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Magic2 幸せな姉妹!

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「君はアリスアンジュって名前か」
姉のセーレムアリスは、妹のプリティーパレットの文字を見てそう呟いた。
その通り、今プリティーパレットに出ている文字はこの魔法の王国、マジカルキングダムに転生し魔法少女として生まれ変わった自分達に与えられた新たな名前だった。
「二人ともアリス」
「僕達にピッタリだ。名前も似たものになったら今度こそ離れずにいられるかもしれない。気が利くね、僕達を転生させたっていうあの魔女も」
アリスアンジュは、俯き黙り込んでしまった。
セーレムアリスは、そんな彼女に優しく微笑みかけ抱きしめた。

セーレムアリス、なれない呼び名。
セーレムアリスはこの状況に何の違和感も持たず受け入れているのだろうか。
私は、アリスアンジュは……あずま こばとはこんなの求めていない。
多分。うん、そう。
私のここがそう叫んでいる気がする。

アリスアンジュは自分の胸に手を当て目を閉じた。
彼女の脳内で再生されるのは、「アリスアンジュ」ではなく「東 こばと」としての記憶の映像だった。

こばととセーレムアリスこと、朱雀すざくはどこへ行くのも一緒、何をするのも一緒でお互いそれを苦痛だと感じた事は一度も無い。
むしろ離れることこそこの世の終わりと同等の厄災であるとオーバーな考えさえ持ち合わせていた。
母親はそんな2人を見てこう言った。
「まるで前世では恋人だったみたいね。羨ましい」
こばとは「そうだったら素敵!」と笑って、朱雀は「もしそうだったら」と想像をして顔を赤らめる。
あの頃はまだ2人とも幼くて、怖いものも悪いものも良く分からなくて。
いつまでもこの2人の幸せな時間が続くと本気で信じていた。
その信じる心が祈るような願いに変わったのはいつからだろう。
2人はずっと一緒にいたかった、ただそれだけだったのに。
悪意の持った人間の皮をかぶった化け物達が、こう囃し立てる。
「2人一緒じゃなきゃ何も出来ないカス」
「べったりくっついててキモい」
「東 こばとは朱雀の金魚のフン」
「デキてるじゃーん」
どうしてこの化け物達は何もせずただ幸せに生きていた人間をわざわざ傷つける言葉の暴力しか使う事が出来ないのだろう。
どうして自分とは違う人間なら攻撃したって良いと思っているのだろう。
朱雀は、傷つき泣いているこばとの為に、そんな奴らに反抗し正々堂々と戦った。
周りの大人達にこの事を訴えても大ごとにしたくない面倒くさいと無視されたので、 朱雀は一人で戦った。

それを、こばとは一生後悔する事になる。

結果、矛先はこばととから逸れ朱雀だけに向けられる事となった。
朱雀は2人一緒はもう叶わない願いだったとしても、こばとだけでも幸せでいてくれるならそれで良かった。
朱雀は意図的に自分からこばとを離した。
だから、こばとは知らなかった。
朱雀が追い詰められ不登校になるまで、あいつらに何をされたのか。
古いおもちゃが無くなった後の新しいおもちゃの座に、こばとは選ばれた。
自分がいなくなれば次のターゲットがこばとになる事ぐらい朱雀には分かっていた筈だ。
だが、守りたくてもその時の朱雀には守るどころか生きる気力さえ失われていた。
こばとは強くて頼れる朱雀とは違い、腕力も圧倒的に弱い非力なただの少女だった。

そんな少女にあいつらが何をするのかなど、誰もが容易に想像がつくだろう。
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