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第5章 神様の新しい棲み家は、俺のネットショップ
30.俺の住んでいる部屋で、男の人の声がしたら。母さんが、俺が在宅していることに思い至らないなんてことは、さすがにないと思いたかった。
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母さんは、俺の声を聞くと顔をしかめた。
やっぱり、母さんは、認識できる場所に、俺がいると嫌なんだ、と俺は思った。
ところが。
母さんの口から吐き出されてきたトゲトゲした言葉は、俺の予想していなかった種類のものだった。
「あなた、男の人ですよね?
お貸ししたのは、女の人だったんですけど。
又貸しはお断りしている、と貸すときに全員に了承をえているんです。
あなたは、契約違反の代金と超過代金を払って、すぐに部屋を出ていってください。」
と、インターホンのカメラ越しに要求してくる母さんの表情も声も、見たことがない険しいものだった。
母さんは、俺の部屋に俺がいる、ということに思い至らなかった。
俺は、父さん母さんに、山のふもとに家を買って引っ越しをした話はしていない。
それなのに。
母さんは、この部屋に俺がいないと確信して、部屋にいる男の人は、又借りした他人だと思いこんでいる。
俺は、まず、俺をいないものとして扱っている母さんの言動にショックを受けた。
俺の声を聞いて、息子だと気づかれなかったことよりも。
情が剥がれ落ちていく音がする。
俺は、インターホン越しに伝えた。
「警察を呼びます。恫喝されたり、扉を蹴ったりされました。」
「警察を呼んで困るのは、あなたですよ?」
と母さん。
母さんは、俺に全然気づかない。
俺、何か、いつもと変わった?
そういえば、過去に母さんと相対してきたときより、他人行儀に話をしている気がする。
ファミレスで、父さん母さんと他人行儀で話をすることなんて、今までなかった。
父さんと母さんに会えるときは、期待と不安で、俺は挙動不審ぽくなっていたから。
「今から警察を呼びます。現行犯ですから、二人とも帰らないでください。警察の立ち会いで、話をしましょう。」
「大人しく部屋を出てきたら、済む話だろう!」
と男がしびれを切らして、また扉を蹴った。
「いい加減にしてください。又貸しした人の連絡先は知っています。あなたのせいで、迷惑がかかりますよ!」
と母さんは、語気を強めてくる。
母さん、止めて。
本当に思い出せない?
扉の向こうに誰がいるか。
「迷惑をかけるのは、俺じゃありません。じゃ、警察呼びますので。」
俺は、ビデオ通話を止めて、インターホンの通話を終了し、110番した。
昨日、空き巣の被害届を出して、今日は、玄関前で開けろ、中に入れろ、と騒がれて、ドアを蹴られたり、恫喝されている、と、告げると、家から出ないようにと助言された。
お巡りさんが、来てくれるのを家の中で待とう。
男は、扉を蹴りつづけた後、本当に警察が来ると知ると、母さんに捨て台詞を吐いていなくなった。
母さんは、男のの捨て台詞を聞きながら鍵を開けようとして、鍵穴に鍵を差し込んでは、ガチャガチャ音をさせている。
「壊れている?壊されている?」
と母さんは言うなり、鍵を引き抜いた。
苛立ちをぶつけるように、何度も扉を叩いてから、立ち去っていく母さん。
俺は、不動産屋に電話をした。
扉を開けるように恫喝されて、扉を何度も蹴られたために、警察を呼んでいるが、蹴った男と鍵穴に鍵を入れてガチャガチャした女は立ち去ったことを話した。
「もし、俺の部屋の鍵が使えない、という人がそちらに来たら、その人は、限りなく怪しい人なので、新しい鍵は絶対に渡さないでください。
俺の部屋に、俺が住んでいると思い至らない人です。」
扉を蹴った男と母さんは、ツーカーの仲っぽかった。
母さんの今の旦那が、誰だか知らないけれど、母さんは、何の目的で、俺の部屋を勝手に貸し出した?
疲れた。
神様に会いたい。
俺は、ネットショップ〈神棚〉のホームページにアクセスした。
神様は、ホームページの中で、バク転していた。
やっぱり、母さんは、認識できる場所に、俺がいると嫌なんだ、と俺は思った。
ところが。
母さんの口から吐き出されてきたトゲトゲした言葉は、俺の予想していなかった種類のものだった。
「あなた、男の人ですよね?
お貸ししたのは、女の人だったんですけど。
又貸しはお断りしている、と貸すときに全員に了承をえているんです。
あなたは、契約違反の代金と超過代金を払って、すぐに部屋を出ていってください。」
と、インターホンのカメラ越しに要求してくる母さんの表情も声も、見たことがない険しいものだった。
母さんは、俺の部屋に俺がいる、ということに思い至らなかった。
俺は、父さん母さんに、山のふもとに家を買って引っ越しをした話はしていない。
それなのに。
母さんは、この部屋に俺がいないと確信して、部屋にいる男の人は、又借りした他人だと思いこんでいる。
俺は、まず、俺をいないものとして扱っている母さんの言動にショックを受けた。
俺の声を聞いて、息子だと気づかれなかったことよりも。
情が剥がれ落ちていく音がする。
俺は、インターホン越しに伝えた。
「警察を呼びます。恫喝されたり、扉を蹴ったりされました。」
「警察を呼んで困るのは、あなたですよ?」
と母さん。
母さんは、俺に全然気づかない。
俺、何か、いつもと変わった?
そういえば、過去に母さんと相対してきたときより、他人行儀に話をしている気がする。
ファミレスで、父さん母さんと他人行儀で話をすることなんて、今までなかった。
父さんと母さんに会えるときは、期待と不安で、俺は挙動不審ぽくなっていたから。
「今から警察を呼びます。現行犯ですから、二人とも帰らないでください。警察の立ち会いで、話をしましょう。」
「大人しく部屋を出てきたら、済む話だろう!」
と男がしびれを切らして、また扉を蹴った。
「いい加減にしてください。又貸しした人の連絡先は知っています。あなたのせいで、迷惑がかかりますよ!」
と母さんは、語気を強めてくる。
母さん、止めて。
本当に思い出せない?
扉の向こうに誰がいるか。
「迷惑をかけるのは、俺じゃありません。じゃ、警察呼びますので。」
俺は、ビデオ通話を止めて、インターホンの通話を終了し、110番した。
昨日、空き巣の被害届を出して、今日は、玄関前で開けろ、中に入れろ、と騒がれて、ドアを蹴られたり、恫喝されている、と、告げると、家から出ないようにと助言された。
お巡りさんが、来てくれるのを家の中で待とう。
男は、扉を蹴りつづけた後、本当に警察が来ると知ると、母さんに捨て台詞を吐いていなくなった。
母さんは、男のの捨て台詞を聞きながら鍵を開けようとして、鍵穴に鍵を差し込んでは、ガチャガチャ音をさせている。
「壊れている?壊されている?」
と母さんは言うなり、鍵を引き抜いた。
苛立ちをぶつけるように、何度も扉を叩いてから、立ち去っていく母さん。
俺は、不動産屋に電話をした。
扉を開けるように恫喝されて、扉を何度も蹴られたために、警察を呼んでいるが、蹴った男と鍵穴に鍵を入れてガチャガチャした女は立ち去ったことを話した。
「もし、俺の部屋の鍵が使えない、という人がそちらに来たら、その人は、限りなく怪しい人なので、新しい鍵は絶対に渡さないでください。
俺の部屋に、俺が住んでいると思い至らない人です。」
扉を蹴った男と母さんは、ツーカーの仲っぽかった。
母さんの今の旦那が、誰だか知らないけれど、母さんは、何の目的で、俺の部屋を勝手に貸し出した?
疲れた。
神様に会いたい。
俺は、ネットショップ〈神棚〉のホームページにアクセスした。
神様は、ホームページの中で、バク転していた。
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