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第133話「まず、王国執行官として、円滑に業務遂行する為に各所への根回しが必要だ」

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俺は、更にグレゴワール様と打合せをする為、
リヴァロル公爵家邸に残った。

グレゴワール様は、ファルコ王国貴族トップなのに、腰が相当低い。

俺と一緒に玄関まで、冒険者ギルド、ギルドマスターのテオドールさん、
ルナール商会会頭のセドリックさんを労わり、見送った。

帰りはリヴァロル公爵家専用の馬車で、ふたりを送るという気の遣いようだ。

馬車が正門から出て行くと、グレゴワール様は「ふう」と大きく息を吐いた。

うわ!
相当疲れているみたいだ。

……無理もない。
アレクサンドル陛下、テオドールさん、セドリック会頭、そして俺と、
全てが折り合うよう、わずかな時間で調整に奔走して頂いたものなあ。

俺を保護下に置くべく、自分の預かりにするとか、屋敷の敷地内に住まわせるとか、
……それは王国の国益の為とか、リヴァロル公爵家の為とか、
ジョルジエット様絡みとか、いろいろグレゴワール様の思惑はあると思う。

でも、現状を考えると、俺は正直、感謝の気持ちしかない。

「グレゴワール様」

「うむ」

「回復の魔法……かけときますね」

俺は回復の魔法を発動。
グレゴワール様は体力を回復した。

「おお、ありがとう」

と、グレゴワール様は礼を言い、にっこり。

そして大きく頷き、

「うむ! 疲労が取れ、力がみなぎったぞ! さて、ロイク君!」

「はい!」

「ふたりを見送ったついでだ。これから君が住む事となる、別棟へ案内しよう。普段は、来客用に使っている建物だ」

「ありがとうございます。宜しくお願い致します」

グレゴワール様は手招きし、俺は後からついて行く。

やがて、行き先に3階建ての別棟が見えて来た。

結構大きい!
そしてデザインは、本館に酷似している。
さすがに5階建ての本館には及ばず、スケールは半分強くらいだけど、
俺が住むには広すぎるくらいだ。
馬車を停める駐車場が10台分。
馬を入れる大きな厩舎まである!

グレゴワール様は、玄関のカギを開け、自ら案内してくれる。

大広間、食堂、厨房、使用人の部屋等がある1階。
地下には大きな倉庫に、ワインセラー。
2階は、宿泊可能なトイレ、風呂付きの客間が10部屋。
3階は主賓用の客間。
つまりこの別棟の主となる俺が使う応接室付きの書斎。
ここが執務室になるのだろう。

更に予備の部屋がふたつに、従者用の部屋が5つ。
そして2つのトイレ、岩風呂付きの巨大寝室と万全。

この別棟以外に……
これまで通り、ルナール商会のホテルは自由に使えるし、
冒険者ギルド本部には、執務室があるし、トリッシュさんも居る。

うん!
住居環境も、収入と待遇同様、至れり尽くせりである。

満足そうに頷く俺。
その傍らで、グレゴワール様も、嬉しそうに微笑んでいたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

別棟の案内が終わり……
グレゴワール様と俺は、本館へ戻る。

そして、グレゴワール様の書斎へ。

改めていろいろと話をする。

「まあ、これでロイク君の報酬、衣食住は問題がないだろう。おいおい今のホテルから、拠点をこちらへ移すようにしてくれ」

「ですね。引っ越しの準備をするようにします」

「うむ。食事はしばらく本館で作ったものを運ばせる。何か希望があれば、どんどんリクエストしてくれ」

「はい、助かります」

「それと、別棟で働く使用人と警護の騎士は、当面ウチの屋敷で勤務する者を、何人か振り分ければ良い。新規で雇用する者に関しては、セバスチャン、バジルと相談し、君も含め3人が直接、面接した上で、最終的に私へ報告してくれ」

「分かりました」

「後は、ルクレツィア様の件も対応しなければならないが、まず、王国執行官として、円滑に業務遂行する為に各所への根回しが必要だ」

「王国執行官として、円滑に業務遂行する為の、各所への根回しとおっしゃるのは、いろいろな方々が横やりを入れないよう、ロイク・アルシェの名前と実績のお披露目という事ですね?」

「うむ、良く分かっているな。陛下直属と私グレゴワールの預かりといっても、クレームをつける者は必ず居る」

「はい。俺もそう思います」

「うむ、それゆえ陛下を始めとした王族に王国貴族、加えて、創世神教会、冒険者ギルド、商業ギルド、職人ギルドなどの各代表者を改めて集め、ロイク・アルシェの名前とドラゴンスレイヤーの実績を公式に世間へ周知しなければならない」

グレゴワール様から言われ、俺はひとつ考えが浮かぶ。

「成る程……何となくですが、アイディアはあります」

「ほう! そうか! どのようなアイディアかね?」

「少し考え、取りまとめてご相談しますよ」

「おお、そうか! まあ、私の方でも考えておくよ」

「何卒宜しくお願い致します」

「うむ!」

と話がまとまったその時。

どんどんどんどんどん!!!

と、書斎の扉が乱暴に叩かれたのである。
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