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第104話「おお、ローラン様は、フットワークが軽い!」

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笑顔のローラン様は、

「家令から、君たちが訪問した事情を聞いた。だが改めて説明してくれないか?」

と尋ねて来た。

ここは当事者のフェルナンさんから説明して貰った方が良いだろう。

こう聞かれる事を想定して、最初からそのつもりだったし、
フェルナンさんは、話し方の訓練も行っていた。

「さあ、フェルナンさん、ローラン様へ存分に話してください」

「頑張って! フェルナンさん!」

「わ、分かった!」

俺の促しと、シャルロットの声援を受け、
フェルナンさんは少し噛んだが、はっきりと自分の意思を示した。

何せ、人生のターニングポイント。

ローラン様が同行するか、しないかでは、大勢が変わってくると思うから。

「お忙しいところ恐れ入ります! ローラン様! お分かりかもしれませんが、お願いがあります!」

こういう時はシンプルかつ真摯に話すのがベスト。

「俺……いや、自分はどうしても、オレリアと、い、いえ! オレリア・ブラントームさんと結婚したい! その為には打てる手を全て打っておきたいんです!」

「ふむ、それで?」

「はい! 自分がグランシャリオと本契約を結んだ事を、オレリアさんと彼女のお父上、ブラントーム伯爵へは伝えました。伯爵からは、会って話をしたいとご連絡をいただきました」

「成る程。ならばさっさとブラントーム伯爵へ会いに行けば良いだろう」

「は、はい! すぐ会いに行きますし、オレリアさんをください!と申し込みをするつもりです! そして婚約、結婚の許可を伯爵にいただこうと思います!」

「ふむ、すぐそうせず私のもとへ来たのは、君に懸念があるからだな?」

「は、はい、あります!」

ここまでの会話を聞き、俺には分かった。

ローラン様は、フェルナンさんの事情を全て知り、理解した上で、
お願い事をされるのも分かっていると。

そしてそのお願いされる内容も……分かっている。

なのにフェルナンさんに改めて説明させ、お願いさせようとしているのは、
ローラン様の温情である。

全面的なバックアップを約束した俺たち同期や、ローラン様たちに
「おんぶにだっこ」状態にならないよう、
フェルナンさんの話を誘導し、全てを自身の口から話させ、お願いをさせるよう、
覚悟の自覚を促しているのだ。

その証拠に……

夢中になって話すフェルナンさんを見据えるローラン様と、
その様子を見守る俺、シャルロットの視線が合った時。

ローラン様は、にこっと笑い、小さく頷く。

「大丈夫だよ」と、俺とシャルロットへ、
優しくアイコンタクトを送ってくれたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「お聞きください、ローラン様、自分の懸念を!」

フェルナンさんがそう言うと、
俺とシャルロットからすぐ視線を外し、言葉を戻す。

「うむ、聞こうじゃないか、フェルナン」

「は、はい! 自分の懸念は……」

フェルナンさんはそう言うと、軽く息を吐いた。
そして吸い込むと、一気に言った。

「……アングラ―ド侯爵が、見合いの強行をブラントーム伯爵へ申し入れ、その挙句、無理やり次期当主とオレリアとの婚約、婚姻を成立させてしまうのではないかという懸念です」

「ふむ、成る程」

「そ、それで! ローラン様へお願いというのは! そうならないよう! じ、自分を! ブラントーム伯爵へプッシュしていただきたいのです!」

「ほう! プッシュをか?」

「は、はい! 自分が! このフェルナン・バシュレこそが! オレリア・ブラントームの結婚相手にふさわしい! ローラン様が推薦すると、ブラントーム伯爵へ告げていただきたいのです!」

「ふむ、見合いが実施される前に、今回作成する推薦状の内容を先に口頭で、私からブラントーム伯爵へ、直接伝えるという事だな?」

「は、はい! おっしゃる通りです! ローラン様のご推薦が! アングラ―ド侯爵の強権発動の抑止力となります! ブラントーム伯爵にとって見合いを断る名目が立つのです!」

ここが勝負!

大詰めである!

フェルナンさんは、一生懸命に声を張り上げる。

「ローラン様!! 直接!! ブラントーム伯爵へ!! 私を推薦する事を!! お、おっしゃっていただきたいのです!! な、何卒! よ、よろしくお願いいたしますっ!!」

対して!
ローラン様は、にっこり笑い、

「分かった! フェルナン・バシュレ! お前の頼み事は今回のバックアップの一環だ。私も君と一緒にブラントーム伯爵へ会って、そう伝えよう!」

「あ、あ、あ!! ありがとうございますっ!! 本当にありがとうございます!!ローラン様!! 心の底から感謝致しますっ!!」

快諾してくれたローラン様の言葉を聞き、
フェルナンさんは感極まり、声を震わせた。
深々と頭も下げる。

おお!
良かった!
本当に良かった!

俺とシャルロットも、

「「ローラン様! 本当にありがとうございます!」」

と声をそろえ、頭を下げた。

そんな俺たち新人3人を見て、ローラン様は嬉しそうに笑う。

「よし! 善は急げだ! すぐに使いを送り、ブラントーム伯爵へ会見の申し入れをしよう! 先方の都合がつけば、このまま行くぞ!」

おお、ローラン様は、フットワークが軽い!

今回の作戦はスピーディーさが命だって事を良く分かっている。

こうして……
ローラン様は、ブラントーム伯爵との会見の段取りをすぐつけてくれたのである。
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