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第226話「我が家族にこれから必要になるもの、3つを徹底しましょう」

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……今夜の合同連絡会議が始まった。

やはりいつもとは雰囲気が違う。

グレゴワール様がにこやかに見守り、ジョルジエット様、アメリー様は、興味津々という雰囲気で俺と秘書達を見つめていた。

このメンバーに、いずれ王女ルクレツィア様が加わり、いろいろと話し合うだろう。

そして、ルクレツィア様の兄上アレクサンドル陛下、
昼間会ったサニエ子爵夫妻、ルナール商会会頭のセドリックさん、シルヴェーヌさんの兄上バジルさんなどなどが新たな家族となる……

ふと思う、思い出す……

……前世から転生した事に気づいた俺は、このステディ・リインカネーションの世界で、既に両親と死に別れた孤児だった。

前の世界に残して来た両親、友人を思い、心が寂しくなり、ひどく懐かしかった。
明日が見えない状況の中、こきつかわれていた万屋の倉庫で、
ひっそりと泣いた事もある。

でも、今や俺には新たな『家族』がいっぱい増えた。

個人事業主となり、自由気ままに生きようと思い、やってはみたが、
そうはならなかった。

……けれど、後悔は全くない。

自分が一生懸命に働いた事を喜び、感謝してくれる人々がたくさん居る、
今の環境を喜びたい。

それが明日へのモチベーション、生きる意欲へつながるから。

ダークサイド企業で働いていた前世は、そんな事は全く皆無だったからね。

さてさて、物思いにふけるのはそれくらいにして、合同連絡会議を進めよう。

まずは秘書3人に各所の状況を報告して貰う。

シルヴェーヌさんが言う。

「王国執行官秘書として申し上げます。王国執行官として受諾する業務ですが、後日王立闘技場で行われるお披露目の準備を進めるくらいです。確認は必要ですが、第一優先かつ緊急で、すぐ完遂すべきものはありません。とりあえず冒険者ギルド、ルナール商会の案件を優先して宜しいと思います」

次にシャルロットさん、

「ルナール商会最高顧問秘書として申し上げます。ウチの依頼案件はいくつもありますが、現在私の方で優先順位を精査しておりますわ。近々、提出する予定です。受諾、実施に関してはおいおいご相談と致しましょう」

最後にトリッシュさん。

「冒険者ギルド最高顧問秘書として申し上げます。ギルドが運営を請け負う、王立闘技場のトーナメント、ファルコ王国王家主催武術大会へ、ロイク様ご参加の準備を進めるのが最優先事項ですね。具体的に申し上げますと、運営責任者の業務部イベント課のエリク・ベイロン課長に会い、打ち合わせをする必要があるでしょう」

はきはきと滑舌良く、報告をして行く3人の秘書達。

うん!
我が嫁ながら、すっごくかっこいい!

うんうんと満足そうに頷くグレゴワール様。

一方、ジョルジエット様、アメリー様は、
憧れの眼差しで『姉』と慕う3人を見つめていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

秘書3人のお陰で、現状が把握出来て、やるべき事が見えて来た。

王国執行官は、やるべき業務の要確認。

大破壊収束の公式発表で、多少意味合いは薄れてしまった。

だが、予定通り実施すべきであろう、王立闘技場のトーナメント、
ファルコ王国王家主催武術大会参加と、その準備。
生け捕りにしたオーガとのエキシビションマッチの準備も必要だ。

ルナール商会の依頼案件の優先順位の確認。

ファルコ王国王家主催武術大会の運営を請け負う、
冒険者ギルド運営責任者の業務部イベント課のエリク・ベイロン課長との打合せ。

そして本日会って、実感した、サニエ子爵家への貢献。
名と爵位を上げ、現当主の子爵を良い役職に就け、出来る限り領地を広げる事。

これはジョルジエット様のリヴァロル公爵家、
ひいてはルクレツィア様のファルコ王国も。

いや、内容は若干の相違はあるが、
シャルロットさんのルナール商会、トリッシュさんの冒険者ギルドも同じだろう。

ここで俺はぶっちゃけで、少しリアルな話をしようと思った。

一同へ挙手をして、発言を求める。

筆頭秘書のシルヴェーヌさんが、笑顔で、

「ロイク様、お話しくださいませ」

と許可をしてくれた。

俺は軽く一礼し、口を開く。

「突然ですが、考えていた事があります。我々家族の発展、繁栄の為、何が必要かという事です。グレゴワール様には、司祭に説教、法話かもしれませんが、とりあえずお聞きください」

本当は釈迦に説法と言いたかったが、ステディ・リインカネーションの世界に仏教の概念はない。

仕方なく言い換えた。

俺は話を続けて行く。

「我が家族にこれから必要になるもの、3つを徹底しましょう。それはまず金儲け、つまり蓄財、次に人……つまり人脈の構築と良好さの維持、更なる発展、そして情報……つまり情報の収集と取捨、有効活用です」

俺の話を聞き、やはりグレゴワール様はうんうんと満足そうに頷き、

女子達は目を丸くし、驚いていたのである。
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