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《第10章》 天国の門
ハッピーバースデー
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一二月一日の午後六時すぎ、帰宅した飛豪は、腕に抱えてきた花束をダイニングの花瓶にいけた。満開の白と紫のアネモネが、冬の日を祝福するようにテーブルの上で揺れる。
あと三〇分で彼女が帰ってくる。
今日は、夕方に冬のインターンシップの面接があると言って、リクルートスーツにトレンチコート姿で出かけていった。採用に直結するタイプのインターンのようで、しかも英語面接があるそうだ。朝の時点ですでに顔が緊張しきっていた。
「今日だけ交換したいです」と、瞳子は彼のコートのポケットから革の手袋を奪い、かわりに自分のグレーのケーブル編みのミトンを押しつけて出ていった。
今日は彼女の誕生日。とはいえ週の真ん中の平日なので、遠出やあまり時間のかかることはできない。
一週間前に「誕生日、自宅とレストランどっちがいい?」と訊いたら、瞳子ははにかみながら「自宅」と答えた。「おうちがいい。あとプレゼントは、わたしが飛豪さんにしてほしいこと考えてるから、買ったりしなくていいです」と、念入りに付け加えてくる。
「してほしいこと……?」
「うん。あと、飛豪さんも何かしてほしいことあったら教えて。九月のお誕生日ちゃんとお祝いできなかったから、やり直したいって思ってたの」
要するに彼女のなかでは、合同バースデーのつもりらしい。食事も、「一緒にシチューとか作れたら嬉しいな」とリクエストをだしてくれた。ちょっと良いワインをあけて、ホワイトシチューと、バルサミコ酢を使った野菜もりもりのカルパッチョと、美味しいバゲット。彼女が望んだのはそれだけだった。
二人でキッチンに立てればいいのだが、瞳子は就活、飛豪は仕事のピークで、今日も本当は半休をとるはずがそれも叶わなかった。
となったら使える物を使うしかない。デリバリーフードサービスで食事とケーキと酒を頼み、あとは部屋を片づけ、皿を準備するだけだ。
外の冷気を全身にまとわりつかせて瞳子が帰宅したのは、ちょうどデリバリーのシチューが届いて鍋にうつしたタイミングだった。
「いつものシチューと違う匂いがする!」
鼻先を真っ赤にした彼女は、キッチンに駆けこんできて飛豪に飛びつく。
「おかえり。面接どうだった?」
髪を撫ぜながら問いかけると、「和やかに進んだし、会話も噛みあってたから、あとは運次第。周りの人がわたしより優秀だったら、それはそれで仕方ないし」と、瞳子はやりきった晴れやかさで答えた。
「とりあえず手洗って着替えてくるね」と、彼女はこちらに背を向ける。
パウダールームに行くのかと思いきや、途中でくるりとUターンして戻ってきて、飛豪の背中にがばりと抱きついた。腹部に腕がまわってきて、ぎゅうっと強く締めつけられる。
「うおぃ。どうした」
「……お花も準備してくれたんだ」
「うん。ハッピーバースデーの妖精さんに」
「飛豪さんも忙しいの知ってたよ、わたし」
「忙しいのは大体いつもだからさ。その時その時で、できる限りのことしたいじゃん」
「ありがとう」
感謝の言葉とともに、体がさらに押しつけられる。彼女の手がうっかり加熱中の鍋に引っかかってしまわないかハラハラする。
飛豪が困惑していると、彼女はずいっと正面にまわりこんできた。首に腕をまわされ、背伸びしたキスが頬にとどく。最近、こんな体当たりの接触プレイがすこぶる多い。
嬉しいことには嬉しいのだが、突然始まったのと勢いの良さが気になって、なかなか素直に受けとれない。
「……瞳子」
「ん?」
「それ、何? 近ごろ頻繁だけど、そろそろ意図をききたい」
「何って……ハグです」
「俺の知ってるハグはそんなに傍若無人で荒くれてねーし」
「愛情表現です。せっかく飛豪さんに触る許可とったのに有効活用できてなかったから」
