上 下
209 / 257

第209話「大変申し訳ありませんが、急いでいますから、失礼しまあす」

しおりを挟む
2日後、大破壊収束の公式発表当日……
開場は午前11時だ。

いつもの通り、朝4時に起きた俺は、
リヴァロル公爵家邸で、騎士達と行う朝の訓練を休んだ。

いくらグレゴワール様へ『お任せ』のイベントとはいえ、
これは、俺が主役のイベントである。

前打ち合わせ、リハーサル等々、
朝早めに会場の王立闘技場へ入らなくてはならないからだ。
訓練に参加したら、スケジュール的にきつくなる。

具体的には、午前7時30分に王立闘技場へ来い!と言われている。
当然、シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさん秘書達3人も一緒だ。

そしてジョルジエット様、アメリー様もロジエ女子学園をお休みし、この公式発表に来るという。
その際、アメリー様のお父上、サニエ子爵もいらっしゃるみたい。

義理父になる人にこのようなタイミングで、初めて会うなど少し緊張する。
だが却って、俺の実力が大観衆の前で認められる今日が、
ベストなタイミングかもしれない。

サニエ子爵に関しては、愛娘のアメリー様だけでなく、グレゴワール様にもいろいろ聞いておいた。
きっと役に立つだろう。

そして、もっと緊張するのが来賓である。

アレクサンドル陛下、グレゴワール様はもうおなじみ?だから気兼ねない間柄。

フレデリク・バシュラール将軍とは初対面だったが、その場で意気投合したし、問題なし。

俺のシンパとなってくれたクリストフ・ラグランジュ財務大臣以下、閣僚の方々も、
何とかなりそうだ。

じゃあ、誰?
緊張する相手は?
って事だよね。

実は昨日から、馬車の中で考えたほど、特に想いが強くなっている。  

そう!
気になる来賓は、俺の未来の嫁のひとり王女ルクレツィア様。

繰り返しになるが、彼女には素敵なファーストインプレッションを持って欲しいから、今日の出会いは、絶対に失敗は出来ない。

ジョルジエット様、アメリー様から聞いた話では……

ルクレツィア様の親友である同級生のジョルジエット様、
可愛がられている後輩のアメリー様と、3人で『将来の夢』を語り合っていたという。

どのような『将来の夢』かと言えば、
幼い頃から……話していたらしいけど。
みんなで可愛いお嫁さんになって、幸せになり、
一緒に楽しく暮らしましょう……とか。

しかし、兄という跡継ぎが居る妹の王女に生まれた宿命。

王国の駒として……
他国へ愛のない政略結婚を運命づけられたルクレツィア様にとって、
それは限りなく叶なわない、極めて可能性の低い夢。

……でも素敵な話もある。
男の俺から見たらって、勝手な話かもしれないけど。

これもジョルジエット様、アメリー様から聞いた話。

ジョルジエット様、アメリー様は、
幼馴染のルクレツィア様にも夢を叶え、幸せになって貰いたい! という強い想いから、
自分達の結婚相手の俺を、ルクレツィア様の結婚相手の『超・推しメン』にしたそうなのだ。

自分達は嫉妬の『しの字』も見せなかったって。
すっごいな!

「ルクレツィア様へは、裏表がなく、誠意があって、女子に凄く優しいロイク様の魅力をた~くさん話しておきました」
「はい、私もジョルジエット様と同じく、ロイク様の人柄、強さ、賢さ、懐の広さに深さ、全て兼ね備えた完璧な殿方だと、ルクレツィア様へたっぷりお伝えしておきましたよ」

ああ、ここまで応援されたら、やらなきゃ、男じゃない!

ジョルジエット様、アメリー様同様、秘書達同様、
ルクレツィア様の為にも頑張って、愛し愛されつつ、幸せになる!

俺は改めて決意していたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

という事で、指定の時間より早め、午前7時少し過ぎに、
俺は秘書達3人と一緒に、会場の王立闘技場へ入った。

当然、警備は、最上級の厳重ぶりである。

こういう時、王国執行官の身分証明書が役に立った。

そして先日行った、『3万人握手会』は更に役に立ったのである。

さすがに3万人全員ではないだろうが、握手会に参加した騎士、兵士が相当数、
本日の公式発表、警備担当者の中に居たのだ。

誰もが、俺と秘書達の身分証明書をしっかりチェックするものの……
握手をした俺の顔をはっきり憶えていて、またもガンガン握手を求めて来る。

「おお! ロイク様だあ! 握手してください!」

「大破壊を収束させた! 我らが英雄だ! ロイク様! 握手してください!」

「ロイク様! どうぞ! お気を付けてお通りくださいっ!」

「勇者宣言をされるのですかあっ! ロイク様!」

騎士兵士が警備する検問は10か所ほどあり、
その都度「わあわあ」と、結構な騒ぎとなったが……

「大変申し訳ありませんが、急いでいますから、失礼しまあす」

俺は毎回軽く笑顔で一礼、軽くいなし……
無事、秘書達とともに、
グレゴワール様の居る『運営本部』へたどり着いたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...