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第106話「最悪、逃げれば良い」

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今回はどれだけ稼げるだろう……
まあ、用心はしないとな。

つらつら考えながら、俺は街道を走り続けた。

地図を見ながら、最短距離で街道をフェードアウト、原野へ入る。

午前8時過ぎから、休憩を取りながら走り続け、約6時間。
俺は約300kmを踏破し、俺はトレゾール公地……
別名『魔の公地』に到着した。

時刻は午後2時過ぎ……見やれば、トレゾール公地の周囲は、
高さ約20mの、数kmにわたる高い岩壁が設けられている。

ファルコ王国が、地の魔法使いと作業員を使い、相当苦労し、設置したものである。

岩壁は防御、破邪の魔法も施されて頑丈だし、
上部には鋭い鉄の杭がびっしり、はめ込まれていて、
空でも飛ばない限り乗り越える事は難しい。

この岩壁の建設はまずは盗掘、そして魔物による犠牲者を出す事を防ぐ、
そして、魔物を外へ出さない3つの意味がある。

岩壁の正面には正門があり、その正門の柱には、魔導感知器が備えつけられていた。

その魔導感知器へ依頼を受諾した冒険者が、ギルドの所属登録証をかざすと、反応。魔力が認証、記録され、正門が開く仕掛けとなっている。

そして中へ入ると、一旦閉まる。

という事で、防犯対策は、ばっちりなのだ。

ちなみに帰る時は、当該者が正門前に立てば魔力を感知して開き、敷地外へ出れば、自動的に閉まる仕掛けだ。

さてさて!
俺は正門の前まで来た。
今のところ、内部に魔物の反応はない。

この公地は、特殊なエリアだ。
侵入者を感知し、次元の裂け目から、魔物が湧き出て来る。

俺はまず、ケルベロスを召喚する。

召喚サモン

短く言霊を詠唱すると、少し先の地面に魔方陣が浮かび上がり、ぱぱぱっと輝いた。

即座に、巨大な灰色狼に擬態した魔獣ケルベロスが、飛び出して来る。

『うむ、来たぞ、あるじ

『おお、ご苦労様。ここは特殊な領域なんだ。生体反応とその数により、次元の裂け目から出現する魔物の種類と数が変わる』

『成る程な、分かった、心得ておこう』

おお、無駄に長い打合せは不要。
話が早い!

『じゃあ、開けるぞ。多分、俺達が入ってワンテンポ置き、魔物がうじゃうじゃ出現する』

『うむ、魔物がうじゃうじゃか。何が出るのだ?』

『ええっと……レベル14の俺、単独で入れば、多分ゴブリンとオークが出る。』

そう!
俺ひとりだけだと、ゴブリンとオークが大群で出る。

常人ならば、相当やばいけれど、トリッシュさんは剣聖に勝った俺ならば、
十分戦えると判断し、そんなに心配しなかったわけ。

『でもケルベロスが加わると、ドラゴンが群れで出て来るかもしれないな』

俺が言えば、ケルベロスは意外にも喜びの波動を放って来る。

『ドラゴンの群れ? ほう! 面白そうじゃないか!』

『おお! 面白いか』

『ああ、面白い。寝ていても倒せるゴブリン、オークなどのザコ、力だけのオーガなど飽き飽きしていたところだ。我は魔界では、上位悪魔とも張り合っていたからな』

『そうか!』

『うむ、それにあるじは、まだ本気で戦った事がない。そろそろそういう戦いを経験するのもありだ。良き訓練となる』

おおっと!
相変わらず『教師』として上から目線で物言いをするケルベロス。

でも、的確なアドバイスは、大いに助かるな。

という事で、俺は所属登録証を魔導感知器へかざし、正門を開けたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ごごごごごごごごごごごごごごご!!!!!

重い音を立て、トレゾール公地の正門が開いて行く……

俺とケルベロスは、すすすっと中へ入った。

すると、

ごごごごごごごごごごごごごごご!!!!!

と、正門が閉まって行き、がっちゃんと音がし、完全に外部と遮断された。

景色は変わってないな。

遠くに山々があり、正面には、山中を水源とする浅い川が流れていて、川の周囲は絶好の採集、採掘ポイントとなっている。

雨が降り、水量が増えると山から、いろいろな鉱石が流され、川底や周囲の河原に残るのだ。

右手を見れば、石造りで簡素だが丈夫なロッジがある。

ここが、宿泊場所で採集、採掘者の安全地帯。

周囲を破邪の魔法でガードしてあり、オーガ以下、中位以下の魔物は入って来れない構造となっている。

なので、ケルベロスは俺とともにロッジ内へ入る事に問題はない。
逆に言えば、ドラゴンの上位種などに囲まれたとしたら、
常人では死を覚悟しなければならないという事。

正直、俺は悩んだ。

俺が単独だと、ゴブリンとオークしか出現しないから、危険度は低い。
しかし討伐に忙殺され、採集、採掘に影響する。

もし相棒が居れば、討伐を任せ、採集採掘に重きを置ける。

そこでケルベロスの出番だが、どれくれいの魔物が出るのか未知数だ。

もしも、ケルベロスが兵士1,000人に換算されたらヤバイかも。
ドラゴンが群れで襲って来る。
それも上位種が。

でも、その時はその時。

最悪、逃げれば良い。

この依頼は、退避ありきで収穫ゼロでも許される依頼。

果たしてどうなるか、俺は緊張しながら、すぐ行動出来るよう身構えたのである。
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