「君が前に言ってた『触っていいですか?』ってこういう意味だったの?」
詰問したつもりはないのに、彼女はなぜか叱られたかのようにうつむいた。
「……わたし、飛豪さんの近くにいると安心するんです。気持ちよくって、温かくって。上手く言えないんですけど、ずっと……あなたのまわりをグルグルしてたい時とか、もう無性に抱きつきたくて仕方ない時があって……」
飛豪は心臓の内側が全面的にむずがゆくなった。
目の前のもじもじしている可愛い生き物をとても見ていられず、彼女に抱きつかれたまま天井を仰いだ。
――もうなんなの、この子? 俺をどうしたいわけ? ダメだ。俺、この子に撃墜されてる。
瞬間的に暴発しそうになった本能は「Hey guy! このまま押し倒して始めちゃえばいいんじゃなーい?」と悪魔の囁きでけしかけてくるが、彼女の誕生日を尊重したい理性は、「水を飲め、なんなら冷水を頭にぶっかけろ」と脳内に指令をだしてくる。
結果、いまこの瞬間に一番会いたくない人間の顔――叔母や母親――を脳裏にえがいて、昂ぶりを鎮めた。
――っはぁ。よく耐えた、自分。
飛豪は少しだけ体を離すと、いつもしているようにふんわりと彼女を抱きしめた。腕のなかにすっぽりと収まった彼女は、いまいち不満げな顔でこちらを見上げる。
「妖精さん、一つ覚えてください」
「はい」
「ハグに助走はいりません。突撃もしなくていい。必要なのは優しさと思いやりです。あと、キッチンは危ないので飛びつき禁止……って、お前いくつだよ。今日で二三だろ。ハタチ過ぎてるんだから、こんなこと言わせんな」
ぺちんと頭をはたくと、なぜか彼女はお説教でも嬉しそうに頬をゆるめた。
“Do you understand? (理解しましたか?)”
“Oui, monsieur.(はい、ムッシュー)”
言っているそばから瞳子は、彼の腰に手を伸ばして服の裾を握りこんでくる。彼女はとても幸せそうに笑っていた。幸福の気配にひかれて、飛豪もこめかみにキスをする。
今度こそ瞳子がパウダールームへと消えると、彼はコップ一杯の水を飲みほして胸をなでおろした。そして、先ほどの不器用なハグの感触を反芻しながら、鍋のシチューを焦げつかないようかき回した。
あと三〇分で彼女が帰ってくる。
今日は、夕方に冬のインターンシップの面接があると言って、リクルートスーツにトレンチコート姿で出かけていった。採用に直結するタイプのインターンのようで、しかも英語面接があるそうだ。朝の時点ですでに顔が緊張しきっていた。
「今日だけ交換したいです」と、瞳子は彼のコートのポケットから革の手袋を奪い、かわりに自分のグレーのケーブル編みのミトンを押しつけて出ていった。
今日は彼女の誕生日。とはいえ週の真ん中の平日なので、遠出やあまり時間のかかることはできない。
一週間前に「誕生日、自宅とレストランどっちがいい?」と訊いたら、瞳子ははにかみながら「自宅」と答えた。「おうちがいい。あとプレゼントは、わたしが飛豪さんにしてほしいこと考えてるから、買ったりしなくていいです」と、念入りに付け加えてくる。
「してほしいこと……?」
「うん。あと、飛豪さんも何かしてほしいことあったら教えて。九月のお誕生日ちゃんとお祝いできなかったから、やり直したいって思ってたの」
要するに彼女のなかでは、合同バースデーのつもりらしい。食事も、「一緒にシチューとか作れたら嬉しいな」とリクエストをだしてくれた。ちょっと良いワインをあけて、ホワイトシチューと、バルサミコ酢を使った野菜もりもりのカルパッチョと、美味しいバゲット。彼女が望んだのはそれだけだった。
二人でキッチンに立てればいいのだが、瞳子は就活、飛豪は仕事のピークで、今日も本当は半休をとるはずがそれも叶わなかった。
となったら使える物を使うしかない。デリバリーフードサービスで食事とケーキと酒を頼み、あとは部屋を片づけ、皿を準備するだけだ。
外の冷気を全身にまとわりつかせて瞳子が帰宅したのは、ちょうどデリバリーのシチューが届いて鍋にうつしたタイミングだった。
