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第128話「こちら側の意図は伝えてあるから、これ以上、言う事や指示する事はない」

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「おお! こ、これは!!」

論より証拠の戦利品?のゴブリン3体の死骸を担いで帰ったら、
村長のアンベールさん以下、シュエット村の村民は大騒ぎ。

ローラン様に促され、代表して俺から約200体のゴブリンを倒した事を報告すると、
村民たちは、更に狂喜乱舞してしまう。

村長いはく、これまではゴブリンに対し、
抵抗の手の字も出来ず、やられる一方。
村民に犠牲者がどんどん増え続けていたという。

それがあっさりと200体も倒されたのだ。
奇跡だと叫び、喜ぶ気持ちは分かる。

しかし、先ほどのバスチアンさんではないが、

「勝って兜の緒を締めよです。気を引き締め直してください」

と、アンベール村長以下村民たちへ告げた。

なぜならと、補足説明も行う。

本来ゴブリンは夜行性。

今回倒した200体は、空腹に耐えかねて巣穴の外へ出ていたのであり、
群れ全体の数で言えば、半分弱に過ぎないと。

巣穴で眠っているであろう残りのゴブリンは、倒した200体より、
もっと多いかもしれないのだと伝える。

俺の話を聞き、アンベール村長以下村民の顔は強張り、顔色は青くなる。

ただ、その方が良い。

戦勝に浮かれ、気が緩んで油断し、
新たな犠牲者が出るのは絶対によろしくないからだ。

改めて状況を整理すると……

とりあえず、シュエット村を圧迫する脅威の軽減は行った。
村民が安堵しつつ、かといって油断せず、
程よい緊張感の中にいるといったベストな状態。

ここからローラン様の作戦の第二弾。

それは俺たちがゴブリン退治を行った後の事。

俺たちがゴブリンを全滅させ、ハイ終わりという事では、後々同じ事が起こった時、
また敵の為すがまま、一方的に犠牲者が出て、村は蹂躙されてしまう。

なので、新たに村で自警団を編成し、魔物や肉食獣の襲撃に備えるようにするのだ。

と、言っても戦闘訓練をした事のない村民へいきなり「戦え!」というのも
無謀極まりない。

ならば具体的にどうするのか?

今夜、俺たちグランシャリオは、村の正門前で、ゴブリンどもを迎え撃つ。

ただし、徹夜で戦うとかそういうオーバーペースなことはしない。

交代で、4時間ずつ仮眠をとる事になっている。

そして、ここが『きも』なのだが、
村の自警団にも戦いに立ち会わせるのだ。

まあ、戦いに立ち会わせるといっても、俺たちとともに戦うのではなく、
防護壁に囲まれた安全な村内で待機して貰い、
何人かは物見やぐらで、俺たちの戦いを見守らせる。

つまり、ゴブリンと戦わずとも、ほぼ同じ場へ身置くことで、
「自分の村は自分で守る」という、自衛の認識を持って貰うのである。

まあ、さすがに自警団には4時間睡眠を強いたりはしないけど。

6時間から8時間睡眠の交代制で、自警団全員が俺たちの戦いを、
安全な場所から見守る事になるのだ。

見るだけでも怖いという軟弱者も居たが、

「何、馬鹿な事を言っている! 王国や領主の救援が来るまで、自分の村は自分で守るという自覚と気概を持て!」

と、バスチアンさんに一喝され、
自警団の全員が、俺たちの戦いを見守る事に同意したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

夜がふけぬうちに、正門前の村外で、俺たちはゴブリン迎撃の準備を整える。

まず村にあった予備の丸太をいくつか使い、正門の前に簡単な仮防護壁を造る。

防護壁から少し離れた場所に、かがり火をいくつか配置する。

仮眠用のテントを張る。

ローテーションも決まった。

俺たち新人3人のA班と、ローラン様、バスチアンさん、セレスさん、クリスさんのB班、2班に分かれる。

午後6時から、正門前に陣取り、まずはA班、B班全員が迎撃。

1時間後の午後7時にB班が4時間仮眠。

B班が仮眠中の間、A班のみで迎撃。

午後11時、A班のシャルロットがいったん外し、B班を仮眠から起こす。

ここから1時間、A班、B班全員で迎撃。

1時間迎撃した午前0時から、A班が4時間仮眠。

午前4時、B班のセレスさんがいったん外し、A班を仮眠から起こす。

ここから1時間、A班、B班全員で迎撃。

午前6時、迎撃終了。

という感じ。

このローテーションとタイムスケジュールは、自警団メンバーを含めた、
村長と村民たちへも伝えられた。

対して、自警団の対応は、こちらからは指示をせず『お任せ』となった。

こちら側の意図は伝えてあるから、これ以上、言う事や指示する事はない。

但し、自警団の全員が、俺たちの戦いを見守る事のみを条件につけた。

最後に、ローラン様からは、再び相手がゴブリンでも決して油断しない事。

そして予定は、未定である事。

……つまり、迎撃中、何か、トラブルが、またはイレギュラーな事が起こったら、
仮眠中のメンバーも叩き起こし、全員で対処する事を重々、念押しされたのである。
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