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第111話「そう、俺は心配性。 石橋を叩いても簡単には渡らない」
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ミランダの奴!
俺をポイ捨てリリースしておいて、いきなり現れ、今更、
「シーニュへ戻って来て欲しい」とか、「トレードして欲しい」とか、
「移籍金は弾む」とか、
挙句の果てに、
「私がエルヴェの彼女になってあげるから」なんて、
当然、そんな要求を受け入れられるはずもなく、俺はミランダをスルー。
そのまま出て来たのだ。
こんなオファーは全てが飲めん!
大金貰っても、OKするわけないだろが!
特に、最後の申し入れは絶対に完全却下!
「彼女になってあげる」なんて、ふざけるな!
何、上から目線で言ってるんだ!
毒舌のあんな冷血性悪女、頼まれてもこっちからお断りだ!
そもそも、ドラフト指名され、本契約済みの新人冒険者へ、
他のクランリーダーが、ちょっかいを出すのはいかがなものか。
完全にルール違反だろうが!!
と、ぷんすか、げきおこ状態の俺。
そんな俺へ、シャルロットは、心配そうに問いかける。
「ねえ、エル君」
「おう!」
「さっきの銀髪の人が、以前、エル君の話で聞いてた、シーニュのクランリーダー、ミランダさんね?」
「ああ、そうさ。あいつがミランダ・ベルグニウーだ。俺の命を軽んじて、散々こきつかった上、ポイ捨てした馬鹿女だよ」
「やっぱ、恨み骨髄って感じだね」
「ああ、あいつがやった悪行三昧。絶対に許せないな」
「そっか。あのさ、念の為、聞くけど、エル君はまさか、シーニュへ移籍なんかしないよね?」
「いやいやいや! しない、しない。恩義あるローラン様を裏切れるわけがない」
「……だよねえ。あのさ、まさかミランダさんと付き合ったりしないよね?」
「付き合う? あの女と? 死んでもごめんだね。それにシャルロット、お前と離れるのは絶対に嫌だよ」
俺の言葉を聞き、シャルロットは、ぱああっと顔を輝かせる。
「うんうん! だよね!」
笑顔のシャルロットは、ひしっと俺に抱き着いて来た。
「うふふ♡ そういえばさ、私も仮所属していた前のクランから、本契約出来なかったら、戻って来いって、言われたわ」
う~む。
やはりローラン様の相人眼って凄いんだ。
3年前本契約出来なかった人もすぐ、他クランから声がかかったみたいだし。
外れがないって思われているのか、何か、ブランド化してる。
「そっか、成る程なあ……」
とか言いながら、ブラントーム伯爵家の使用人が用意してあった馬車へ乗り込み、
俺とシャルロットは、伯爵家へ向かったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
突然の、ミランダ乱入事件はあったものの……
俺とシャルロットは、馬車に揺られ、すぐブラントーム伯爵邸へ到着した。
再び使用人さんに導かれ、今度は大広間へ。
集合する人数が多いせいもあるかもしれないが。
大広間には、ローラン様と仲良く談笑するブラントーム伯爵、バシュレ子爵夫妻に、
フェルナンさん、シャルロットさんの婚約決定カップルが居た。
ちなみにオレリアさんのお母上、ブラントーム伯爵夫人は、彼女が幼い頃、
病死したと聞いている。
さてさて!
ここはひたすら、明るくあいさつするのがベストだろう。
「ご婚約おめでとうございまあす! エルヴェ・アルノー、シャルロット・ブランシュ、只今参上致しましたあ!」
「参上致しましたあ! ご婚約おめでとうございまあす!」
対して、フェルナンさん、シャルロットさんは、幸せいっぱいMAX状態。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
「フェルナンさんの同期のおふたりには、ご尽力いただきました! ありがとうございます!」
そして! そして!
「おお、エルヴェにシャルロットか!」
と、ローラン様もにっこにこ。
自分の事のように喜んでいた。
こうなると、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵夫妻も満面の笑みがさく裂。
やはりにっこにこであった。
しかし、こういう時に、思い出すことわざがある。
好事魔多し。
よい事にはとかくじゃまがはいりやすい。
油断大敵。
気を抜くと思わぬ失敗につながる。
勝って兜の緒を締めよ。
敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ。
等々、だ。
そう、俺は心配性。
石橋を叩いても簡単には渡らない。
勘働きも、悪い予感を報せて来る。
さっきミランダに会ったからなおさらだ。
少し暗い表情をしたのに気付いたのか、ローラン様が尋ねて来る。
「む、エルヴェ。浮かない顔をしているが、どうした?」
「はい、見合いをお断りするアングラ―ド侯爵家から、妨害と言うか、嫌がらせがあるのではないかと心配なんです」
「ふむ」
「はい、俺が、『きにしい』なのかもしれませんが、国王陛下と宰相からお墨付きを得たとはいえ、法の網をくぐりぬけ、違法すれすれで嫌がらせをして来る可能性も考えた方がよろしいかと」
俺の言葉を聞き、思い当たる事があったのか、大広間内はし~んと、
静まり返ってしまったのである。
俺をポイ捨てリリースしておいて、いきなり現れ、今更、
「シーニュへ戻って来て欲しい」とか、「トレードして欲しい」とか、
「移籍金は弾む」とか、
挙句の果てに、
「私がエルヴェの彼女になってあげるから」なんて、
当然、そんな要求を受け入れられるはずもなく、俺はミランダをスルー。
そのまま出て来たのだ。
こんなオファーは全てが飲めん!
大金貰っても、OKするわけないだろが!
特に、最後の申し入れは絶対に完全却下!
「彼女になってあげる」なんて、ふざけるな!
何、上から目線で言ってるんだ!
毒舌のあんな冷血性悪女、頼まれてもこっちからお断りだ!
そもそも、ドラフト指名され、本契約済みの新人冒険者へ、
他のクランリーダーが、ちょっかいを出すのはいかがなものか。
完全にルール違反だろうが!!
と、ぷんすか、げきおこ状態の俺。
そんな俺へ、シャルロットは、心配そうに問いかける。
「ねえ、エル君」
「おう!」
「さっきの銀髪の人が、以前、エル君の話で聞いてた、シーニュのクランリーダー、ミランダさんね?」
「ああ、そうさ。あいつがミランダ・ベルグニウーだ。俺の命を軽んじて、散々こきつかった上、ポイ捨てした馬鹿女だよ」
「やっぱ、恨み骨髄って感じだね」
「ああ、あいつがやった悪行三昧。絶対に許せないな」
「そっか。あのさ、念の為、聞くけど、エル君はまさか、シーニュへ移籍なんかしないよね?」
「いやいやいや! しない、しない。恩義あるローラン様を裏切れるわけがない」
「……だよねえ。あのさ、まさかミランダさんと付き合ったりしないよね?」
「付き合う? あの女と? 死んでもごめんだね。それにシャルロット、お前と離れるのは絶対に嫌だよ」
俺の言葉を聞き、シャルロットは、ぱああっと顔を輝かせる。
「うんうん! だよね!」
笑顔のシャルロットは、ひしっと俺に抱き着いて来た。
「うふふ♡ そういえばさ、私も仮所属していた前のクランから、本契約出来なかったら、戻って来いって、言われたわ」
う~む。
やはりローラン様の相人眼って凄いんだ。
3年前本契約出来なかった人もすぐ、他クランから声がかかったみたいだし。
外れがないって思われているのか、何か、ブランド化してる。
「そっか、成る程なあ……」
とか言いながら、ブラントーム伯爵家の使用人が用意してあった馬車へ乗り込み、
俺とシャルロットは、伯爵家へ向かったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
突然の、ミランダ乱入事件はあったものの……
俺とシャルロットは、馬車に揺られ、すぐブラントーム伯爵邸へ到着した。
再び使用人さんに導かれ、今度は大広間へ。
集合する人数が多いせいもあるかもしれないが。
大広間には、ローラン様と仲良く談笑するブラントーム伯爵、バシュレ子爵夫妻に、
フェルナンさん、シャルロットさんの婚約決定カップルが居た。
ちなみにオレリアさんのお母上、ブラントーム伯爵夫人は、彼女が幼い頃、
病死したと聞いている。
さてさて!
ここはひたすら、明るくあいさつするのがベストだろう。
「ご婚約おめでとうございまあす! エルヴェ・アルノー、シャルロット・ブランシュ、只今参上致しましたあ!」
「参上致しましたあ! ご婚約おめでとうございまあす!」
対して、フェルナンさん、シャルロットさんは、幸せいっぱいMAX状態。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
「フェルナンさんの同期のおふたりには、ご尽力いただきました! ありがとうございます!」
そして! そして!
「おお、エルヴェにシャルロットか!」
と、ローラン様もにっこにこ。
自分の事のように喜んでいた。
こうなると、ブラントーム伯爵、バシュレ子爵夫妻も満面の笑みがさく裂。
やはりにっこにこであった。
しかし、こういう時に、思い出すことわざがある。
好事魔多し。
よい事にはとかくじゃまがはいりやすい。
油断大敵。
気を抜くと思わぬ失敗につながる。
勝って兜の緒を締めよ。
敵に勝っても油断せず、気を引き締めて物事にあたれ。
等々、だ。
そう、俺は心配性。
石橋を叩いても簡単には渡らない。
勘働きも、悪い予感を報せて来る。
さっきミランダに会ったからなおさらだ。
少し暗い表情をしたのに気付いたのか、ローラン様が尋ねて来る。
「む、エルヴェ。浮かない顔をしているが、どうした?」
「はい、見合いをお断りするアングラ―ド侯爵家から、妨害と言うか、嫌がらせがあるのではないかと心配なんです」
「ふむ」
「はい、俺が、『きにしい』なのかもしれませんが、国王陛下と宰相からお墨付きを得たとはいえ、法の網をくぐりぬけ、違法すれすれで嫌がらせをして来る可能性も考えた方がよろしいかと」
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