上 下
64 / 257

第64話「俺は、ジョルジエット様、アメリー様に情が湧いているのかもしれない」

しおりを挟む
紆余曲折あり、
いきなり貴族令嬢ジョルジエット様、アメリー様ふたりの、
イレギュラーな護衛役を務める事になった俺。

自分にあてがわれる部屋に続き、10間もあるジョルジエット様の豪華な私室に連れて行かれた。

ここで、「自分の役目が済んだ」と、
リヴァロル公爵家警護騎士をまとめる主任騎士、バジル・オーリクさん、
同じく家令のセバスチャンさんが退場する事に。

バジルさんは、
部下の警護女子騎士アンヌ・ベルトゥさん、ジュリー・バイエさんへ、
契約金額だけ未記載の俺の契約書の控えを渡し、
「内容を熟読した上で、俺のに指示に従う事」を命令していた。

セバスチャンさんも、「使用人達も同様に従います」と言う。

俺は、バジルさん、セバスチャンさんへ、改めて丁寧にあいさつし、
今後の事をお願いしておく。

当主グレゴワール・リヴァロル公爵閣下の命令もあり……
バジルさんは部下の騎士達に、セバスチャンさんは部下の使用人達へ、
ジョルジエット様、アメリー様の護衛役となった俺の存在と仕事を周知してくれるはずだ。

「失礼致します。何かあればお呼びください」
とバジルさん、セバスチャンが去り……男子は俺だけとなる。

不慣れな事もあり……
綺麗な女子4人とひとつ部屋に居るって、プレッシャーが半端ない。
仕事として引き受けたから仕方ないが、慣れるまでしばらくかかりそうだ。

さてさて!
バジルさんが、渡した契約金額だけ未記載の俺の契約書の控えを基に、
早速、打合せを行う。

俺は休日前日の午後4時くらいまでに出勤し、自分の部屋で待機。
5時にアンヌさんか、ジュリーさんが呼びに来て、
この部屋へジョルジエット様、アメリー様を訪ねて勤務開始。
今のように部屋に詰めながら、護衛役と話相手を務め、就寝時間が来たら、
自室へ戻り、就寝。

翌朝は午前7時に起床し、待機。
同じくアンヌさんか、ジュリーさんが呼びに来て、ジョルジエット様、アメリー様を訪ねて勤務開始。

昼間は、ジョルジエット様、アメリー様が外出したら、外出先へ同行。
未外出の場合は、ジョルジエット様、アメリー様と一緒か、自室で待機。
午後5時になったら、勤務終了で、屋敷から退去……というスケジュールだ。

ちなみに平日、俺が不在の時、
侍女を務めるアメリー様は午前5時30分、主のジョルジエット様は午前6時前に起床。
馬車を使い、通学している王立ロジエ女子学園へ午前8時にふたりで登校、午後3時45分に下校。
アンヌさん、ジュリーさんは、屋敷において常に付き従い、登下校時には同行するという。

ここまで話して、俺はアンヌさん、ジュリーさんとも打ち解けていた。
試合に圧勝した俺が腰を低くし、丁寧に接したので、
女子騎士のふたりは、俺に好感を持ってくれたらしい。

アンヌさんが言う。

「平日毎日、私達騎士は、朝4時から1時間、午前5時まで邸内の闘技場他で訓練を行います」

ジュリーさんも追随。

「イレギュラーで夜間訓練も行いますよ」

グレゴワール様からは、屋敷内の施設を自由に使ってOKと許可を得ている。
騎士達とコミュニケーションもとれるから、俺も明日の朝、訓練に参加するか……

こういう場合は、まずジョルジエット様、アメリー様に許可を取り、
アンヌさん、ジュリーさん経由でバジルさんに伝えて貰い、OKを取るという煩雑さ。

でも、それが宮仕えというもの。
仕方がない。

俺が騎士の朝訓練に参加の希望を伝えると、ジョルジエット様、アメリー様は快諾。
そして、アンヌさんも、ジュリーさんも歓迎という事で安心した。

またアンヌさん達は、

「先ほど、参加しなかったので、ぜひロイク様と模擬試合で戦ってみたい」

と希望した。

話がまとまり、ジュリーさんが部屋を出て、バジルさんへ伝えに行ってくれた。
彼女はすぐ戻って来て、俺も「騎士達の訓練に参加OKだ」と告げてくれた。

ここで、ジョルジエット様、アメリー様へ注意をしておく。

父グレゴワール様から詰問されても、ジョルジエット様は悪びれていなかったが……

先日の愚連隊による誘拐未遂事件は、アンヌさん達護衛の同行を断り、
アメリー様とふたりきりで、街中へ外出したのが原因。

平日俺は不在なので、護衛は出来ない。
何かあったらと思うと、さすがに心配になる。
俺は、ジョルジエット様、アメリー様に情が湧いているのかもしれない。

「今後は、護衛なしでの外出は絶対にやめてください」

とお願いしたら、ジョルジエット様、アメリー様は、

「申し訳ございません、反省しております」
「ロイク様にご心配をおかけするような事は二度と致しません」

とふたりとも素直に謝ってくれた。

俺に従順なジョルジエット様、アメリー様を見て、
アンヌさん、ジュリーさんはびっくり。

まあ、俺と出会った当初の、ジョルジエット様の傲慢な態度を見ていれば、
どんな経緯で護衛なしにて、出かけたのか、大体想像がつく。

多分、ジョルジエット様主導で、家臣のアメリー様はやむなく従ったのだろうが、
いずれ分かるだろうし、この場でこれ以上追及はしない。

そんなこんなで、仕事の打ち合わせが済み……
落ち着いたところで、ジョルジエット様、アメリー様から、俺へ要望が出る。

「お父様が作らせた調査書には、ロイク様の生い立ちから、故郷シュエット村を出られ、山賊を倒し、王都ネシュラへ来て模擬試合で剣聖に勝ち、冒険者になるまでの記載がありました。その事をもう少し詳しくお聞きしたいですわ」

「はい! ロイク様のご経歴には興味が大いにありますわ! ぜひぜひ! 教えてくださいませませ!」

対して、俺は快諾。

「分かりました。お安い御用です」

……さすがに、ここがゲーム『ステディ・リインカネーション』
の異世界であり、「俺は転生者ケン・アキヤマです」などとは言えない。

だがそれ以外の部分、ロイク・アルシェが生まれてから、今までの人生を……
よろず屋退店のややこしい経緯いきさつを除き、俺は詳しく女子4人へ話したのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...