189 / 257
第189話「ブルデュー辺境伯と交わした約束を守らなければ!」
しおりを挟む
「相談の上、陛下も私もロイクの提案に賛成した」
グレゴワール様はそう言うと、無言となったバシュラール将軍をじっと見つめた。
「…………………」
「まあ、真実はこれから明らかになるが……私はな、将軍。ロイクを信じるよ」
グレゴワール様は言うが、バシュラール将軍は、やはり無言である。
「…………………」
微笑んだグレゴワール様は、話を続ける。
「何故なら、私は彼と直接戦い、その強さを実感しておる。そしてトレゾール公地で倒したドラゴンの死骸もこの目で見た。それゆえロイクが単身でオーガを5千体倒した事を信じるのだよ」
「…………………」
「将軍、現在の状況を鑑みて、君がロイクの提案以外に、よりよく対処可能な方法があるのなら、遠慮なく提案したまえ。陛下と私は公平に聞こう」
「…………………」
「さあ、どうだね、将軍」
グレゴワール様に促され……
バシュラール将軍は、口ごもりながら答える。
「……は、はい、宰相。ロイク殿が、オーガ5千体を倒したという前提であれば、私に代案は思いつきません」
「うむ、そうか」
「はい、今、お話をお聞きしながら考え、実感致しました。陛下と宰相がおっしゃる通り、ロイク殿がご自身の栄光より、私と部下達の名誉と誇りを重んじて頂いた事に感謝したいと思います」
「うむ、良くぞ、理解し、申してくれた。将軍、陛下と私は日頃の忠勤を思し召し、君の立場を重んじよう」
「あ、ありがたき幸せ! 陛下! 宰相! ありがとうございます!」
ここで俺も、バシュラール将軍へ言う。
「将軍! 自分は! 目の前で惨劇が起こるのが耐え切れず、命令違反を犯しました。本当に申し訳ありません!」
「ははは、何を言う。ロイク殿。先ほど君と同じ立場なら、私も戦うと言っただろう?」
「将軍……」
「陛下と宰相のおっしゃる通りだ。君は往復2,000㎞の距離を不眠で走破。単身で5千体ものオーガを倒し、ブルデュー辺境伯以下2,000名を救い、大破壊を収束させた。とんでもない大功だよ。大いに誇って良い。私もそう思う!」
「おお、将軍! 良くぞ申した!」
「はい、宰相! では早速、部下達へ話を致します!」
「うむ! では段取りを相談しよう。現在、騎士、兵士3万人全員が待機の為、闘技場のフィールドで野営をしているな」
「です!」
「うむ、まずは全員へロイクの謝罪を伝える。そして将軍、君がロイクを叱りながらも、優しく慰労の言葉をかける」
「はい!」
「そして論より証拠! 彼らへ、ロイクが討ったオーガどもの死骸を数多見せ、討伐完了と大破壊収束を告げ、出撃中止の命令を発するのだ!」
グレゴワール様の言葉を受け、
「はは! かしこまりましたっ!」
バシュラール将軍は、立ち上がり、直立不動で、びしっ!と敬礼をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
勇猛果敢だが、慎重で几帳面な性格でもある。
前世の俺ケン・アキヤマがアバター、アラン・モーリアだった頃、
接した事のあるフレデリク・バシュラール将軍は、そんな人だった。
リアルな現実世界『ステディ・リインカネーション』でも同じであった。
バシュラール将軍は、出撃中止命令を発するまでの段取りを、もう一度『おさらい』したのだ。
セリフの言い方、タイミング。
シミュレーションしてみると、結構難しかった。
『おさらい』して良かった!
それが幸いしたというか……
将軍だけでなく、陛下もグレゴワール様も俺も、一緒に同じ事をやるという事で、
一体感を、そしてシンパシーも覚えたのだ。
「万全を期して、もう一回やりませんか? 大破壊収束という、おめでたい話ですし」
俺の提案に対し、3人は文句なく賛成。
もう1回、『おさらい』を行った。
この『おさらい』は、無事終了。
ここで俺が「はい!」と挙手。
ブルデュー辺境伯と交わした約束を守らなければ!
