133 / 257
第133話「まず、王国執行官として、円滑に業務遂行する為に各所への根回しが必要だ」
しおりを挟む
俺は、更にグレゴワール様と打合せをする為、
リヴァロル公爵家邸に残った。
グレゴワール様は、ファルコ王国貴族トップなのに、腰が相当低い。
俺と一緒に玄関まで、冒険者ギルド、ギルドマスターのテオドールさん、
ルナール商会会頭のセドリックさんを労わり、見送った。
帰りはリヴァロル公爵家専用の馬車で、ふたりを送るという気の遣いようだ。
馬車が正門から出て行くと、グレゴワール様は「ふう」と大きく息を吐いた。
うわ!
相当疲れているみたいだ。
……無理もない。
アレクサンドル陛下、テオドールさん、セドリック会頭、そして俺と、
全てが折り合うよう、わずかな時間で調整に奔走して頂いたものなあ。
俺を保護下に置くべく、自分の預かりにするとか、屋敷の敷地内に住まわせるとか、
……それは王国の国益の為とか、リヴァロル公爵家の為とか、
ジョルジエット様絡みとか、いろいろグレゴワール様の思惑はあると思う。
でも、現状を考えると、俺は正直、感謝の気持ちしかない。
「グレゴワール様」
「うむ」
「回復の魔法……かけときますね」
俺は回復の魔法を発動。
グレゴワール様は体力を回復した。
「おお、ありがとう」
と、グレゴワール様は礼を言い、にっこり。
そして大きく頷き、
「うむ! 疲労が取れ、力がみなぎったぞ! さて、ロイク君!」
「はい!」
「ふたりを見送ったついでだ。これから君が住む事となる、別棟へ案内しよう。普段は、来客用に使っている建物だ」
「ありがとうございます。宜しくお願い致します」
グレゴワール様は手招きし、俺は後からついて行く。
やがて、行き先に3階建ての別棟が見えて来た。
結構大きい!
そしてデザインは、本館に酷似している。
さすがに5階建ての本館には及ばず、スケールは半分強くらいだけど、
俺が住むには広すぎるくらいだ。
馬車を停める駐車場が10台分。
馬を入れる大きな厩舎まである!
グレゴワール様は、玄関のカギを開け、自ら案内してくれる。
大広間、食堂、厨房、使用人の部屋等がある1階。
地下には大きな倉庫に、ワインセラー。
2階は、宿泊可能なトイレ、風呂付きの客間が10部屋。
3階は主賓用の客間。
つまりこの別棟の主となる俺が使う応接室付きの書斎。
ここが執務室になるのだろう。
更に予備の部屋がふたつに、従者用の部屋が5つ。
そして2つのトイレ、岩風呂付きの巨大寝室と万全。
この別棟以外に……
これまで通り、ルナール商会のホテルは自由に使えるし、
冒険者ギルド本部には、執務室があるし、トリッシュさんも居る。
うん!
住居環境も、収入と待遇同様、至れり尽くせりである。
満足そうに頷く俺。
その傍らで、グレゴワール様も、嬉しそうに微笑んでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
別棟の案内が終わり……
グレゴワール様と俺は、本館へ戻る。
そして、グレゴワール様の書斎へ。
改めていろいろと話をする。
「まあ、これでロイク君の報酬、衣食住は問題がないだろう。おいおい今のホテルから、拠点をこちらへ移すようにしてくれ」
「ですね。引っ越しの準備をするようにします」
「うむ。食事はしばらく本館で作ったものを運ばせる。何か希望があれば、どんどんリクエストしてくれ」
「はい、助かります」
「それと、別棟で働く使用人と警護の騎士は、当面ウチの屋敷で勤務する者を、何人か振り分ければ良い。新規で雇用する者に関しては、セバスチャン、バジルと相談し、君も含め3人が直接、面接した上で、最終的に私へ報告してくれ」
「分かりました」
「後は、ルクレツィア様の件も対応しなければならないが、まず、王国執行官として、円滑に業務遂行する為に各所への根回しが必要だ」
「王国執行官として、円滑に業務遂行する為の、各所への根回しとおっしゃるのは、いろいろな方々が横やりを入れないよう、ロイク・アルシェの名前と実績のお披露目という事ですね?」
「うむ、良く分かっているな。陛下直属と私グレゴワールの預かりといっても、クレームをつける者は必ず居る」
「はい。俺もそう思います」
「うむ、それゆえ陛下を始めとした王族に王国貴族、加えて、創世神教会、冒険者ギルド、商業ギルド、職人ギルドなどの各代表者を改めて集め、ロイク・アルシェの名前とドラゴンスレイヤーの実績を公式に世間へ周知しなければならない」
グレゴワール様から言われ、俺はひとつ考えが浮かぶ。
「成る程……何となくですが、アイディアはあります」
「ほう! そうか! どのようなアイディアかね?」
「少し考え、取りまとめてご相談しますよ」
「おお、そうか! まあ、私の方でも考えておくよ」
「何卒宜しくお願い致します」
「うむ!」
と話がまとまったその時。
どんどんどんどんどん!!!
