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第150話「この仕切り、ブルレック部長、さすが年の功だ」

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無茶苦茶な理屈を言い、シャルロットと引き離し、
アルノー騎士爵家へ俺を戻らせ、取り込み、奴隷&傀儡にして、散々利用。
挙句の果てにポイ捨てしようとしたクソ兄貴ではあったが……

勘働きスキルでその邪悪な心の内を知り、俺はきっぱりと永遠の別れを通告。

しかし、俺はそのままクソ兄貴を放流しなかった。

念の為、
「もう二度と俺エルヴェ・アルノーとその周囲には関わりません」
「自ら作成した絶縁状を守り、接近もしません」
「違反した場合、いかなる処罰をも受ける」
という誓約書を書かせ、サインもしっかりとさせた。

おいおい、それはやりすぎだぞ、と思われそうだが、
こういうやからは後で「言った言わない」のトラブルになる事も多い。

書面にした約定として、残しておく方が賢明なのだ。

という事で、誓約書にサインしたクソ兄貴は、肩を落とし、無言で去って行った。

ちなみにクソ兄貴へは、シャルロットを婚約者として紹介はしなかった。

何故なら、今後クソ兄貴とは一切関係を断つし、
下手に紹介し、奴が彼女に何か害を及ぼすような事をしたら、という懸念からだ。

後でシャルロットには、クソ兄貴へ紹介しなかった理由を、
ちゃんと話しておいた。

シャルロットも納得してくれたから、問題ナッシングである。

さてさて!
思いっきりざまあ!!出来たし、してやったりと言いたいのだが、
シャルロットとのデートで、うきうきルンルンで楽しかった気分は一転、
クソ兄貴のせいでダダ下がり、……最悪である。

ローラン様に見いだされ、ドラフト一位指名され……
地位と名誉と金、強さも得た俺へ、
クソ兄貴が揉み手をして、すり寄って来る事は予想していたが、
正直、ここまで畜生で人の心を失くした外道とは思わなかった。

心の内でクソ兄貴が、
「アルノー騎士爵家に育てて貰った恩があるだろ」とほざいていたが、
俺だって実家への恩を忘れてはいない。

今は亡き両親への想い出だってある。

実家の窮乏だって、充分承知している。

だからクソ兄貴が素直に謝罪し、苦しい事情を訴えて来たら、
少しくらいは金を渡しても構わないと思っていた。

しかし、そんな温情は甘々だった。

絶縁状を叩きつけ、数枚の金貨だけ渡し、修行の名目で俺を追放した、
クソ兄貴は、更に更に、魔物以下の畜生に堕ちていたのだ。

肉親の非道ぶりに、硬い表情で部屋へ戻った俺へ、
シャルロットは優しく寄り添ってくれた。

クソ兄貴との会話に、彼女は口を挟まなかったが、
問答無用で俺と引き離そうとした事から、奴の非道さは感じたらしい。

先に述べたが、シャルロットには身寄りが居ない。
唯一の肉親であった母は今は亡く、天涯孤独の身である。

そんなシャルロットからも心の波動が伝わって来る。

しかし、邪悪なクソ兄貴とは全く異なる、ピュアで真摯、美しい波動だ。

俺をひたすら愛し、慈しむ。

共に愛し合い、共に支え合い、家族として、共に新たな人生を歩んで行きたい。

寄り添うシャルロットからは、そんな優しい気持ちが伝わって来る。

俺だって、全く同じ気持ちだ。

グランシャリオからドラフト指名された同期同士というひょんな出会いだが、
見えざる手で導かれた運命の邂逅だと、今は確信している。

「エル君! 気分直しに、晩御飯は美味しいものを一緒に食べよう!」

とシャルロットから誘われ、俺は当然快諾。

ホテルのレストランで豪華なディナーを摂り、
改めてふたりだけで『打ち上げ会』を行った。

その後は、ふたりで俺の部屋へ帰り、朝までず~っと一緒だったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……翌日、ホテルのレストランで朝食を摂り、
シャルロットとふたり部屋で、魔法談義をしたり、
貰って来た賃貸用住居経営委託のカタログを見ていたら、
フロントから連絡があった。

連絡は、冒険者ギルド不動産部からであり、
俺たちの新居提案の準備が整ったから、
営業時間内なら、いつでも来て欲しいという。

善は急げという事で、俺とシャルロットは、早速冒険者ギルド不動産部へ。

現場担当者のニコラさんが案内してくれると思ったら……違った。

不動産部のトップ、ブルレック部長とニコラさん、
更に新任という事で、20歳くらいの笑顔が素敵な女子職員も加わり、
3人で現場を案内してくれるという。

また案内における移動は、当然馬車で行う。
それも使うのは、不動産部では一番豪華なVIP用の馬車らしい。

うお! やっぱり半端ないな、ローラン様とグランシャリオのブランドは。

まあ、3人で案内してくれるのは、少し仰々しいと思ったが、
結論から言えば、これが大成功。

俺、部長、ニコラさんだけだと、男子ばっかり3人に対し、
女子はシャルロットひとりだけという無言の圧がかかるのを……

シャルロットより少し年上の、若い女子職員が入る事で中和?され、
バランスが凄く良くなった。

更に、女子特有の視点で、新居探しに関し、
忌憚のない意見を言ってくれそうなので、同性のシャルロットは大喜び。

この仕切り、ブルレック部長、さすが年の功だ。

和気あいあいの雰囲気で、俺たちは新居探しに、出発したのである。
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