169 / 176
第169話「でも、勘働きスキルで分かる。 ローラン様の話はまだ終わらないと」
しおりを挟む
アングラ―ド侯爵家は、スフェール王国譜代の貴族、
建国以来続く、旧い家柄だという。
歴代には傑出した人物も大勢居て、王国に多大な貢献をしたと伝えられる。
しかし、ウジューヌの父である現当主は、聞けば極めて凡庸であり、
そんなに重い役職にはついておらず、言葉は悪いが、誰でもこなせる仕事を、
漠然とこなしていたという。
「子供は親の鏡だ」と言われる。
まあ、そのことわざが、絶対に正しい!とは断言出来ないけど。
子供がどんなに屑でも、立派な親は居るから。
だが、今回の場合、ストーカー化して、
嫌がるオレリアさんに散々しつこくつきまとい、
ローラン様へ対しては、生意気かつ傲岸不遜といえる態度をとった息子ウジューヌを放置していたのだから、アングラ―ド侯爵の器量も推して知るべし。
王国譜代の超上級貴族家当主としては、どう考えても分不相応であるといえよう。
しかし、そうは言っても、このレベルのやらかしで、
「徹底的に叩き潰す」のは疑問が残る。
個人的にはそう思う。
何せ、これでもか!これでもか!というぐらいの処罰をローラン様は行ったから。
侯爵から男爵への降格。
領地を召し上げられ、僻地へ転封、王都からも追放。
降格と転封、王都追放を逆恨みし、馬鹿な行為に走らせないよう、
関係者に公務以外での接近は一切禁止。
違反した場合、莫大な罰金を発生させ、
また悪事を画策し、害を及ぼそうとしたら、厳しく処罰される。
しまいには、もしも転封先で、善政を行わない場合、
アングラ―ド家は爵位召し上げの上、取り潰しとなる!のだ。
どう考えても、他に何か理由がある。
ゴブリン討伐を引き受けたシュエット村に対する悪政はそのひとつだろう。
あの討伐も、単に害為すゴブリンを倒すというより、
シュエット村の現地調査という趣きがあった。
それ以外にも、俺たちがあずかり知らぬ、
アングラ―ド侯爵家のやらかしが、たくさんあるに違いない。
推測だが、ローラン様はそのやらかしの数々を徹底的に調べ上げ、
王国――国王陛下と宰相へ報告し、意見も問われた上で、今回の処罰を決定した。
つまり先に述べた通り、ローラン様が貴族たちの監督査察などを担当する、
『監察官である』とすれば、辻褄が合うのである。
結論!
フェルナンさんの件は、アングラ―ド侯爵家処罰に伴うきっかけにすぎない。
もしくは、ついで?で対応したのだろう。
まあ、きっかけとか、ついででも、
ローラン様が好意的に、フェルナンさんの為に尽力してくれた事に間違いはない。
俺たちは、クランリーダーのローラン様を信じ、ついて行く事が基本スタンス。
但し、考える事を放棄せず、行動とロジックをすり合わせる事は必要。
今回はほぼ納得出来るし、万が一、そうでなければ、疑問が生じれば、
よ~く言葉を選んだ上で、問題提起すればOK。
それもローラン様直接ではなくても良いと思う。
その先は……改めて考えれば良い。
自問自答した俺は、小さく頷いていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……つらつらと考える俺だが、ローラン様の話は続いている。
「念の為、補足すると、息子ウジューヌも父アングラ―ド侯爵とともに王都を追放、条項も父親と同じ内容が適用される。そしてフェルナンとオレリア殿の婚約、結婚は決定した。後の詳細はフェルナンが、お父上、そしてブラントーム伯爵ともろもろ相談の上、進めれば良かろう」
ローラン様の話を聞き、真剣な表情のフェルナンさん。
すっくと立ち、深々と頭を下げる。
「ローラン様、そして皆さん、今回は私の為にご尽力頂き、本当にありがとうございました!」
フェルナンさんのお礼の言葉と仕草を見て、ローラン様は満足そうに頷く。
「うむ! ちなみに今回の決定は、国王陛下がお出しになった最終決定で、宰相閣下からアングラ―ド侯爵家へ通告された。私は侯爵へ、ゴブリン討伐の結果報告をしたのみだ……以上!」
そうローラン様は言った。
以上!という事は、この件はこれで終わり。
でも、勘働きスキルで分かる。
ローラン様の話はまだ終わらないと。
「では諸君、次の話に移ろう。新たに受ける依頼の件だ」
新たに受ける依頼の件。
きっぱり言い切ったローラン様は、
「これも念の為に言っておく。先に完遂したシュエット村のゴブリン討伐とは、全くレベルが違う。特に新人たちは、より一層の気合を持ち、臨んで欲しい」
柔らかな笑みを浮かべながらも、鋭い視線を投げかけたのである。
建国以来続く、旧い家柄だという。
歴代には傑出した人物も大勢居て、王国に多大な貢献をしたと伝えられる。
しかし、ウジューヌの父である現当主は、聞けば極めて凡庸であり、
そんなに重い役職にはついておらず、言葉は悪いが、誰でもこなせる仕事を、
漠然とこなしていたという。
「子供は親の鏡だ」と言われる。
まあ、そのことわざが、絶対に正しい!とは断言出来ないけど。
子供がどんなに屑でも、立派な親は居るから。
だが、今回の場合、ストーカー化して、
嫌がるオレリアさんに散々しつこくつきまとい、
ローラン様へ対しては、生意気かつ傲岸不遜といえる態度をとった息子ウジューヌを放置していたのだから、アングラ―ド侯爵の器量も推して知るべし。
王国譜代の超上級貴族家当主としては、どう考えても分不相応であるといえよう。
しかし、そうは言っても、このレベルのやらかしで、
「徹底的に叩き潰す」のは疑問が残る。
個人的にはそう思う。
何せ、これでもか!これでもか!というぐらいの処罰をローラン様は行ったから。
侯爵から男爵への降格。
領地を召し上げられ、僻地へ転封、王都からも追放。
降格と転封、王都追放を逆恨みし、馬鹿な行為に走らせないよう、
関係者に公務以外での接近は一切禁止。
違反した場合、莫大な罰金を発生させ、
また悪事を画策し、害を及ぼそうとしたら、厳しく処罰される。
しまいには、もしも転封先で、善政を行わない場合、
アングラ―ド家は爵位召し上げの上、取り潰しとなる!のだ。
どう考えても、他に何か理由がある。
ゴブリン討伐を引き受けたシュエット村に対する悪政はそのひとつだろう。
あの討伐も、単に害為すゴブリンを倒すというより、
シュエット村の現地調査という趣きがあった。
それ以外にも、俺たちがあずかり知らぬ、
アングラ―ド侯爵家のやらかしが、たくさんあるに違いない。
推測だが、ローラン様はそのやらかしの数々を徹底的に調べ上げ、
王国――国王陛下と宰相へ報告し、意見も問われた上で、今回の処罰を決定した。
つまり先に述べた通り、ローラン様が貴族たちの監督査察などを担当する、
『監察官である』とすれば、辻褄が合うのである。
結論!
フェルナンさんの件は、アングラ―ド侯爵家処罰に伴うきっかけにすぎない。
もしくは、ついで?で対応したのだろう。
まあ、きっかけとか、ついででも、
ローラン様が好意的に、フェルナンさんの為に尽力してくれた事に間違いはない。
俺たちは、クランリーダーのローラン様を信じ、ついて行く事が基本スタンス。
但し、考える事を放棄せず、行動とロジックをすり合わせる事は必要。
今回はほぼ納得出来るし、万が一、そうでなければ、疑問が生じれば、
よ~く言葉を選んだ上で、問題提起すればOK。
それもローラン様直接ではなくても良いと思う。
その先は……改めて考えれば良い。
自問自答した俺は、小さく頷いていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……つらつらと考える俺だが、ローラン様の話は続いている。
「念の為、補足すると、息子ウジューヌも父アングラ―ド侯爵とともに王都を追放、条項も父親と同じ内容が適用される。そしてフェルナンとオレリア殿の婚約、結婚は決定した。後の詳細はフェルナンが、お父上、そしてブラントーム伯爵ともろもろ相談の上、進めれば良かろう」
ローラン様の話を聞き、真剣な表情のフェルナンさん。
すっくと立ち、深々と頭を下げる。
「ローラン様、そして皆さん、今回は私の為にご尽力頂き、本当にありがとうございました!」
フェルナンさんのお礼の言葉と仕草を見て、ローラン様は満足そうに頷く。
「うむ! ちなみに今回の決定は、国王陛下がお出しになった最終決定で、宰相閣下からアングラ―ド侯爵家へ通告された。私は侯爵へ、ゴブリン討伐の結果報告をしたのみだ……以上!」
そうローラン様は言った。
以上!という事は、この件はこれで終わり。
でも、勘働きスキルで分かる。
ローラン様の話はまだ終わらないと。
「では諸君、次の話に移ろう。新たに受ける依頼の件だ」
新たに受ける依頼の件。
きっぱり言い切ったローラン様は、
「これも念の為に言っておく。先に完遂したシュエット村のゴブリン討伐とは、全くレベルが違う。特に新人たちは、より一層の気合を持ち、臨んで欲しい」
柔らかな笑みを浮かべながらも、鋭い視線を投げかけたのである。
0
お気に入りに追加
233
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる