冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!

東導 号

文字の大きさ
上 下
106 / 176

第106話「ふむ、フェルナン君が伯爵の愛娘オレリア殿の幼馴染……それは素晴らしい事だ」

しおりを挟む
門番兼警護役の笑顔のスルーと、当主ブラントーム伯爵以下、総出のお出迎え。

「何だ、何だ、何だよ。門番の態度といい、大勢の出迎えといい、俺の時とは大違いだ!」

フェルナンさんは、自分が訪問する時との格差を大いに嘆いていたが、
ローラン様、俺、シャルロットはついつい苦笑してしまった。

悔しがるフェルナンさんがこのブラントーム伯爵邸を訪問する際、
塩対応というまで、酷くはないが、大歓迎というわけではないらしい。

まあ、仕方がない。

片や、魔王退治を為しえた国民的な英雄。
こなた、子爵家子弟とはいえ、実績皆無で一介の無名冒険者。

扱いに大差がつくのは当然、致し方ないと思う。

そんなこんなで、馬車が玄関前に横付けされ、
扉が開き、まずローラン様が降り立った。

おお、降り立った姿も決まっていて、カッコイイ!

ローラン様の姿を認めたブラントーム伯爵以下、お出迎え軍団は、

「おおお!!!」と、どよめいた。

うお!
熱烈大歓迎!の波動が半端ねえ!

対して、微笑むローラン様も軽く片手を挙げて余裕しゃくしゃく。

まるで高貴な王族みたい。

スター感も半端ねえ!

続いて降りた、俺、シャルロット、そしてフェルナンさんは華麗にスルー。

まあ、そうなるだろうなあ。

ブラントーム伯爵が声を張り上げる。

「これはこれは、ローラン様。当家へ良くぞいらっしゃいました!」

さすがに名前は知ってるが、面識のなかったブラントーム伯爵を初めて見た。

栗毛の短髪、クラシックな彫りの深い顔立ちのイケメン。
年齢は、40代前半ってとこか。

ブラントーム伯爵の傍らに寄り添う、フェルナンさんの想い人、
伯爵令嬢彼女さんこと、オレリア・ブラントームさん。

お父さんがイケメンだけあって、端麗な顔立ちの栗毛美人。
年齢はフェルナンさんと同じ18歳だという。

ふたりは他のお出迎え同様、じっとローラン様を見つめていた。

フェルナンさんが馬車から降りた時、ちらっとオレリアさんの視線が向いたから、
少し安心した。

やはり気になるんだなあと。
でも、微笑んでいるから、フェルナンさんが本契約を勝ち取って嬉しいのだろう。

ブラントーム伯爵がオーバーアクションな身振り手振りで、

「さあ! どうぞ! ローラン様! 中へお入りくださいませ!」

こういう場合、家令さんとかが案内するが、当主自らご案内。

本館の中へ……

中へ入っても、相変わらず俺たち新人3人はスルー。

熱烈大歓迎されるローラン様の後につき、ゆっくりと歩いて行ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ブラントーム伯爵自らが先導。

ローラン様以下俺たちは、広い客間に通された。

かけるように言われた長椅子、椅子を始め家具、調度品は高価そうなものばかり置いてある。

どうやら、この屋敷で一番立派な、上客向きの部屋のようだ。

「俺、この部屋へ入るの……初めてだ」

などと、つぶやくフェルナンさん。

ブラントーム伯爵が仕切り、メインの長椅子へローラン様がひとりで座り、傍らに置かれた椅子3つに、俺、シャルロット、フェルナンさんが座った。

ローラン様の対面の長椅子に、ブラントーム伯爵とオレリアさんが座る。

ブラントーム伯爵が言う。

「改めて申し上げます。マエストロ、ローラン様。ようこそ、当ブラントーム家へいらっしゃいました」

「お会いするのは久しぶりですね、ブラントーム伯爵」

「はい、お久しぶりです。お元気にお過ごしでしょうか?」

「はい、元気ですよ。最近王宮では……」

などの世間話がしばらく続いた。

ローラン様は強いだけでなく、話術も巧みで座持ちも上手い。
場が盛り上がり、全員が笑顔になる。

俺も見習いたいと思う。

そして頃合いと見たのか、ローラン様は『本題』を切り出して来た。

「伯爵」

「はい」

「今日はこのたび我がグランシャリオへ入る事となった、新人3人を連れて来ました」

「はい、今、王都はその3人の噂で持ち切りですね」

「ええ、この3人は私が持つスキル相人眼で見込んだ素晴らしく有望な新人です」

「素晴らしく有望な……新人ですか」

「ええ、そうです。この中のひとり、フェルナン・バシュレ君は伯爵も良くご存じのようで」

「は、はい! フェルナンは、ウチの娘オレリアの幼馴染ですからな」

「ふむ、フェルナン君が伯爵の愛娘オレリア殿の幼馴染……それは素晴らしい事だ」

意味深なローラン様の言葉……
ブラントーム伯爵は意味をはかりかねたのか、首をかしげる。

「はあ、素晴らしい……ですか?」

「はい、フェルナン君は今回の研修でウチのバスチアンにみっちり鍛えられ、剣技が著しく上昇しました。今や師匠役のバスチアンとも互角に渡り合えるほど。私も何回か剣を交えましたが、相当な腕前です」

「おお、それはそれは、確かに素晴らしい! ……マエストロとともに、魔王軍を倒したバスチアン殿と……フェルナンがそこまでの腕になったとは……とても驚きました」

「はい、なので、私はフェルナン君とグランシャリオの本契約を締結しようと決めましたよ」

「成る程。話は聞いていましたが、そうだったのですか」

「はい、フェルナン君の強さは私ローラン・ケーリオが保証します。……ちなみにこれがフェルナン君の契約書です。写しですがね」

ローラン様はそう言うと、ブラントーム伯爵へ契約書の写しを渡した。

「え? 私が拝見してもよろしいのですか? ……おい、フェルナン?」

契約書は……個人情報である。
契約金を始め、様々な内容が記載されている。

驚いたブラントーム伯爵はまずローラン様へ、
そしてフェルナンさんへも尋ねたのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...