と、書斎の扉が乱暴に叩かれたのである。
リヴァロル公爵家邸に残った。
グレゴワール様は、ファルコ王国貴族トップなのに、腰が相当低い。
俺と一緒に玄関まで、冒険者ギルド、ギルドマスターのテオドールさん、
ルナール商会会頭のセドリックさんを労わり、見送った。
帰りはリヴァロル公爵家専用の馬車で、ふたりを送るという気の遣いようだ。
馬車が正門から出て行くと、グレゴワール様は「ふう」と大きく息を吐いた。
うわ!
相当疲れているみたいだ。
……無理もない。
アレクサンドル陛下、テオドールさん、セドリック会頭、そして俺と、
全てが折り合うよう、わずかな時間で調整に奔走して頂いたものなあ。
俺を保護下に置くべく、自分の預かりにするとか、屋敷の敷地内に住まわせるとか、
……それは王国の国益の為とか、リヴァロル公爵家の為とか、
ジョルジエット様絡みとか、いろいろグレゴワール様の思惑はあると思う。
でも、現状を考えると、俺は正直、感謝の気持ちしかない。
「グレゴワール様」
「うむ」
「回復の魔法……かけときますね」
俺は回復の魔法を発動。
グレゴワール様は体力を回復した。
「おお、ありがとう」
と、グレゴワール様は礼を言い、にっこり。
そして大きく頷き、
「うむ! 疲労が取れ、力がみなぎったぞ! さて、ロイク君!」
「はい!」
「ふたりを見送ったついでだ。これから君が住む事となる、別棟へ案内しよう。普段は、来客用に使っている建物だ」
「ありがとうございます。宜しくお願い致します」
グレゴワール様は手招きし、俺は後からついて行く。
やがて、行き先に3階建ての別棟が見えて来た。
結構大きい!
そしてデザインは、本館に酷似している。
さすがに5階建ての本館には及ばず、スケールは半分強くらいだけど、
俺が住むには広すぎるくらいだ。
馬車を停める駐車場が10台分。
馬を入れる大きな厩舎まである!
グレゴワール様は、玄関のカギを開け、自ら案内してくれる。
大広間、食堂、厨房、使用人の部屋等がある1階。
地下には大きな倉庫に、ワインセラー。
2階は、宿泊可能なトイレ、風呂付きの客間が10部屋。
3階は主賓用の客間。
つまりこの別棟の主となる俺が使う応接室付きの書斎。
ここが執務室になるのだろう。
更に予備の部屋がふたつに、従者用の部屋が5つ。
そして2つのトイレ、岩風呂付きの巨大寝室と万全。
この別棟以外に……
これまで通り、ルナール商会のホテルは自由に使えるし、
冒険者ギルド本部には、執務室があるし、トリッシュさんも居る。
うん!
住居環境も、収入と待遇同様、至れり尽くせりである。
満足そうに頷く俺。
その傍らで、グレゴワール様も、嬉しそうに微笑んでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
別棟の案内が終わり……
グレゴワール様と俺は、本館へ戻る。
そして、グレゴワール様の書斎へ。
改めていろいろと話をする。
「まあ、これでロイク君の報酬、衣食住は問題がないだろう。おいおい今のホテルから、拠点をこちらへ移すようにしてくれ」
「ですね。引っ越しの準備をするようにします」
「うむ。食事はしばらく本館で作ったものを運ばせる。何か希望があれば、どんどんリクエストしてくれ」
「はい、助かります」
「それと、別棟で働く使用人と警護の騎士は、当面ウチの屋敷で勤務する者を、何人か振り分ければ良い。新規で雇用する者に関しては、セバスチャン、バジルと相談し、君も含め3人が直接、面接した上で、最終的に私へ報告してくれ」
「分かりました」
「後は、ルクレツィア様の件も対応しなければならないが、まず、王国執行官として、円滑に業務遂行する為に各所への根回しが必要だ」
「王国執行官として、円滑に業務遂行する為の、各所への根回しとおっしゃるのは、いろいろな方々が横やりを入れないよう、ロイク・アルシェの名前と実績のお披露目という事ですね?」
「うむ、良く分かっているな。陛下直属と私グレゴワールの預かりといっても、クレームをつける者は必ず居る」
「はい。俺もそう思います」
「うむ、それゆえ陛下を始めとした王族に王国貴族、加えて、創世神教会、冒険者ギルド、商業ギルド、職人ギルドなどの各代表者を改めて集め、ロイク・アルシェの名前とドラゴンスレイヤーの実績を公式に世間へ周知しなければならない」
グレゴワール様から言われ、俺はひとつ考えが浮かぶ。
「成る程……何となくですが、アイディアはあります」
「ほう! そうか! どのようなアイディアかね?」
「少し考え、取りまとめてご相談しますよ」
「おお、そうか! まあ、私の方でも考えておくよ」
「何卒宜しくお願い致します」
「うむ!」
と話がまとまったその時。
どんどんどんどんどん!!!
と、書斎の扉が乱暴に叩かれたのである。
2
お気に入りに追加
953
あなたにおすすめの小説
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる