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第112話「結果、グランシャリオのクランメンバー全員へ指示が出され、 俺も重要な役目を負う事となった」
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「はい、見合いをお断りするアングラ―ド侯爵家から、妨害と言うか、嫌がらせがあるのではないかと心配なんです」
「はい、俺が、『きにしい』なのかもしれませんが、国王陛下と宰相からお墨付きを得たとはいえ、法の網をくぐりぬけ、違法すれすれで嫌がらせをして来る可能性も考えた方がよろしいかと」
俺の言葉を聞き、思い当たる事があったのか、大広間内はし~んと、
静まり返ってしまった。
俺は貴族家の子弟だが、騎士爵家はしょせん名誉貴族であり、
加えて3男ともなれば、貴族社会にはそう明るくはない。
……ただアングラ―ド侯爵家の事は市井の人々の噂で知っている。
噂の全ての内容は知らないし、真実かも分からない。
だが、はっきり言って、俺が聞いた限り、あまり良い評判はない。
なので、気を緩めないよう一石を投じた。
俺の『警告』を聞き、口を開いたのはローラン様である。
「ふむ、エルヴェの話は、スルーして良いものではない。アングラ―ド侯爵家が、今回の件で逆恨みし、目立たないように、仕返しや嫌がらせをして来る可能性はないとは言えないからな」
成る程なあ。
全てがあてはまるわけではないが……
やはり話半分としても、市井の噂は、火のない所に煙は立たぬなんだ。
貴族社会に通じたローラン様の判断は間違いないと思う。
ここで、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵がローランさまの言葉に同調したり、
自身の意見をほとんど述べないのは理由がある。
先に述べたが、スフェール王国の貴族は、完全なタテ型社会である。
つまり自分より格上の貴族には、基本的に従わねばならない。
悪口を言うなんてもってのほかだ。
でも、ここに居るのは信用出来る身内だけ。
内緒話になるから良いじゃん。
何、びびってるの?
と考えた貴方。
甘い、甘い。
信用していても、どこから漏れるか分からない。
ここだけの話があっさり漏れる。
そういう例は、数えきれないほどあるのだ。
この場には、両家とかかわりが出来てまだ日が浅い、
俺とシャルロットも居るし……
まあ、疑われるのは嫌だし残念だけど、俺も貴族の子弟だから納得する。
話を戻すと、なので、貴族たちは……
沈黙は金、雄弁は銀。
つまり、余計な事は言わない。
面従腹背。
つまり、表面的に服従する姿勢を示しつつ、内心は相手の命令に従う気がない。
実は他にも多数あるのだが、上記の等々が、
スフェール王国貴族の主な人生訓なのである。
ちなみにローラン様は本当の貴族ではない。
更に『天下御免』の称号を得ているから、本日のアポイント同様、
多少悪口を言っても許されている。
国王陛下と宰相へも、遠慮なく諫言を告げるくらいだから。
さてさて!
ローラン様は軽く息を吐き、
「備えあれば憂いなしという。いくつか手を打っておくのが賢明だ。バスチアンたちが来たら、ランチを摂りながら、改めて相談するとしよう」
という事で、俺たちはバスチアンさんたちを待つ事にしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……15分ほどして、バスチアンさん、セレスさん、クリスさんもやって来て、
これで全員がそろった。
ブラントーム伯爵は、食事の準備をスタンバイしていたようで、
全員がそろってから、ランチがスタートとなった。
まずは、フェルナンさん、オレリアさんへ祝福の言葉が贈られる。
次にはふたりの肉親へも。
そして全員で乾杯。
ここから歓談。
しかし、この歓談の中で、懸案事項の『アングラ―ド侯爵家対策』も、
さりげなく打合せをされた。
ストレートな表現を避け、言葉を選び、普通に話しているので、
表向きは普通の歓談に見えてしまう。
これなら、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵は、単に意見を聞いただけの形となる。
クレーム等が来ないようにとの、ローラン様の配慮である。
うんうん!
俺も大いに勉強となった。
ローラン様は、既に作戦を立て、
具体的な方法、実施の担当を決めていたようである。
各自へ、それぞれ的確な指示を与えた。
情報漏洩のリスクを回避する為、ネタばらしは出来ないが、
大まかに言えば、アングラ―ド侯爵家の情報収集と共有。
アングラ―ド侯爵家の意思確認。
そしてアングラ―ド侯爵家へ抑止力のアピールと、
必要があった場合の行使などである。
結果、グランシャリオのクランメンバー全員へ指示が出され、
俺も重要な役目を負う事となった。
そんなこんなで、話は大方済んだので、俺たちは食事を存分に楽しんだ。
ブラントーム伯爵家の料理人が、素材を惜しまず作ったものだから、
凄く美味しかった。
ローラン様は俺へ対し、にやりと笑い、
「エルヴェ」
「はい」
「今回の件、お前には特に活躍して貰う事となる……頼むぞ」
「了解です! 任せてください!」
対して、俺は胸を張り、元気よく答えたのである。
「はい、俺が、『きにしい』なのかもしれませんが、国王陛下と宰相からお墨付きを得たとはいえ、法の網をくぐりぬけ、違法すれすれで嫌がらせをして来る可能性も考えた方がよろしいかと」
俺の言葉を聞き、思い当たる事があったのか、大広間内はし~んと、
静まり返ってしまった。
俺は貴族家の子弟だが、騎士爵家はしょせん名誉貴族であり、
加えて3男ともなれば、貴族社会にはそう明るくはない。
……ただアングラ―ド侯爵家の事は市井の人々の噂で知っている。
噂の全ての内容は知らないし、真実かも分からない。
だが、はっきり言って、俺が聞いた限り、あまり良い評判はない。
なので、気を緩めないよう一石を投じた。
俺の『警告』を聞き、口を開いたのはローラン様である。
「ふむ、エルヴェの話は、スルーして良いものではない。アングラ―ド侯爵家が、今回の件で逆恨みし、目立たないように、仕返しや嫌がらせをして来る可能性はないとは言えないからな」
成る程なあ。
全てがあてはまるわけではないが……
やはり話半分としても、市井の噂は、火のない所に煙は立たぬなんだ。
貴族社会に通じたローラン様の判断は間違いないと思う。
ここで、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵がローランさまの言葉に同調したり、
自身の意見をほとんど述べないのは理由がある。
先に述べたが、スフェール王国の貴族は、完全なタテ型社会である。
つまり自分より格上の貴族には、基本的に従わねばならない。
悪口を言うなんてもってのほかだ。
でも、ここに居るのは信用出来る身内だけ。
内緒話になるから良いじゃん。
何、びびってるの?
と考えた貴方。
甘い、甘い。
信用していても、どこから漏れるか分からない。
ここだけの話があっさり漏れる。
そういう例は、数えきれないほどあるのだ。
この場には、両家とかかわりが出来てまだ日が浅い、
俺とシャルロットも居るし……
まあ、疑われるのは嫌だし残念だけど、俺も貴族の子弟だから納得する。
話を戻すと、なので、貴族たちは……
沈黙は金、雄弁は銀。
つまり、余計な事は言わない。
面従腹背。
つまり、表面的に服従する姿勢を示しつつ、内心は相手の命令に従う気がない。
実は他にも多数あるのだが、上記の等々が、
スフェール王国貴族の主な人生訓なのである。
ちなみにローラン様は本当の貴族ではない。
更に『天下御免』の称号を得ているから、本日のアポイント同様、
多少悪口を言っても許されている。
国王陛下と宰相へも、遠慮なく諫言を告げるくらいだから。
さてさて!
ローラン様は軽く息を吐き、
「備えあれば憂いなしという。いくつか手を打っておくのが賢明だ。バスチアンたちが来たら、ランチを摂りながら、改めて相談するとしよう」
という事で、俺たちはバスチアンさんたちを待つ事にしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……15分ほどして、バスチアンさん、セレスさん、クリスさんもやって来て、
これで全員がそろった。
ブラントーム伯爵は、食事の準備をスタンバイしていたようで、
全員がそろってから、ランチがスタートとなった。
まずは、フェルナンさん、オレリアさんへ祝福の言葉が贈られる。
次にはふたりの肉親へも。
そして全員で乾杯。
ここから歓談。
しかし、この歓談の中で、懸案事項の『アングラ―ド侯爵家対策』も、
さりげなく打合せをされた。
ストレートな表現を避け、言葉を選び、普通に話しているので、
表向きは普通の歓談に見えてしまう。
これなら、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵は、単に意見を聞いただけの形となる。
クレーム等が来ないようにとの、ローラン様の配慮である。
うんうん!
俺も大いに勉強となった。
ローラン様は、既に作戦を立て、
具体的な方法、実施の担当を決めていたようである。
各自へ、それぞれ的確な指示を与えた。
情報漏洩のリスクを回避する為、ネタばらしは出来ないが、
大まかに言えば、アングラ―ド侯爵家の情報収集と共有。
アングラ―ド侯爵家の意思確認。
そしてアングラ―ド侯爵家へ抑止力のアピールと、
必要があった場合の行使などである。
結果、グランシャリオのクランメンバー全員へ指示が出され、
俺も重要な役目を負う事となった。
そんなこんなで、話は大方済んだので、俺たちは食事を存分に楽しんだ。
ブラントーム伯爵家の料理人が、素材を惜しまず作ったものだから、
凄く美味しかった。
ローラン様は俺へ対し、にやりと笑い、
「エルヴェ」
「はい」
「今回の件、お前には特に活躍して貰う事となる……頼むぞ」
「了解です! 任せてください!」
対して、俺は胸を張り、元気よく答えたのである。
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