「今回自分が討伐したオーガの死骸ですが、騎士、兵士、そして王国民へ一般公開した後、売却し、売却益は、ブルデュー辺境伯家と避難民達の義援金に使って頂きたいのです。いかがでしょうか?」
オーガの死骸は、2次利用される。
食用にはならないが、皮は鎧などに加工され、高値が付くのだ。
俺の提案を聞き、3人は大いに驚いた。
「おお、ロイク! 何という……」
「ロイク! お前は……」
「びっくりしたぞ、ロイク殿!」
「そして、差し出がましいですが、今回の出撃準備をした騎士、兵士達にもケアをお願い出来ればと思います」
続いて告げたそんな俺の言葉を聞き、
「うむ、分かったぞ、ロイク!」
「善処しよう! 陛下とご相談する!」
「私に出来る事なら、何でもしよう!」
アレクサンドル陛下、グレゴワール様、バシュラール将軍は皆、笑顔で、
大きく頷いていたのである。
グレゴワール様はそう言うと、無言となったバシュラール将軍をじっと見つめた。
「…………………」
「まあ、真実はこれから明らかになるが……私はな、将軍。ロイクを信じるよ」
グレゴワール様は言うが、バシュラール将軍は、やはり無言である。
「…………………」
微笑んだグレゴワール様は、話を続ける。
「何故なら、私は彼と直接戦い、その強さを実感しておる。そしてトレゾール公地で倒したドラゴンの死骸もこの目で見た。それゆえロイクが単身でオーガを5千体倒した事を信じるのだよ」
「…………………」
「将軍、現在の状況を鑑みて、君がロイクの提案以外に、よりよく対処可能な方法があるのなら、遠慮なく提案したまえ。陛下と私は公平に聞こう」
「…………………」
「さあ、どうだね、将軍」
グレゴワール様に促され……
バシュラール将軍は、口ごもりながら答える。
「……は、はい、宰相。ロイク殿が、オーガ5千体を倒したという前提であれば、私に代案は思いつきません」
「うむ、そうか」
「はい、今、お話をお聞きしながら考え、実感致しました。陛下と宰相がおっしゃる通り、ロイク殿がご自身の栄光より、私と部下達の名誉と誇りを重んじて頂いた事に感謝したいと思います」
「うむ、良くぞ、理解し、申してくれた。将軍、陛下と私は日頃の忠勤を思し召し、君の立場を重んじよう」
「あ、ありがたき幸せ! 陛下! 宰相! ありがとうございます!」
ここで俺も、バシュラール将軍へ言う。
「将軍! 自分は! 目の前で惨劇が起こるのが耐え切れず、命令違反を犯しました。本当に申し訳ありません!」
「ははは、何を言う。ロイク殿。先ほど君と同じ立場なら、私も戦うと言っただろう?」
「将軍……」
「陛下と宰相のおっしゃる通りだ。君は往復2,000㎞の距離を不眠で走破。単身で5千体ものオーガを倒し、ブルデュー辺境伯以下2,000名を救い、大破壊を収束させた。とんでもない大功だよ。大いに誇って良い。私もそう思う!」
「おお、将軍! 良くぞ申した!」
「はい、宰相! では早速、部下達へ話を致します!」
「うむ! では段取りを相談しよう。現在、騎士、兵士3万人全員が待機の為、闘技場のフィールドで野営をしているな」
「です!」
「うむ、まずは全員へロイクの謝罪を伝える。そして将軍、君がロイクを叱りながらも、優しく慰労の言葉をかける」
「はい!」
「そして論より証拠! 彼らへ、ロイクが討ったオーガどもの死骸を数多見せ、討伐完了と大破壊収束を告げ、出撃中止の命令を発するのだ!」
グレゴワール様の言葉を受け、
「はは! かしこまりましたっ!」
バシュラール将軍は、立ち上がり、直立不動で、びしっ!と敬礼をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
勇猛果敢だが、慎重で几帳面な性格でもある。
前世の俺ケン・アキヤマがアバター、アラン・モーリアだった頃、
接した事のあるフレデリク・バシュラール将軍は、そんな人だった。
リアルな現実世界『ステディ・リインカネーション』でも同じであった。
バシュラール将軍は、出撃中止命令を発するまでの段取りを、もう一度『おさらい』したのだ。
セリフの言い方、タイミング。
シミュレーションしてみると、結構難しかった。
『おさらい』して良かった!
それが幸いしたというか……
将軍だけでなく、陛下もグレゴワール様も俺も、一緒に同じ事をやるという事で、
一体感を、そしてシンパシーも覚えたのだ。
「万全を期して、もう一回やりませんか? 大破壊収束という、おめでたい話ですし」
俺の提案に対し、3人は文句なく賛成。
もう1回、『おさらい』を行った。
この『おさらい』は、無事終了。
ここで俺が「はい!」と挙手。
ブルデュー辺境伯と交わした約束を守らなければ!
「今回自分が討伐したオーガの死骸ですが、騎士、兵士、そして王国民へ一般公開した後、売却し、売却益は、ブルデュー辺境伯家と避難民達の義援金に使って頂きたいのです。いかがでしょうか?」
オーガの死骸は、2次利用される。
食用にはならないが、皮は鎧などに加工され、高値が付くのだ。
俺の提案を聞き、3人は大いに驚いた。
「おお、ロイク! 何という……」
「ロイク! お前は……」
「びっくりしたぞ、ロイク殿!」
「そして、差し出がましいですが、今回の出撃準備をした騎士、兵士達にもケアをお願い出来ればと思います」
続いて告げたそんな俺の言葉を聞き、
「うむ、分かったぞ、ロイク!」
「善処しよう! 陛下とご相談する!」
「私に出来る事なら、何でもしよう!」
アレクサンドル陛下、グレゴワール様、バシュラール将軍は皆、笑顔で、
大きく頷いていたのである。
1
お気に入りに追加
953
あなたにおすすめの小説
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる