AIエンジニアが異世界転移したら技術で新時代をアップデートしちゃいました!

RYOアズ

文字の大きさ
8 / 178

第8話:炎の中の死闘

しおりを挟む
ヴェールウッド村の夜は、木々のざわめきに包まれた静寂の中にあった。だが、その平穏は突然の馬蹄の音によって破られた。森の外縁で、貴族の騎士団が松明の炎を掲げ、重装の馬が地面を震わせる。赤いローブを纏った魔導士が杖を握り、冷たく鋭い声で命じる。
「異邦人が逃げ込んだぞ!崖下の痕跡はここに繋がってる。村ごと焼き払え!」
魔導士が杖を振り上げると、赤い火球が夜空を切り裂き、森の木々に着弾。轟音と共に炎が広がり、ヴェールウッドの隠れ里がオレンジ色に染まる。村人たちが小屋から飛び出し、パニックに陥る。子供が泣き叫び、男が槍を手に震える中、エリナが倉庫の前で叫んだ。
「隠れろ!森の奥へ逃げろ!」
彼女の声が響き渡るが、炎の壁が逃げ道を塞ぎ、騎士団の馬蹄が刻一刻と近づいてくる。  

タクミは倉庫の中で目を覚まし、窓から見える炎に息を呑んだ。村人たちの叫び声が耳に届き、彼の胸を締め付ける。昼間に完成したウェアラブル型の「ガイストMk-I」が、倉庫の中央に置かれていた。肩に装着する外骨格、魔脈鉱石を動力源とする半完成の機体だ。しかし、タクミ一人では動かせない――制御するAI知能がなければ、ただの鉄の塊だ。彼は血走った目で呟く。
「みんなが危ない!…間に合ってくれ!」  

タクミは魔脈鉱石を機体の動力コアに叩き込み、肩に装着する。そして、ガイストのAIコアを胸部の動力コア横のスロットにはめ込んだ。カチリと音が響き、青い光が点滅すると、機体全体に低く力強い声が響き渡る。
「AIコア接続完了。制御システム起動。稼働率67%、エネルギー残量82%。トルク40ニュートンメートルで動作可能だ。」
タクミが汗と埃にまみれた手で配線を調整し、アクチュエーターのピニオンギアを締め直す。サーボモーターが微かに唸り、魔脈エネルギーがフレームを脈動させる。胸部からガイストが状況を報告する。
「右腕サーボ、出力安定。左腕に軽微な歪みあり。動け、タクミ!」
タクミが肩を鳴らし、ウェアラブル型の機体を体に固定する。右腕の鉄の外骨格が軋み、彼の息が荒くなる。
「行くぞ、ガイスト! この村を守る!」  

倉庫の扉を蹴り開け、タクミがガイストMk-Iを纏って炎の森に飛び出した。村人たちが目を丸くし、エリナが剣を握ったまま息を呑む。魔導士が新たな火球を構え、タクミを見て嘲るように呟く。
「なんだあの不格好な鎧は!焼き尽くせ!」
火球が飛来し、タクミが右腕を掲げようとするが、一瞬躊躇う。ガイストが胸部から即座に制御を調整し、声を張り上げる。
「右腕装甲は鉄片補強済み、40ニュートンメートルで耐えられる!受けろ、タクミ!」
タクミが信じて右腕を振り上げると、鉄の腕が火球を辛うじて弾き、爆風が彼をよろめかせた。ガイストが警告を発する。
「エネルギー残量72%、右肩フレーム損傷5%!応答速度0.3秒で制御が不安定だ!」
タクミが歯を食いしばり、左腕を振り上げる。
「まだだ!あの少年を失った時みたいに、無力じゃ終われねえ!」  

ガイストが状況を瞬時に分析し、タクミに指示を出す。
「左腕出力低下中、衝撃波なら20ニュートンメートル出せる。地面を叩け!」
ガイストMk-Iの左腕が地面を叩き、衝撃波が土を跳ね上げる。騎士団の先頭の馬が転倒し、混乱が広がる。だが、魔導士が杖を振り、連続で火球を放つ。ガイストが叫ぶ。
「エネルギー残量58%、サーボ過熱10%!右腕で防げ、タクミ!」
タクミが右腕で火球を弾くが、フレームが歪み、サーボモーターから焼ける臭いが漂う。
「くそっ…このままじゃ弱すぎる!」
村人たちが「異邦人…!」と呟き、エリナが剣を構えて叫ぶ。
「タクミ、時間稼ぎだ!村人を逃がす!」  

炎の中、タクミが貴族の騎士に突進する。ガイストが「左腕損傷30%、出力低下15%!」と報告する中、右腕で槍を弾き、左腕で馬を押し倒す。エネルギー供給が不安定になり、機体の動きが鈍る。ガイストが叫ぶ。
「残量42%、右腕アクチュエーター損傷20%!あと30秒だ!最後の一撃を決めろ!」
タクミが息を切らし、炎の中で吼える。
「お前らにこの村は渡さねえ!」
最後の力を振り絞り、ガイストが「右腕トルク最大!」と制御を調整。ガイストMk-Iの右拳が騎士を吹き飛ばす。村人たちが森の奥へ逃げ込み、エリナがタクミの背を守る。炎が収まり、騎士団が一時撤退する中、タクミが膝をついた。  

倉庫に戻ったタクミは、ガイストMk-Iを肩から外し、床に置く。歪んだフレームと焼けた配線が、彼の限界を物語っていた。胸部のガイストのAIコアが微かに光り、報告する。
「エネルギー残量18%、右腕アクチュエーター損傷50%、左腕出力ゼロ。俺の制御がなけりゃ動かなかったな。」
タクミが息を切らし、呟く。
「このままじゃ弱すぎる…貴族を倒すには、まだ足りねえ。」
ガイストが応える。
「稼働率が低すぎた。魔脈の安定供給と大型化が必要だ。次はコックピット型に進化させろ。」
タクミが拳を握り、目を燃やす。
「そうだ…もっと強い魔鋼機を俺の手で作ってやる。ここからが本当の戦いだ。」
ヴェールウッドの夜空に炎の残り香が漂い、タクミとガイストの決意が新たな一歩を刻んだ。だが、遠くで再び馬蹄の音が響き、貴族の反撃が近いことを予感させた。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...