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第211話「クールさをまとったアレクサンドル陛下とは違い、 ルクレツィア様には、温かい癒し系の雰囲気がある」

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良く知った気配を感じ、表が騒がしくなったと思ったら……

ここで警護の騎士から、はかったように、

「ただいま、国王アレクサンドル・ファルコ陛下、ルクレツィア王女様が、ご到着となりました!」

と大きな声で、報告があった。

すぐ反応したのはグレゴワール様。

「おお! ご到着されたか! 将軍! ロイク君! すぐお出迎えし、ご挨拶しに行こう!」

「はっ! 閣下!」

「は、はいっ!」

ううむ、少し緊張する。
申し訳ないが、緊張する理由は国王たるアレクサンドル陛下ではない。
未来の嫁となる、初対面のルクレツィア様である。

緊張しているうちに、

「あまり大人数もいかん。私達3人で行く。秘書達は、全員ここで待機してくれ」

言い残し、グレゴワール様はさっさと部屋から出てしまう。

対して、秘書は5人全員が「了解」とばかりに頷いた。

さっすが陛下の腹心。
動きがはえ~。

「おい、どうした、ロイク君、ぼ~っとして、私達も行くぞ」

「は、はいっ!」

バシュラール将軍に促され、俺も部屋を出た。

将軍が、敬礼する警護の騎士へ「陛下にお会いするぞ」と断る。
俺も、騎士へ一礼し続く。

グレゴワール様の姿はない。

そしてアレクサンドル陛下、ルクレツィア様の姿もない。
お出迎えする前に、王族のおふたりは、
既に『王族控え室』へ入ってしまったのだろう。

グレゴワール様も、速攻で『王族控え室』へ入ってしまったようだ。

バシュラール将軍が、急げとばかりに、俺の前を「たったっ」とテンポ良く歩く。

対して緊張した俺は、まるで初心者プレーヤーに操られた格ゲーキャラのように、
ぎくしゃくと歩く。

バシュラール将軍と俺は、すぐ『王族控え室』前へ到着。

今度は陛下警護の騎士へ、バシュラール将軍が敬礼。

「これは、将軍! お疲れ様です!」

「うむ! ご苦労! 陛下とルクレツィア様にお会いすべく、先に宰相閣下がお入りになったはずだ。私とロイク君も通るぞ」

「はい! 将軍! ロイク様! 皆様、中にいらっしゃいます! どうぞ、お通りください!」

将軍が、入室し、俺も、先ほど同様、騎士へ一礼し続く。

『王族控え室』へ入ると、アレクサンドル陛下と陛下と良く似た金髪碧眼の少女が長椅子に座り、対面の長椅子にグレゴワール様が座っていた。

ここで将軍が、またもびしっと敬礼。
そして声を張り上げる。

「おはようございます! 陛下! おはようございます! ルクレツィア様!」

俺も将軍に続いてあいさつしたが、

「おはようございます! 陛下! お、お、おはようございます! は、は、初めましてえええ! ロ、ロ、ロイク・アルシェでございますう! ル、ル、ルクレツィア様ああ!」

うっわああ!
やべえええ!
ルクレツィア様へ、ごあいさつした時、思い切り、噛んじまったああ!!
最後はお名前を絶叫気味に呼んでるし!

は、はずかし~!

対して、陛下は。

「おお、フレデリクとロイクか! おはよう! 朝早くからご苦労だな!」

と、さわやかに「にこにこっ」と笑った。

そして、ルクレツィア様はといえば。

「しょ、将軍、おはようございます。……………………」

バシュラール将軍へ、ちょっと噛んであいさつした後、俺を見て真っ赤になり、
無言となってしまったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……俺を見て真っ赤になり、1分近く無言を続けるルクレツィア様。

それを見て微笑む兄アレクサンドル陛下、そしてグレゴワール様。

ルクレツィア様は、アレクサンドル陛下に命じられ、俺へ嫁ぐ。

そんな事情を知らないらしい、バシュラール将軍だけが「どうしてだろう?」
と首を傾げ、頭の上に、?マークをいっぱい飛ばしている。

ルクレツィア様は真っ赤になり、無言でありながらも、
俺を真っすぐに、見つめていた。

敬愛する兄上から、自分の婚約者に指名された俺と初めて会って、
凄~く意識しているようだ。

また親友のジョルジエット様、可愛い後輩のアメリー様から、
『結婚相手の推しメン』として、
俺がプッシュされた事も大きく影響しているらしい。

さてさて!
このステディ・リインカネーションの世界では、身分の低い者が、
高貴な相手をじろじろ見てはいけないという不文律がある。

だが、こうなると、俺も視線を外すわけにはいかず、
まじまじとルクレツィア様を見つめてしまった。

やばい、顔が熱くなっている。
もしかして、俺も顔が赤い?

無言で、じ~っと見つめ合うふたり……
まるで、前世で昔読んだ某恋愛漫画のようだ。

しかし、改めて良く見ても、ルクレツィア様は本当に可愛くそして美しい。
同じ金髪碧眼の、凛とした超美少女ジョルジエット様とは、また違う美しさ。

俺の私見だが、ルクレツィア様は、
守ってあげなければならないと、男子に思わせるお姫様タイプかも。

サラサラの長い金髪、優しそうな切れ長の目に浮かぶ宝石のような青い瞳。
すっと通った細い鼻筋、薄いピンク色の小さな可愛い唇。

兄上のアレクサンドル陛下は、前世の若手ハリウッド俳優か、
ファッションモデルのような、金髪碧眼の超イケメンなのだが、
端麗な顔立ちのルクレツィア様は、その女子版。

ただクールさをまとったアレクサンドル陛下とは違い、
ルクレツィア様には、温かい癒し系の雰囲気がある。

それは笑顔のアレクサンドル陛下から、たしなめられた時に、はっきりと判明した。

「ははは、ルクレツィア。黙っていないで、ロイクにも、きちんとあいさつしなさい」

「は、はいっ! も、申し訳ございません! 初めまして! ロイク・アルシェ様、ルクレツィアでございます! おはようございます!」

俺から視線を外さず、噛みながら、
大きな声で元気よくあいさつしたルクレツィア様。

あいさつし、柔らかく微笑むルクレツィア様の目は、
とても細く、垂れ目となり、俺の心は大いに癒されたのである。
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