない。
「誰の?どんな?誰からの?」
「志春(しはる)くんの。簡単なお絵描きね。依頼主は私。」
と運転席の女の人。
お絵描き、という言い回しが引っかかるけれど。
絵の仕事を対面で依頼されるのは、初めて。
興味は、ある。
話は聞いてみたい。
受けるかどうかは、別にして。
「依頼主の名前と、おおよその絵の注文内容、期限、報酬の条件を聞いてから、考える。」
「いいわよ。それで。乗って。」
と運転席の女の人は、後部座席を示した。
「神様、俺、行くことにした。」
絵の仕事をしているんだ。
絵を描く仕事を依頼したい、と言われたら、どんな仕事か気になって仕方がない。
「迎えにいく。どこにいる?」
俺は、カフェの店名をメッセージで送る。
「店から出て。」
と母さんからのメッセージを見たとき、ふと思った。
目撃者を作っておこう。
母さんが、加担した可能性が高い犯罪は、素人の思いつきじゃない気がする。
今の母さんと関わるなら、自衛は必要。
「母さんが、俺がいる場所まで、迎えに来てくれないなら、行かない。」
「迎えにいく。店から出て、言う方向に歩きだして。」
母さんからのメッセージが具体的になった。
俺は、自分の意思で、母さんの指定場所に向かったように見せたくない。
母さんの意思を見たい。
「店の中で、俺を探して見つけて、席まで来て、一緒に店を出る。
目的地まで、母さんと俺で一緒に歩く。
店にタクシーを呼んで、母さんと俺で、目的地にタクシーで乗り付ける。
母さんは、どっちがいい?」
どちらも、母さんといる俺の目撃者ができる。
母さんからのメッセージは?
「迎えに車を出してくれることになったから。それに乗って。」
「知らない人の車には、誘われても乗ったらいけないんだよ、母さん。」
犯罪に巻き込まれないために。
「母さんがいないなら、俺に手渡し出来ないよね?
振り込みして。
手渡しできるお金が手元にあるんだから、振り込めるよ。」
即レスだった母さんからの返事が途絶えた。
メッセージのやり取りをしていたら。
母さんからのメッセージが怪しすぎて、指定場所に行く気が減退した。
何でも母さんの言うことを聞いて、母さんの機嫌をうかがう俺のイメージしか、母さんには残っていない。
大学四年間、突然母さんの反応がなくなったことに苦しんでいた俺は、母さんに俺の存在を意識させないように従順でいることが、母さんに嫌がられないベストな方法だと思って、実践していた。
俺は、母さんに従順でいれば、母さんは、俺を疎まないと思ったから、従順を装おっていたんだよ、母さん。
母さんは、思い出せない?
忘れてしまった?
俺は、元々、従順な性格じゃなかったこと。
母さんを失望させた俺は、母さんの意見に同調せずに、母さんの苦労を聞いても、平気な顔して、父さんに同調していた高校生までの俺だよね?
俺の性格は、大きく変わっていないよ、母さん。
母さんには会わずに、我が家に帰ろうと俺は思った。
俺は、ネットショップ〈神棚〉のホームページにアクセスした。
会計をして、店を出たら、神様と話をしながら、路線バスを待とう。
近くにバス停があったから、ちょうどいい。
俺は、カフェを出て、バス停に向かいながら、神様に報告した。
「どちらにも、近づかぬ方が良かろう。」
と神様。
俺も、そう思う。
「志春(しはる)!」
と母さんの声がした。
姿は見えない。
どこから声がした?
「神様、近くに母さんがいる。
俺が、帰りそうだから、追いかけてきた?
そんなにまでして、連れていきたい理由があるんだ。」
「小童をおびき寄せる親は、ろくなことをせぬ。」
と神様。
母さんの声がしたのに、姿が見えなかった理由は、すぐに判明した。
反対車線を走っていた車から、母さんは、窓を開けて叫んだんだ。
勢いよくUターンしてきた車が、横に停まった。
車の窓が空いた。
「来たわよ。手間かけさせて。」
としかめっ面の母さん。
「帰るから。俺、知らない人の車には、乗らないよ。」
「勝手なことばかり。迎えがほしいなら、最初からそう言えばいいの。」
と母さん。
「母さんだけの迎えじゃないから、いらない。」
俺と母さんが揉めていると、運転席に座っている母さんより五歳以上若そうな女の人が、会話に加わってきた。
「はじめまして。お仕事の話をしたいから、車に乗ってくれる?」
仕事の話?
胡散臭い仕事の話なら、聞きたくない。
「誰の?どんな?誰からの?」
「志春(しはる)くんの。簡単なお絵描きね。依頼主は私。」
と運転席の女の人。
お絵描き、という言い回しが引っかかるけれど。
絵の仕事を対面で依頼されるのは、初めて。
興味は、ある。
話は聞いてみたい。
受けるかどうかは、別にして。
「依頼主の名前と、おおよその絵の注文内容、期限、報酬の条件を聞いてから、考える。」
「いいわよ。それで。乗って。」
と運転席の女の人は、後部座席を示した。
「神様、俺、行くことにした。」
絵の仕事をしているんだ。
絵を描く仕事を依頼したい、と言われたら、どんな仕事か気になって仕方がない。
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