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第171話「俺の発した大音声は、間違いなく砦内へ伝わったようである」

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支度を整えた俺たちグランシャリオは、北の砦へ向け、早馬で旅立った。

自宅の番犬?にケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟を置いていくか、
少しだけ悩んだが……
やはり、オーガ5千体との戦いには、戦力として欠かせない。
なので、連れて行く事に。

代わりに冒険者ギルド不動産部の紹介で、元騎士からなる警備のプロを頼み、
24時間常駐して貰う事にした。
駐車場に、馬車と簡易トイレを置き、数人体制、交代で見張ってくれるから安心だ。

ぱからっ!ぱからっ!ぱからっ!ぱからっ!
ぱからっ!ぱからっ!ぱからっ!ぱからっ!

王都から北へ向かう街道を、魔法で身体能力が強化された早馬7騎は、
ひたすら走る。

普通は途中で馬を替えるのだが、
この魔法馬は身体頑健、速度も持久力も大幅アップ。

馬の最高速度時速70㎞をキープしたまま、12時間も駆け続ける事が可能なのだ。
12時間駆けた後は、約8時間休ませれば、体力は元通りに回復する。
なので、人間が休憩するのに合わせて馬も休ませる形だ。

乗馬に関して、意外だったのがシャルロット。

グランシャリオのクランメンバーであるローラン様以下は、
乗り慣れているという表現がぴったり。

そして俺とフェルナンさんは、元騎士見習い。
子供の頃から、馬に乗っている。
散々と言っていいほど、訓練に明け暮れた。

だから長距離の騎乗は何の支障もない。

しかし、驚いた事に、魔法使いのシャルロットも馬の扱いが巧み。
ぴしっと綺麗なフォームでさっそうと騎乗するのだ。

一体どうしてなのか不思議に思い、休憩した時に尋ねたら、
前のクランの仮所属時に乗馬を習っていたという。

これから冒険者としてやって行くのに、
乗馬が苦手だと話にならないと思ったらしい。

うん!
さすが我が彼女。
抜かりがないというか、本当にしっかりしている。
備えあればうれいなし、という事だ。

それと支給して貰った収納の魔道具は本当に便利。
空間魔法を付呪エンチャントした腕輪型。
登録した合言葉を詠唱すれば、出し入れが自由自在。
容量は小さな村くらいあるというから、武器防具などの装備品は勿論、
食料、生活用品、野宿の為のキャンプ用品など、楽勝で全てを収納する事が出来た。

これ、普通に買えば、金貨3千枚3,000万円はするというが、
ローラン様の自作だというから、びっくりだ。
強い勇者ってだけじゃなく、いろいろな魔法、スキルを併せ持つ賢者って事。
俺は魔法剣士となったが、最終的にはローラン様のような賢者を目指したい。

そんなこんなで、早馬で走る事、約5日。

途中では、宿屋があれば泊り、なければキャンプという行程を経て、
俺たちグランシャリオは、北の砦へ到着したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

魔物が跋扈する魔鏡に接する北の砦は、自然の地形を利用した堅固な城塞である。

急こう配の丘に築かれ、砦と名はつくが、小さな町という趣き。

魔鏡と接する方向には、防護壁として、
高さ20mにもなる、巨大石壁が積み上げられていた。

防御魔法が付呪エンチャントされ、耐久性を大幅にアップさせている。
この石壁には、いくつも見張り台が備えてあり、守備隊は俺の自宅の警備同様、
24時間、交代制で監視しているのだ。
命を懸けた過酷な仕事であり、赴任者が少ないのは当然だ。

しかし守備隊は、魔物どもから国を守るという志と、高額な俸給。
また3年間から、最大5年間の限定勤務、
除隊後の生活、身分保障等の確約で士気は高いという。

さてさて!
俺たちが入場する正門は、魔鏡の反対側にあり、
こちらも10mの防護壁が築かれている。
見張り台があるのは、同じである。

その見張り台の兵士が騎乗した俺たちを見て、嬉しそうに、
大きく手を打ち振っていた。

おおおおお!!!
と喜びの声も聞こえる。

事前に魔法鳩便で報せてあるから、
グランシャリオ救援の連絡は周知されているらしい。

到着を報せる為、ここで声を張り上げるのは、命じられた俺の役目である。

「頼もおおう!!! 守備隊の皆様がたああ!!! マエストロ、ローラン様率いる冒険者クラン、グランシャリオ!!! ただいま救援にはせ参じたあああ!!!」

俺の発した大音声は、間違いなく砦内へ伝わったようである。

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!

応えるように、とんでもない超大歓声が響き渡り、
頑丈な正門がゆっくりと開かれたのである。
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