冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!

東導 号

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第115話「ウジューヌは何か言いたげだが、父親からこっぴどく怒られたから、 ぐぬぬとか言うだけ」

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俺が言うのは全てが私見ではあるが……
会ったばかりで、相手とのわずかなやりとりから、言動を聞いて見て、
その人の全てを分かったという事はない。

人間の内面とは、その人の全てとは、そう簡単に分かるものではないからだ。

しかし、「ファーストインプレッション」というのは重要だとも俺は思う。

相手が全くの初対面の場合、何の関係もない見ず知らずの場合……

自分に対し、ほとんどフィルターをかけず、相手は素の部分を見せるから、
その人の「真の人となり」、悪く言えば、
「本性を現す」というケースも大いにあると思うのだ。
まあその逆で、猫っ被りして、本性を隠すケースもあるけど。

特に、相手の身分が全然違うと、尚更その傾向が強いと思う。

アングラ―ド侯爵とその息子もそうである。

ふたりとも、俺のファーストインプレッションはよろしくない。

特に息子のウジューヌのファーストインプレッションは最悪だ。
侯爵家の息子、次期当主なのを鼻にかけ、偉そうにし、完全に上から目線だ。

「ウジューヌはとんでもない奴」が、ほぼ確定だと思うが、
ローラン様の指示もあるし、父親ともども、もう少し探り、調べてみよう。

つらつらと考える俺。

一方、ウジューヌは、フェルナンさんの名を聞いて過剰に反応する。

「はあっ!? フェルナン・バシュレだってえ!! おいっ、ふ、ふざけるな! ど、どういう事なんだあ!?」

わめき散らし、ローラン様へ喰ってかかるウジューヌ。
ローラン様へ、「おい、ふざけるな!」と言うなんて、完全に冷静さを失っている。

コイツ本当に馬鹿か?

と思いつつ、ウジューヌから吐き出される心の波動を探ってみる。

これから本番を迎えるにあたり、トレーニング代わりだ。

ウジューヌから放たれる波動は、オレリアさんへの異常なまでの執着。
そしてフェルナンさんに対する激しい嫉妬と憎悪だ。

現段階の俺の勘働きレベルでは、大まかにしか分からないが、ざっとこんなもの。

……どうやら、ウジューヌの奴、王宮の晩餐会で見かけたオレリアさんに、
ぞっこんのひとめぼれ。

何度も何度も話しかけて、何度も何度も交際を申し入れ、

「申し訳ございません。私、心から好きな方が居ますので………」

と、そのたびに断られても、全然諦めなかった。

以降、ず~っと執着して、ストーカーまがいの事もしていたらしい。

うわ!
きも!
オレリアさん、とんだ災難だよ。

話を戻すと、ウジューヌはその執着が我慢出来ず、
父のアングラ―ド侯爵へ泣きつき、強引に見合いを申し込んで貰ったようだ。

息子のお願いを聞き、アングラ―ド侯爵は派閥の強化が出来るとOK。

しかし、そうは問屋が卸さなかった。

ローラン様の手立てにより、フェルナンさん、オレリアさんの婚約が決定。
国王陛下と宰相にお墨付きまで貰ってしまった。

対してウジューヌは、ローラン様の「横やり」を恨み、
見合い中止とフェルナンさん、オレリアさんの婚約決定に怒り、
にらみつけているという状況。

まあ、ローラン様も多分、それくらいの推測はしているだろう。

ウジューヌから、けんか腰で罵られても、余裕のよっちゃんであるし。

まあ、恐ろしい魔王に比べれば、ボストロールやオークに似たボンボン息子など、
恐れるに足らず……だろう。

笑顔のローラン様は、アングラ―ド侯爵へ向き直ると、

「ははははは、侯爵」

と呼びかけた。

「はっ、はい!」

対して、さすがに侯爵は「あほ」じゃない。

バカ息子がローラン様へ、無礼をしでかしまくっているから、
恐縮し、縮み上がっていた。

「私に対するご子息の言動、だいぶ冷静さを失っているようですが、いかに」

「も、申し訳ございません!」

申し訳ございません!って、謝る前に、息子へ注意しろよ、あんた。
父親だろ?

俺は呆れながらも、腹黒侯爵とバカ息子の波動を引き続き、探っていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

アングラ―ド侯爵が平身低頭したのを見て、
さすがにウジューヌもまずいと思ったらしい。

その後、父親からガンガン、がみがみと叱られ……

しかめっつらのウジューヌは、不承不承という感じでローラン様へ頭を下げた。

そしてアングラ―ド侯爵は、少しでも点数を取り戻したいと思ったのか、
先頭に立ち、案内をしてくれた。

という事で、ローラン様、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵、俺は、
やたら調度品が派手な広い客間に通される。

ローラン様、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵、
アングラ―ド侯爵親子が向かい合って座る。

俺はといえば、身分がローラン様の従者なので、
少し離れた場所に置かれた椅子にひとりで座った。

しばし、世間話が交わされた後、本題へ入る事に。

念の為、アングラ―ド侯爵家へ訪問した本題とは、

フェルナンさん、オレリアさんふたりの婚約が決まったご報告と、
見合いのお断りを入れるというもの。

厳密に言えば第三者なのだが、場の話をリードするのはローラン様だ。

「さて! アングラ―ド侯爵。そろそろこちらへ伺った事に関し、話をしましょう」

うわ!
さっきの意趣返しか、ローラン様は、ウジューヌを完全に無視している。

ウジューヌは何か言いたげだが、父親からこっぴどく怒られたから、
ぐぬぬとか言うだけ。

「先ほど話に出ましたが、このたび我がクラン、グランシャリオと本契約へ至ったフェルナン・バシュレは才能あふれる剣士です。ドラフト指名後に、いろいろ話したところ、心に決めた相手……想い人が居ると聞きましてな」

「そ、そうですか」

「ええ、聞けば、フェルナンと想い人は、お互いに幼馴染で初恋同士で、ず~っと愛をはぐくんで来たとか……」 

「な、成る程」

「はい、クランメンバーの幸せを追求するのが、クランリーダーの務め。ひと肌脱ごうと思ったのですよ」

ローラン様はそう言うと、にっこり笑ったのである。
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