「いつものシチューと違う匂いがする!」
鼻先を真っ赤にした彼女は、キッチンに駆けこんできて飛豪に飛びつく。
「おかえり。面接どうだった?」
髪を撫ぜながら問いかけると、「和やかに進んだし、会話も噛みあってたから、あとは運次第。周りの人がわたしより優秀だったら、それはそれで仕方ないし」と、瞳子はやりきった晴れやかさで答えた。
「とりあえず手洗って着替えてくるね」と、彼女はこちらに背を向ける。
パウダールームに行くのかと思いきや、途中でくるりとUターンして戻ってきて、飛豪の背中にがばりと抱きついた。腹部に腕がまわってきて、ぎゅうっと強く締めつけられる。
「うおぃ。どうした」
「……お花も準備してくれたんだ」
「うん。ハッピーバースデーの妖精さんに」
「飛豪さんも忙しいの知ってたよ、わたし」
「忙しいのは大体いつもだからさ。その時その時で、できる限りのことしたいじゃん」
「ありがとう」
感謝の言葉とともに、体がさらに押しつけられる。彼女の手がうっかり加熱中の鍋に引っかかってしまわないかハラハラする。
飛豪が困惑していると、彼女はずいっと正面にまわりこんできた。首に腕をまわされ、背伸びしたキスが頬にとどく。最近、こんな体当たりの接触プレイがすこぶる多い。
嬉しいことには嬉しいのだが、突然始まったのと勢いの良さが気になって、なかなか素直に受けとれない。
「……瞳子」
「ん?」
「それ、何? 近ごろ頻繁だけど、そろそろ意図をききたい」
「何って……ハグです」
「俺の知ってるハグはそんなに傍若無人で荒くれてねーし」
「愛情表現です。せっかく飛豪さんに触る許可とったのに有効活用できてなかったから」
「君が前に言ってた『触っていいですか?』ってこういう意味だったの?」
詰問したつもりはないのに、彼女はなぜか叱られたかのようにうつむいた。
「……わたし、飛豪さんの近くにいると安心するんです。気持ちよくって、温かくって。上手く言えないんですけど、ずっと……あなたのまわりをグルグルしてたい時とか、もう無性に抱きつきたくて仕方ない時があって……」
飛豪は心臓の内側が全面的にむずがゆくなった。
目の前のもじもじしている可愛い生き物をとても見ていられず、彼女に抱きつかれたまま天井を仰いだ。
――もうなんなの、この子? 俺をどうしたいわけ? ダメだ。俺、この子に撃墜されてる。
瞬間的に暴発しそうになった本能は「Hey guy! このまま押し倒して始めちゃえばいいんじゃなーい?」と悪魔の囁きでけしかけてくるが、彼女の誕生日を尊重したい理性は、「水を飲め、なんなら冷水を頭にぶっかけろ」と脳内に指令をだしてくる。
結果、いまこの瞬間に一番会いたくない人間の顔――叔母や母親――を脳裏にえがいて、昂ぶりを鎮めた。
――っはぁ。よく耐えた、自分。
飛豪は少しだけ体を離すと、いつもしているようにふんわりと彼女を抱きしめた。腕のなかにすっぽりと収まった彼女は、いまいち不満げな顔でこちらを見上げる。
「妖精さん、一つ覚えてください」
「はい」
「ハグに助走はいりません。突撃もしなくていい。必要なのは優しさと思いやりです。あと、キッチンは危ないので飛びつき禁止……って、お前いくつだよ。今日で二三だろ。ハタチ過ぎてるんだから、こんなこと言わせんな」
ぺちんと頭をはたくと、なぜか彼女はお説教でも嬉しそうに頬をゆるめた。
“Do you understand? (理解しましたか?)”
“Oui, monsieur.(はい、ムッシュー)”
言っているそばから瞳子は、彼の腰に手を伸ばして服の裾を握りこんでくる。彼女はとても幸せそうに笑っていた。幸福の気配にひかれて、飛豪もこめかみにキスをする。
今度こそ瞳子がパウダールームへと消えると、彼はコップ一杯の水を飲みほして胸をなでおろした。そして、先ほどの不器用なハグの感触を反芻しながら、鍋のシチューを焦げつかないようかき回した。
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