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第172話「おいおい、それ……変な意味じゃないよな」

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リヴァロル公爵家邸へ戻り、別棟で着替え、グレゴワール様のお出迎えをして、
本館で夕食。
ここまでは予定通りだったが……グレゴワール様がいろいろ処理すべき案件があるとの事で、夜の打合せはナシとなった。

但し、夕食後のお茶の時間、グレゴワール様から、懸案事項解決のお達しがあった。

シャルロットさん、トリッシュさんの王国執行官秘書申請が受理され……
シルヴェーヌさんとともに、正式に王家から認められた秘書になったというのだ。

「わあ、やりましたっ! 王宮で仕事ですわあ!」
「わあお! 王宮! 良かったですう!」

大喜びするシャルロットさんとトリッシュさん。

と、ここでシルヴェーヌさんが、

「こらこら! 気持ちはよ~く分かるけど、はしたないですよ、貴女達」

と優しくたしなめた。

おお、さすがシルヴェーヌさん、落ち着いた大人の女性。
早速、筆頭秘書の風格がにじみ出ている。

一方、教育的指導を受けたシャルロットさん、トリッシュさん。
素直に謝罪。

「ああ、すみません。失礼致しました」
「ごめんなさあい!」

「うふふふ、淑女たる者いつも慎ましく、品良くあらねばなりませんよ」

「はい!」
「はい!」

「では、閣下。ジョルジエット様、アメリー様。ロイク様と私達はそろそろ失礼致します。おやすみなさいませ。美味しく楽しいお夕食をありがとうございました」

凛とした声で、一礼して辞去するシルヴェーヌさん。

俺、シャルロットさん、トリッシュさんも一礼。

「失礼致します」

「失礼致します」
「失礼致します」

シルヴェーヌさんに引き続き、本館を辞去した。

という事で本館を出た俺達。

張り切って先頭を歩くシルヴェーヌさんは歩みを止め、振り返る。
そして、俺を見て微笑む。

「ロイク様」

「はい」

ここでシルヴェーヌさんは深く頭を下げる。
そして姿勢を戻すと、再び微笑む。

「出過ぎた真似をし、失礼致しました。順番を変わりましょう。あるじたるロイク様が、先頭に立って頂ければと」

「お、おお、りょ、了解」

「別棟へ、おう戻った! と使用人達へおっしゃい、ロイク様は、私達を引き連れ、堂々とお戻りくださいませ」

「わ、分かった」

「はい! 先ほど私がした閣下へのごあいさつも、次回からはロイク様にお願い出来ればと思います」

筆頭秘書に指名し、就任を了解してから、シルヴェーヌさんは著しく変わった。

やる気に満ちあふれ、晴れやかな笑顔を見せていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

別棟へ戻ってから、俺の書斎で恒例の合同連絡会議を行う。

議題は、俺のお披露目イベント、王立闘技場のトーナメント、
ファルコ王国王家主催武術大会実施に向けての作業。
実際に運営するギルドの担当者との打ち合せをしなくてはならない。

しかし、グレゴワール様から、この件で冒険者ギルド側と詰めたという話は聞いていない。

仕方がない。
現時点で可能な部分だけ、進めておこう。

「運営担当者は、トリッシュさんの方で確認してあるよな?」

「はあい! ロイク様。当然まだアプローチはしていませんが、3年前から、武術大会は、業務部イベント課のエリク・ベイロン課長が運営責任者でえす」

「そうか。トリッシュさんは、同じ業務課だったから、……とかでベイロン課長の事は良く知ってるってオチかな?」

「はあい、その通りです。ベイロン課長はあ、元・私の上司で新人の時の教育係でしたよお」

「へえ、そうなんだ」

「はあい! とっても優しい方で、私を見ると、実の娘さんを思い出すと言われ、可愛がって貰いましたあ」

「ふううん」

「はあい、課長へお願いすれば何でも聞いてくれますよお」

お願いすれば何でも聞いてくれる?

おいおい、それ……変な意味じゃないよな。

まあ、良いや。
「ついてる」って事で。

俺のLUK:ラッキーが、最大値の10,000という事も影響しているんだろう。

「じゃあ、ベイロン課長とは話しやすいな。交渉窓口は、トリッシュさんへ頼むよ」

「はあい! 喜んでえ」

「じゃあ、各作業の実務担当者を決めておこうか。自分がやりたい希望を出して欲しい。決定は3日後だ」

「「「了解!」」」

よし。
お披露目イベントの方はこれでOK。

ここでシャルロットさんが、

「今回、ルナール商会各支店営業所の課題を洗い出ししましたが、急ぎの案件は、出来るだけ早く、ロイク様に対処して頂けると助かりますわ」

うん、それはシャルロットさんの言う通りだ。
実際に難儀しているわけだし、早く本社が対応して欲しいと思っているだろう。

放置とか先延ばしは宜しくない。

「分かった。改めて今日出して貰った課題を精査しよう」

という事で、合同連絡会議は終了。

いろいろあった日であったが……
充実したといえる1日が無事終わったのである。
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