上 下
74 / 176

第74話「『コツをつかんだ!』という、べたな表現がぴったり、完全に勢いに乗った」

しおりを挟む
「エルヴェ君、いきなり行使するのは、さすがの君でも難しいかもしれない。だが、私が葬送魔法を行使するのを良~く見ておくんだ」

そう言うと、ローラン様の手は、まぶしく輝き出した。

おお、葬送魔法を見るのは生まれて初めてだ。

いかんいかん、物珍し気に見るだけではダメだ。

俺の特性、ローラン様いはく、

「ははははは、もう少し簡単に言えば、エルヴェ君は心が強く想像力に長けている。だから、魔法杖の風弾、水弾という、分かりやすいサンプルさえあれば、視界から認識したそのサンプルを基にして、心にイメージを浮かべ、それを魔力へ変換し、すぐに魔法が発動出来るんだよ」

繰り返して、しつこいようだが、
俺は妄想がモノ凄いし、ミランダから罵詈雑言を浴びても耐えられるくらい、
打たれ強い。
記憶力も良くて、目で見たものが、即座にマネ出来て、
魔法が、ぱぱっと使えるって事だ。

つまり、葬送魔法が見て真似して使えるよう、
目を皿のようにして観察する事が必要なのだ。

そんなわけで、俺がじっくり観察する中……
ローラン様の両手が合わさり、帯びた白光がまばゆくなると、
遂には、その白光がオークどものしかばねへ、放たれた。

するとすると!
何ということでしょう!

俺が倒し、散乱していたオークどもの屍が、細かい塵となって消失して行く。

結局、倒した20体のオークどもは、塵化し、
よくありがちなシーンで、一陣の風にひゅううううと吹かれ、
跡形もなくなってしまった。

葬送魔法でオークどもを塵にしたローラン様は笑顔である。

「まあ、こんなものだ。これでオークどもの不死アンデッド化は、99%避けられるだろう。もしセレスが行使したなら、もっと手際良くやるだろうがね」

「い、いえ! ローラン様の葬送魔法、お見事です!」

「ははは、という事で、死骸は皆、私が塵化したから、この場で葬送魔法発動のチャレンジは無理だ。次回君が、敵を倒した時、実地で試してみれば良いだろう」

今後の事を考えれば、葬送魔法は、ぜひ習得したいところ。

でもローラン様のおっしゃる通り、現状ではしかばねがないから、
試しようがないし、じっくりと発動練習している時間もない。

約1時間後には、さっきの場所へ戻り、
風、水の新魔法の練習をしなければならないし。

ここから成り行きで、葬送魔法発動のチャレンジ機会があって、試せるなら、
やってみるかという感じで行こう。

「わ、分かりました!」

「さて! 実地戦闘兼持久走を再開しようか」

「了解です! 行きましょう、ローラン様! 俺について来てください!」

そう出発の言葉を告げ、俺はダン!と大地を蹴り、
屍がきれいさっぱり無くなった石畳の道路を、
たっ、たっ、たっと、走りだしたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それから……
俺はゴブリンに2回、オークに2回遭遇。

計4回実戦訓練を行った。

この実戦訓練では、剣技、格闘技、魔法の風弾、水弾を、
まんべんなくバランスよく使い、魔法剣士としての経験を積んだ。

当然ながら、遠距離戦、接近戦、両方試した。

まず遠距離戦は狙撃手モード。
距離を100mから、200m、300mと取り、
風弾、水弾の魔法で敵を正確に狙撃する。
トータル命中率は、約90%。
100mだとほぼど真ん中へぶち当てた。

接近戦は、魔法習得以前と変わらない。

蝶のように舞い、蜂のように刺すヒットアンドアウェイ戦法。
剣技、格闘技、魔法で相手を攻撃した後、
相手の攻撃を躱し、すぐさま退避する事が基本。

変幻自在の動きで相手を翻弄し、無詠唱で魔法も容赦なくぶち込む、鬼畜レベルだ。

そして、葬送魔法も試した。

一番最初にチャレンジした時は、手がやや光っただけ。
狙いを定めた屍には何の変化も起こらず、葬送魔法のその字にもならなかった。

そこで俺は、ローラン様にお願いし、再び『見本』を示し、
目を皿のようにして、じっくりと観察させて貰った。

その後、3回、実戦訓練の際、チャレンジしたところ、
ようやく威力が弱い葬送魔法が発動。
何とかゴブリン1体だけを、塵にする事が出来た。

よし、これからだ!
と意気込んだが、その後、完走地点まで、敵は出現しなかった。

ここで残念ながら、1周10㎞持久走は終了。

葬送魔法の上達は明日以降となった。

意気揚々と、水弾を習得した完走地点まで戻った俺は、
『コツをつかんだ!』という、べたな表現がぴったり、完全に勢いに乗った。

そして俺は、ローラン様から貸与されたレアな魔法杖を使い……

魔法杖から放たれる魔法をこれまたじっくりと観察。

そして発動訓練を地道に丹念に行い……

結果、風属性は、小嵐、竜巻、
水属性は、濁流、凍結、

それぞれ、2種類ずつ、4種類の属性魔法を習得し、
風弾、水弾と合わせ、都合6種類の属性魔法を習得。

複数属性魔法使用者マルチプルたる魔法剣士としての能力を、
著しくアップさせたのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜

里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」  魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。  実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。  追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。  魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。  途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。  一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。 ※ヒロインの登場は遅めです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

処理中です...